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「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」  作者: イチイ アキラ


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37/39

37 本来のクリアエンディング後…。

 本来の隠しキャラエンディングルート。


 もしもフリードリヒが隠しキャラとして「主人公」を選んだら――選ばれたら。


 帝国は第二皇子クリスティアンが皇太子に――そして皇帝となる。


 フリードリヒの母の身分はあまり高くない。もとは父の乳母の娘である。兄妹のように育ったはずが、二人はいつしか愛も育んでいたのだという。

 けれども一応には貴族である。皇族の乳母となるものが平民であるはずがなく、帝国の子爵家の身分はあった。

 一応、は。

 それでも第一皇子や第二皇子の母と比べたら後ろ盾は弱い。弱すぎる。

 けれどもフリードリヒには他の皇子たちにはない強みがあった。

 その金橙色の瞳だ。

 帝国の皇族の血を強く引いたものに現れる色とも。

 現皇帝もその色だ。

 皇太子となれた父は、髪だけはなんとか黄金色を引き継ぐことが。瞳はこれまで帝国に嫁いできた姫たちが多く持っていた青で、これもまた帝国の色ではあるのだが。

 だから属国の王族ではむしろ青い瞳が多くある。

 属国の姫であった母の血が濃く出た第一皇子は黒髪に青い瞳。

 第二皇子は帝国の色はその金の髪しか現れず。瞳はまた青く。


 身分低い母を持つ第三皇子が、何の定めか一番色濃く、皇帝とおなじく金の髪に金橙色の――黄金を。

 それ故に古き考えを持つものたちは、身分足りずとも第三皇子フリードリヒを推すものもいたのだ。


 それ故に、皇太子の座は。

 三つ巴で危うい拮抗を。


 その拮抗が崩れたのは。

 第三皇子は色だけではなくもその性質も父親似であったと。


 ――身分低い女を選んたと。


 公務で属国に向かったはずの第三皇子が「運命の女」とやらを連れ帰ってきた。

 確かに知力も魔力も高く、その愛らしい外見も悪くはないが。

 たかが属国の男爵家の娘。

 元から足りないものがさらに大きく。後ろ盾が、これにて大きく差がついた。


 古き者たちはフリードリヒが其の国にいるという皇帝の血縁の、金橙色の瞳を持つという姫を連れ帰ってくれることを期待していたのに。

 なんとフリードリヒはその姫を、むしろその「運命の女」を虐めた存在だとして断罪すらしてきたのだとか。

 属国のその国の王家や公爵家を味方につけて来れればよかったのだが、むしろ姫君にしたことで敵対すら。


 そうしてフリードリヒは「運命の女」とやらと帝位争いの場に乗ることすらできず。

 彼によって崩れた拮抗により、帝国は荒れることになった。

 何が火種や崩壊のきっかけになるか解らないものだ。


 それを制したのは第二皇子の陣営だった。元から帝国の高位貴族の陣営だ。一番優位であった。

 多くの死者を出す争いの末に、皇帝も皇太子も亡くなった。

 皇太子の死にも謎がある。争いのどさくさ紛れに彼は心の臓を止めた。その苦悶の表情は何の苦しさによるものか。


 後に歴史家は、愛情はいらぬとして嫁いでいたとしても、長年女として蔑ろにされた正妃の恨みは深かったと察する。


 そして帝国の習わしである「後継」をもうけたものが皇太子の座に就けるということも彼らは変えた。

 それにより第二皇子は後継のないまま帝位につき、そのまま混迷の時代を迎える。

 第二皇子は政略で迎えた妃を見向きもせず――抱かず。

 しかも母たちを困らせるのが目的だとでもいうように財をばら撒いて享楽に耽り。

 真冬に季節外れの花を帝国中からかき集めさせたり、真夏に遠い山から雪と氷を届けさせて宮殿に雪景色を再現させたり。

 ただ、その贅を尽くした時代に。

 才あれどパトロンが見つからず埋もれていた多くの芸術家が、彼の審美眼により発掘されたのは唯一の功績とも。皇帝クリスティアン自身も素晴らしい人物画などを残していた。

 彼が保護した芸術家たちは後の世にも名を残し、帝国の再興の助けになったという。


 ――そう、再興。


 美しいものに囲まれ。

 享楽に耽るように美童を侍らせた彼は――その時を待っていたのだろう。


 起きた叛乱にて命を散らした。


 その反乱は争い敗れて逃れた彼の兄――第一皇子ジークヴァルトの子が旗頭となり。


 黒髪に金橙色の瞳の少年は、命乞い一つしない叔父を自ら手にかけた。

 むしろ叔父は嬉しそうに微笑んで、自ら刃を受け入れたようであったという。

 

 その子の母はかつて生国にて断罪され、行方不明となっていた帝国の金橙色の瞳を継ぐ姫であったという。

 どういう巡り合せか、逃れあった彼らは出会い。

 これがまた帝国の運命であったのか。

 そこには。

 大切な者を信じず、護れなかった男など要らないと自ら凍傷にて顔を焼いた銀の髪の男が側に在ったという。

 かつては美しかったであろうその顔を、火傷の痕は相手に失礼、見苦しかろうと仮面で覆い。

 その類まれな氷雪の魔法で皇子を、その母親譲りの金橙色の瞳を護っていたという。




 そして第三皇子とその運命を狂わせた女とは――歴史のどこにも、残ることはなく。



 ゲームのエンディングの後の世界がどうなるのか考えるのが割と好き。

 メルヴィンが思い出してあれこれしないとこうなっていた、と…。

 これにて帝国編。そして登場予定キャラ紹介。

 特にクリスティアンは再登場させたいキャラです。頑張ります。

 次よりまた年月が経ち、本編開始です!


 実はこちら。拙作の「いつか優しく終わらせてあげるために。」の、後の世の世界観で書いていたりします。次話までのお暇つぶしに、どうぞ。(こちらも12話からが本編ですw)

https://ncode.syosetu.com/n6424km/


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