54 「主人公」二型は二周目型?
「突撃、いや突進か? どっちもかな? そういうのは怖いなぁ……」
一応メルヴィンもそれなりに鍛えてはいるが、レオナルドやテオドールのようにはいかない。というかあのレベルと一緒にしないでほしい。無理。
強さが原作より桁違いな二人はいったいどこに向かうのだろうか。
それも一応は自分の神からの夢見――とされている前世のせいだとは理解はしているが。自分が改変してしまったところだ。
「まあ、強くなるのは悪いことではないよね。うん」
弱くなるよりは、きっと。うん。
「若様にはその手の狼藉者は近づかせませんから、ご安心を」
ルカがにこりと微笑みを浮かべている。その自信はどこから――あ、はい影から。
「やっぱり、ルカがオーレリアに付いていて……いや、ごめん」
その自分より妹に付いていてというお願いは、捨てられた大型犬をご想像していただけたら説明も省けよう。
「まぁ、強制力……ルカが19として「主人公」に落ちるかもしれないし……」
それはこの斜め上に突き抜けた忠義なら大丈夫だとは思うが。
ルカもそのあたりは心外そうだ。
「若様……」
「いや、念のためね、念のため!」
耳と尻尾がしょんぼり垂れている。きゅーん。
「19てたしか人気投票上位だったはずなんだけどなぁ……」
リィナさんがちょっぴり引き気味にみている。やはり全盛期に購入していらしたからそうした情報も多少は目に入っていたらしい。メルヴィンも中古屋の雑誌で見たような記憶がある。
「攻略サイトとかにありました」
なるほど。
「お嬢様ももちろんお護りいたしますが、優先はやはり若様なので……」
黒髪に切れ長の黒い瞳の美形は原作通りだが、髪も整えられて服もコーディング家の執事服を身につける彼はゲームの姿とはほとんど別人だ。むしろこちらはこちらで人気になるのではなかろうか。
実際、ルカの学園在学中は中々の人気ぶりだったそうだし。
「今の私は、あくまでもコーディング家の執事ですので」
そこなのだ。
ルカはあくまでも公爵家の。
ならば公爵家の跡取りであるメルヴィンを優先なのだ。メルヴィンがどれほど妹を優先を願っても。
そしてこの国は帝国ではない。属国に過ぎないのだ。
「だから、学園のなかには公爵家の護衛をつけられないし」
「確かに教室の中にSPいっぱいいたら落ち着かないかもですが……」
「まあ、現実は、確かに……」
公爵家からの送り迎えの馬車はしっかりと護衛つきだ。確かに一番危ないのは登下校だけれども。
唯一許されているのは王太子であるレオナルドの近衛騎士だけである。
基本的に学園内は、学園の警護と騎士団から派遣されている巡回の騎士だ。
これはかつて護衛として家から連れてきた者たちによる喧嘩があったかららしい。
仲の悪い家同士が、護衛によって怪我させあい。悪さしあい。
「喧嘩なら自分の拳でやらんかい」
そんな結果が、現在らしい。身分差の壁がないというのがここぞとばかり輝く。
「そんな悪い歴史があるから……」
まだ婚約者の段階では近衛騎士はつけられないという。近衛騎士もまた、あくまでも王家を護る存在だからだ。
まだ婚約者ならば、どうなるかわからないということもあり。
これから婚約者が変更となるのは、あり得なくもない。
これらがゲーム舞台のためかとメルヴィンは察する。
「いや、現実は帝国とのこと考えたらオーレリア第一でしょうに……」
メルヴィンがブチブチ言っても難しいところだ。それが頭の固いのが上に居座っていたりする弊害というやつだ。
本来ならば帝国の優秀な影が、その属国の一貴族に付いていることも実はイレギュラーなのだ。
「ゲーム作中も、メルヴィン……様に、ついているんでしたっけ?」
「そうだね」
19の役割は。あくまでも帝国の影として。
低いが帝国を継ぐことができるメルヴィンの護衛と監視であった。
オーレリアも帝国の血と、それこそ色が出ているのたが、女は継承権が低いために彼女にはまだ影をつけることもなく。
「ルカがもう一人ほしい」
本当にそれ。
欲しがられ喜んでいる大型犬系執事はおいておいて。
「一人はそういった突撃突進型です……が、たくさんいるみたいで。王太子様、大変ですね……」
厄介だがそこはレオナルドに避けてもらうしかない。
「……闘牛」
「……それで」
鍛えていて良かったな、レオナルド。
「もう一人は……たぶん、ゲームやり込んでいたのではと、思うのはこちらの……」
それはどういうと首を傾げるメルヴィンに、リィナは眼鏡の縁をくぃっと。さすが前世もかけていたほど、この数日ですっかり慣れたご様子。
「二周目、狙いみたいなのです」
二周目。
「先日、ゲームの確認の際にメルヴィン様に教えていただいた二周目なるやり方……」
互いの知識を擦り合わせたときに少し話していたのだ。
「話しましたっけ?」
「はい、このゲームは総逆ハーレムなる破廉恥なるものも、おそらく無理だというところも」
「あ、そうそう、総逆ハーレムね……」
何それ破廉恥と、リィナさんが嫌そうな顔をしたのを思い出す。
うん、常識ある日本人の女性なら、逆ハーレムなんてそれこそ頭痛が痛いと頭を抱えるところだ。
破廉恥、それで。
しかしそれが無理だとメルヴィンが思うのは、テオドールやユベールを攻略するならば「聖女」となる道を選ばねばならないからだ。
だが、しかし。「あ」とメルヴィンも思いつく。二周目と聞いたからは。
「あ、もしかしたら二周目なら……」
二周目ならもしかしたらそれも可能だったのだろうか。
一周目は捨てて、パラメーターの上昇に全振りする。
それもゲームの攻略法としては、ありだ。
メルヴィンも生前プレイしたことのあるゲームによっては、アイテムの収集や見逃したイベントのために周回したことがある。
そしてこの世界の――作品には、つまり。
二周目にて確定該当キャラがある。
「フリードリヒ兄貴目当て……」
パラメーターを一定以上上げねば現れない隠しキャラ。
彼は一周目で登場させるのは難しいとされているキャラで。
「フリードリヒ……帝国の第三皇子様……」
リィナも一応は存在を知っていた。
前世でも今世でも。
前世は攻略サイトなどで。今世は――属国の人間として。もしかしたら後の皇帝になるかもしれない三人のうちの一人。
が。
「その方がお米とか送ってくださっているのですよね」
「そうなんです」
二人して帝国の方角を拝んでいた。ありがたやー。
「そしてすでにこの国に来ていて。オーレリア様とも顔なじみ」
「そうなんです」
「……もうすでに隠れてないキャラですね」
「ソウナンデス」
「同じクラスの人なんですが……ヴェロニカさん、それ……二周目って、どうなるんです?」
二周目狙いの「主人公」さんはヴェロニカというらしい。
なんともお強そうなお名前だ。これはこれで「主人公」らしいこと。
そしてきっと彼女は一周目は捨てて、二周目のフリードリヒ目当ての――。
「……いや二周目って、つまり今世はどうするの?」
どうなるの?
どうするの?
…メルヴィンたちは人生二周目、ですね。(含み)
しばらく説明回ですが、大事な伏線なのでお付き合いお願いします。




