04 王太子(予定)。
メルヴィンの前世がどうこうのは兄馬鹿のおかげで深く聞かれることもなく。
そう、兄馬鹿。妹大事。
むしろ先の王のやらかしのこともあって、神が妹思いのメルヴィンを憐れみ夢で忠告してきた――そんなふうにすら。
「信心深い国なんだなぁ……」
ダスティン王の最後を知る方々もまだ多くいるのだ。
その哀れさを。慟哭を。
メルヴィンがダスティン王のようにならないようにと、親たちも話を聞いて何かしら思うことがあったようだ。
メルヴィンもそこまで親の理解が早いと、これは本当に神の差配かもと思い始めた。
そもそも、自分がこうして生まれ変わったのは早死したことを神が憐れんでくれたのかも、と……。
……どうせ憐れむなら前世で長生きさせてもらいたかったけれど、きっとそれはそれ。生まれ変わらせてやったことに感謝しろと怒られそう。
なので改めて気を取り直して。
ダスティン王の哀しみを教訓に。
彼のようにならないようにするために。
とりあえず巻き込んだ――「王太子」を。
だってこいつも「魅了」にかかる。
妹を裏切るやつなのだ。
ダスティン王のがあって――彼にとっては親戚にも当たるその方のやらかしはさすがにメルヴィンよりも先に、よくよく聞いていたので、彼は目に見えるほどにぶるりと震えた。
そして自分より力強く――。
「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」
――自分よりも必死に。
将来王太子となるレオナルドとは同い年で幼馴染でもあった。
六歳の現時点ではまだ彼の祖父が現役で王様であり。王太子であるのは彼の父だ。
ゲーム開始の学園入学時点で「王太子」だから、もう数年したら代替わりなさるのだろう。
そう、彼の祖父がダスティン王の甥で――王弟と公爵令嬢の子である。
だからまだ先王ダスティンのやらかし、と言われているのだ。
王は妃がなくなるまでは尊敬していた伯父であるダスティン王の静かに怒り狂う目を覚えていた。
かつての婚約者である母への哀しみと執着の混じった視線まで。
だからメルヴィンが夢みたことへの王家への話は、受け入れられた。
レオナルドが将来、ダスティン王のようになると――これは神の啓示、慈悲かもしれないとまで。
子供に神がかり的なことが起きたらもっと騒ぎになりそうだが、そこはメルヴィンの身分があった。
公爵家だからすんなりと内密に、王家に話を通せたのだ。
さもなかったら神殿からいろいろ来て大変になっただろう。大事な跡取り長男を神官として取られかねない。
さすがにそんなに来られては「夢でみた」とどこまで言いはれたか。「実は前世が……」となったら違う意味で騒ぎになりそうで。
「ただのゲーム好きの大学生が、何かしら世界変えるような発明とかできないって……」
精々、妹を守るのが精一杯ですんで。むしろそれが優先ですんで。
「まぁ、妹に関わるし……レオナルドは」
公爵家の跡取りであるメルヴィンと同い年に産まれた王子は、将来を考え互いに親しくしておくようにと。
まだ六歳同士の子供であるが、付き合いはオムツの頃からだ。
レオナルドはメルヴィンとは幼馴染ではあるが兄弟のように――いや、近い将来本当に義兄弟になる間柄だ。
だからもしも親に「悪い夢をみた」と信じてもらえなかったら、コイツだけは絶対に巻き込もうとメルヴィンは夜明けまでの間にひっそりと考えていた相手だった。持つべきものは権力と財力ある幼馴染でしょう。
それになにより、レオナルドの婚約者がメルヴィンの妹のオーレリアなのだから。
つまり、ダスティン王が裏切った婚約者枠にあるのが……。
「俺はメルヴィンと本当の兄弟になりたいし、だったら魅了なんかにはかかりたくない!」
友情パワーだ。
「……そ、それにオーレリアと……その……好き……」
そして幼いながらに、だ。
顔を覆って小さく言うレオナルドの耳まで赤い。
将来の義兄として生暖かい目をしてしまう。
そして兄馬鹿として、うちの可愛い妹を泣かせたら容赦しないぞという目でも。チベスナとは違う――それは般若顔。
オーレリアは四歳にして将来が楽しみすぎる美少女、いや美幼女である。
メルヴィンと同じ銀髪だが、瞳は母譲りの美しい橙色で。ちなみにメルヴィンは父親似で銀髪青眼だ。
メルヴィンは知っている。ゲーム通りに成長したならば妹はとても美しい女性になる。しかも優しく賢く、王太子妃になるために頑張る素晴らしい存在に。
そしてオーレリアもまたレオナルドに恋をしていた。
ここ大事。
オーレリアも、である。
そのためにこの国の王太子妃になるために頑張って……。今は幼く、まだまだレオナルドに対しては、たまに来る兄の友人な認識であろうとも。
むしろ、妹一号と二号の初恋も、たまにくる自分の友人だったと思い出して、その衝撃に固まっていたらレオナルドに心配されてつつかれた。
ならばお兄ちゃんは血の涙を流しながら妹の恋路を守るしかないのだ!
ゲーム中のメルヴィンは、一号二号に「サイテー」と言われるのも納得。
前世の記憶を甦らせた今は妹三号な気持ちだ。
ちなみに妹への愛はどれも隔てかわりなく。海の海溝より深く、お天道さまに届くほど高く、だ。
だからはじめは「妹が王太子の婚約者にならなけりゃ良いじゃん?」と兄馬鹿やらかしながら考えたのだけれど。
政略はまた別で考えるとして。
けれども、友情がちょっと待ったをかけた。
そして妹の初恋を壊すのはまた、兄貴がすることではないから。そんなことは自分で自分を絶許である。
だから巻き込んでやった。
夢でみたことを――魅了にかからないようにしようと決意したならば。
幼馴染と妹の恋路を邪魔して馬に蹴られるのは、野暮だというやつだ。その野暮どもをどうにかするのが兄の役目!
生まれ変わりに意味があるとしたら、きっとこのためだ……――。
――血の涙を流すけどねッ。
今回はここにてまずタイトル回収。
すでにルート改変しかけていた六歳児。
妹の幸せの為にを考えられる、正しいシスコンくんです。ほめたげて…。




