41 四天王最弱ッ!
画面。
すなわちゲーム画面か。
「そんなこと言ってたの……?」
「はい」
抜かりなく、主が気にした存在は探って参りましたと、平然と。むしろあっさりと。
ルカに頷かれてメルヴィンは頭を抱えた。
実は彼には自分が「ここではないどこか遠い世界で生きて暮らして、そして死んだ記憶」があるのだと打ち明けてある。
帝国からフリードリヒがシナリオより早く来たことにより、本来なかった交流の際に。彼との会話を聞かれたために。
不思議そうに聞いていた、ルカは。
「なるほど、そうでしたか」
という、反応だけだった。
すごい決意をして「頭おかしくなったんですか?」とでも言われるのではと身構えていたメルヴィンは、逆に「ええ?」と戸惑うこととなった。
それだけ?
なんか、こう……。
もうちょっと驚いて?
しかしルカには。
忠誠を誓うメルヴィンの言葉を疑うことの方がありえなく。
「若様が違う世界で生きておられたからのその叡智や閃き……それにより我が身を救って頂けたこと、感謝を抱くことすれ、他のどんな感情をもちましょう?」
「あ、うん」
「お亡くなりになられたことは、その場にてお助けられなかったことが口惜しいですが!」
「いや、あの、仕方なかったこと……だから、ね?」
とりあえず、やっぱり皆には内緒にしておいてねとお願いしたら、ルカは当然とばかりにうなずいた。むしろ自分だけに秘密を打ち明けてくれたと感動すら。
そろそろ、忠誠心が斜め上に飛び出しちゃったよう、怖いよう……と、メルヴィンの方が引いてしまうほどである。
こいつ、自分が「黒蛇」じゃなくて「白蛇」にしろって言ったらどうするんだろ。
……あっさり改名しそう。
しかし、誰かに打ち明けられたことで、少し心が軽くなったのはあり。
だからこそ今度はそれが重くなる。
「マジか……「主人公」も……」
これはあれだ。
恐れていたパターンだ。
「主人公」も生まれ変わった存在。
自分と同じく。
「……あああ」
頭を抱えてジタバタするいつもの夜明け前。
これあれなのかな。
生まれ変わった「主人公」が、自分がヒロインだと――無敵だとはっちゃけ、好き勝手するやつ。
無敵な場合は、ここをゲームの世界だと思い込んでいること。「主人公」は何をしても――無敵の人を相手にするのがどれだけ厄介で面倒くさいものなのかは、現代人でなくてもおんなじで。
これもしかしたら、そんな……?
しかしメルヴィンは思っている。すでに自分がこれだけ世界を変えてしまった。帝国でもフリードリヒのおかげで、きっと良い方に変わってきているはず。
「きっともう、悪役令嬢にざまぁされるパターンの世界……」
しかも「悪役令嬢」ではなく、そのお兄様がざまぁの準備を、これだけ御用意した世界だ!
ならば「主人公」はどう出るだろうか。
「来るならいつでも、来いだ!」
腹の少し下、そこにある小さな印文を頼りに!
男は度胸!
明鏡止水!
「僕が倒れてもしょせん僕は四天王最弱! 僕がやられても他の……いや、四人じゃないけど……」
自分いれても王太子に近衛騎士に。すでに現れてる隠しキャラまで。
彼らにしてみたら「いや、お前が一番キレたら怖い。主に妹。魔王通り越して大魔王」と総ツッコミするであろうが。
「そういや足りないのよね、面子……つか、攻略対象?」
それはご両親がにっこりと。
「もう、やれること、やるだけはやったんだもの!」
これはジタバタ自分が悩んでも――と、思っていた日が、ありました。
ルカの、影からのご報告。
「……今日もお嬢様を物陰からハァハァ言って見てました」
やだそれストーカー?
ルカの目も「そろそろ処しますか?」と言っている。
自分も影として物陰に潜んでいるわけだが、同じように思われたら嫌だなぁとその顔からも。
それは果たして「主人公」なのか?
もしや自分と同じ生まれ変わった存在だとして、ただのゲームファンな可能性?
その中でも「悪役令嬢」が好きなタイプだってきっといる。
世には「悪役令嬢好き主人公」というジャンルもあるというではないか!
自分は趣味外だったから妹たちがプレイしているのを眺めていただけだが、もしかしたらあのゲームがドンピシャ好みではまっていたひとだっていたかもしれない。「モブキャラ転生」というパターンかも!
その事に思い至ったメルヴィンだ。
「……お呼び、して?」
一度はその提案を止めたけど。
うん、ジタバタ悩んでいるよりも。
「丁重に、ご招待してくれる?」
「かしこまりました、若様」
対象は茶色の髪に茶色の瞳の、一見どこにでもいそうな姿の女生徒。
確かに「主人公」のキャラメイクにもある色だ。あえて平凡な色も入れることもメイキングには大切だ。そうしたキャラクターで自分を投影するタイプとているだろうから。自分の妹たちのように真逆ではなく。違う自分ではなく。
リィナ・クライシー男爵令嬢。
「……話し、聞こか」
実はメルヴィン自身はプレイしていなくて、恋愛ゲームをよくわかっていないのがひっそり弱点なこのお話。




