58 「主人公」第三型は。
「っていうか、パラメーターとかって見えるのかな? 王宮付き魔法使いの皆さんもなにそれな感じだったし……」
メルヴィンは記憶を思い出してから何度かだそうと挑戦しているのだが。
「……二周目のひとたち、詰んでない?」
どうやってパラメーターが上がっているのかと確認するのか。
「通知表とか……かな?」
やっぱりほっとこ。
そう思うのであった。
「えーと、「主人公」のやっかいなの続けますね」
「あ、はいはい。一つ目が王道ルートでレオに突撃しているタイプですね。で、二つ目が二周目タイプ」
二周目、別名はメルヴィンの地雷タイプ。リィナは内心でそう枠付した。
「第三タイプといいますか……ある意味ノーマル主人公というべきか……」
「ノーマル」
「まぁその、ご本人たちの前で言うのもあれなのですが……」
ご本人たち。
そう言われてメルヴィンとルカは顔を見合わせた。
「そう、貴方たち目当ての「主人公」です」
そうでした。
自分たちも攻略対象なのでした。
何故レオナルドと分けたかというと。
「そりゃあ、恐れ多くも王族ですよ、王太子さまですよ……」
「普通なら、そう、ですよねぇ……」
この身分世界で。
普通は近づくのも恐れ多い。
何かあれば不敬となるのだ。
それは高位貴族の子であるメルヴィンにもであり――オーレリアにでもなのだが。
彼らは知らないが、男爵位になったばかりのロシーク商会の長やリィナのおじいさんのように緊張して震えるのがある意味正しい。
「王族であるレオナルドは一応別格なんだよね」
それ故に彼にだけは学園でも近衛騎士たち、護衛がついている。
この国に生きる以上は格上の「帝国の血」を引いてはいるけれど、公の場ではメルヴィンもこの国の王族であるレオナルドに頭を下げることとなる。
「ゲームの怖いって思うのはそのあたりなんだよななぁ」
もしもレオナルドに。そしてその婚約者であり王族になる予定のオーレリアに不敬をしたら、一家やその縁戚ごと、どうなるかわからないのに。
「オーレリア様に悪役令嬢とかっていうの、本当にあれですよね」
その辺りは腹立たしいとリィナも眼鏡の奥で目を細める。
「本当それ。学園在学中は……子供だからって多めに見ることにはなると思うけれどさぁ……」
同じ年頃の同じ子供としては、子供だからと大目に見るのはもやもやするところだ。
「それで、メルヴィン様たち目当ての「主人公」はどうするんです?」
こうしてみると目の前の二人は攻略対象であるのもなるほど、美形である。
銀髪の美形と黒髪の美形。
思い出せばパッケージの攻略対象の美形たちは色が被らないようにしてあったのか。
「……派手カラフル」
ついついつぶやいてしまう中の人三十路。
後に彼女は隠しキャラの帝国の皇子様の金髪がレオナルドとは少しばかり色目が違い、橙色混じりに濃くあると知る。それは帝国の色とも言われていて、この公爵家の奥様と同じで――居候さんとも実は同じであると。認識阻害眼鏡の活躍である。
さて、自分たち狙いさんはどうするか。
「とりあえずは、各個撃破か迎撃、かなぁ……」
「各個撃破? 迎撃?」
各個撃破か迎撃。
「あとは自分の身は自分で守ろう」
今日まで対策してきたことを。
かつて約束したように。
「魅了にかからないようにしようぜ」
だ。
「レオナルドはその辺りは大丈夫だから」
なんせ平民との差で新鮮さやもの珍しさを、もう彼が感じるはずがなく。
「冒険者ギルドとかでも平民の友達たちいるし。彼らで現実みているし」
そういう方面でのレオナルドの攻略は今や難しかろう。
「あいつの側にいるテオドールも大丈夫だと思う。むしろ一番大丈夫」
謎の信頼感。筋肉は裏切らない。
「いや、それもあるけど! そうじゃあなくて!」
確かテオドールの攻略には治癒魔法の上達が必須だが……。
「テオドール、彼自身が上級神官クラスな治癒魔法使えるんだもん」
冒険で何度助けられたことか。前衛でタンク役もできる人がヒーラー役兼任ってバランスどうなのかしらと、たまにメルヴィンも悩むのだが。
治癒魔法のレベルによっては神殿で治癒魔法の授業なり勉強がある。課外授業だ。
テオドールは既に熟練。今さら治癒魔法の習得のために訪れることはもうないし、怪我を負っても神殿に向かうことは滅多にない。
つまり、主人公に出会うこともない。
「同じように神殿で逢うことになる攻略対象もいたはずなんだけど……」
ユベール。
ジスランと同じく中盤に出てくる中性的な美形枠。
ある意味、王宮付き魔法使いのジスランを狙うか神官ユベールを狙うかで、ルートがわかれる存在だ。同じ年上で長髪で美形なのは同じだが、属性というか、目つきというか――性格が。
皮肉ありの変わり者で偏屈気味な美形なジスランか。そんな彼が自分だけには素直に甘えを見せたり。
穏やかで誰にでも優しく微笑む美形のユベールか。そんな彼が自分だけには嫉妬をしたり。
そういうギャップが、本来のお楽しみ。
これが好みのわかれるところ。
「ジスランも大丈夫」
なんせ帝国の宮廷付き魔法使い様が首根っこを押さえてくれている。物理的にも。チョークスリーパーが炸裂だ。
「頑張れば両方狙えるのかな……」
その場合は魔法方面の勉強が大変そうだ。
「……まあ、それはやりたいひとには頑張ってもらいましょう」
これもまた放っておこう案件だが、逆に考えたら勉強を頑張るのは悪いことではない。
「そして神官目当て……その人、いないんだよなぁ……」
神殿の美形神官として話題になっていそうなものなのだが。
ユベール自身がこの国の神殿にいなかった。
「気になったけど、大神殿にいるみたい……」
メルヴィンが「面子が足りない」と首を傾げていたら父母が教えてくれたのだ。ついでに同じく攻略対象の商会の跡取り息子は帝国にいるとかも。青田買いだとメルヴィンはぶるりと震えたり。
「大神殿ですか?」
それはこの国の地方の神殿よりもしっかりとしていよう。
「だからあんまり心配することなさそうで」
攻略対象がそもそもいない。
これがある意味、一番良い対策であったかも。
やっぱり自分はツメが甘いとため息だ。
しかし自分たちが、とくに自国の王子であるレオナルドが最終学年に自国の学園にいないというのも障りがある。自国の学園が頼りないと他国に自己紹介するようなもの。
だから帝国に留学という名の逃亡はできなかった。
レオナルドだけを死地に残せるかと付き合っているのがメルヴィンであり。
帝国の祖父母や大伯父たちには留学を望まれたけれど。
「でもオーレリアも置いていけない!」
オーレリアも近い将来王太子妃となる。レオナルドと同じように自国の学園を後の王太子妃が通えないというのは、また。そうしたしきたりも強制力かもと悩むところだ。
悪役令嬢が国外逃亡するのは絶対にありであるのに。
けれども王太子の婚約者である存在をほいほい他国に出せるわけがない。
何かあり、彼女が攫われたり傷つけられたりしたら。
――人質に、されたりしたら。
そのためにオーレリアは今までも行動が制限されたり、友人すら作れなかったのだから。
「僕が二人の盾になれるっていうならさぁ!」
兄馬鹿極まれり。
後は、ルカ――19。
「ルカも食べ物に、もうつられたりしないよね?」
「もちろんです、若様」
拾い食いだっていたしませんと忠犬の尻尾がみえる。
もうすでにメルヴィンにより美味いものを食わせてもらっている彼は、今さら「主人公」になにかもらっても満足するはずがない。
そこには何故か一緒にうなずいてしまうリィナもいた。何故か。
メルヴィンも美形なのだが忘れがられがち。頑張れ。




