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「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」  作者: イチイ アキラ


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23/29

23 丹田ともいうところ?


 メルヴィン、実は魔法使いたちの中ではすでに一目置かれていた。

 十歳児にしてすでに。

 知らぬは本人ばかりなのだが、氷の魔法使いたちからは救い主と崇められるほどに。


 しかも誰も教えてもいない「淫紋」なんて、子供向けでない言葉まで飛び出しちゃった。


「男性の場合、図の、このように下腹部に魔法印文(・・)を刻みます」

 印文(・・)をやけに力強く発音された。すいません。

「これは魅了系魔法をかけられたときに無効化する効果を発動します」

 無効化。それこそ望んでいたものだ。

「その際に、かけられた魅了魔法の強さによって発熱する副効果もつけてあります」

 魔法がかけられていると、気が付かないのも問題だ。

「魔法を発動されたときに無効化と同時に発熱、か……」

 何故、下腹部なのか。

 それだけが問題だけれど。

 メルヴィンの怪訝な様子に、魔法使いたちは咳払いして続けられた。この少年、きちんと理解しているわぁ、と。

「人体に流れる魔力ですが、基本的に心臓と――このヘソの下を多く流れるからです」

 血液の流れとは同じようでまた違うらしい。

「あ、オヘソの下ってそういう……」

 ちゃんとした理由がありました。ごめんなさい。

 そういえば力を込めたり気合を入れたりするとき、「ヘソの下に力を入れろ」とかよく言われたりもする。そういうことだろうか。

 確か丹田とか、格闘技をならっていた友人が言っていたような。

「魔法を使うときもそこに力を入れるわね」

 伝説級魔法使いからも。筋肉つけていた友人、丹田間違いなさそうです。

 身構えて変なこと言って本当にすみませんと、メルヴィンは反省だ。魔法使いの皆様も不思議な咳払いをしなさったけど。

「ある意味これ()淫紋ですもんね……」

「公子に言われるまで、皆一度は考えながらも口に出せてなかったよね……」

 こそりと、部屋の隅っこで頷く魔法使いさんたちもいたり。

「……そしてここなら生えたら(・・・・)目立ちませんし」

 アルベルトさんの最後に続けられた言葉に、「そういうことか」と今度はメルヴィンがひとり吹き出すことになったが。わからずキョトンとしているレオナルドは、そのうちいつかわかるだろう。そう、生えてきたら。



 その魔法印文は刻んだあとに身体に馴染み、表面上は一円玉くらいの小さいサイズになる。後にもしものときに発熱するのもそのサイズだそうだ。

 それなら目立たないし――隠れる。うん。



 女性用は引き続き開発中だ。

 取り急ぎ「ハニートラップ」対策として男性用魅了対策を急がれたのだ。メルヴィンの夢のこともあり、彼らが学園に入るまでには完成させねばと。

 そして彼らだけでなく。

 もしや「魅了」にかかる可能性があるのは彼らだけではないのではと。


 たまに現れるのだ。

 貴族にして婚約者がいて。

 婚約とは家と家の契約でもあるというのに。


 ――先王ダスティンのやらかしを知りながら。


 それを充分わかっていたはずなのに、いきなり急に出会った下級貴族や平民と結婚したいと言い始めるものが。

「婚約破棄だ!」

 などと卒業式や大事な催し物を台無しにしやがるものが。

 もしやそれは、魅了であったのでは。

 むしろ親御さんなどは魅了であれと願ってしまうだろう。

 そういうことが起きないよう、これからはこの開発された魔法が役にたつ。


 ――魅了でなかった(・・・・・・・)ときの方が厄介な気もしなくはないが。


「十歳になったらこの魔法印文を受けることを貴族には広めたい。とくに跡取り男児には」

 レオナルドの祖父、すなわち王様よりそのように。

 貴族の家々に密やかに御下知が回った。


 孫を――孫だけでなく未来を担う若人たちを、ダスティン王のような目に遭わせたくない。


 伯父の哀しみや怒りを覚えている彼だからこそ、開発にも何かと便宜を図ってくれた。ゲルトルーゲや王宮付き魔法使いたちも、その想いをくんで開発を頑張ったのだ。

「ワクチンみたいだな」

 メルヴィンが思い出した。

 それもまた国へ密やかなその理由だ。

 ワクチンのように魔法に反発や嫌悪を抱くお家もあるからだ。

 国で、王命だとしたらやはり何かしら厄介になろう。どれだけ王様が心を砕いてくださっていたとしても。

 もしも魔法印をつけたあとに病にかかったり――それこそ将来「子種」ができなった、などと難癖をつけられたら。

 それを魔法印のせいにされたりしたら。


 もちろんそんな副作用は無いよう開発されている。副作用はわざと付けた発熱のみだ。そのために四年もの開発がかかったのだ。むしろ宮廷魔法使いと王様の理解と援助があるからこそ、わずか四年で開発できたともいえる。


 けれども世の中には稀に魔法に耐性のない方もいる。

 もちろん魔法印を入れる前に鑑定なりで調べはするが。

 だからこれは王宮付き魔法使いの管轄となることにもなった。

 接種の際にはきちんと、その王宮付き魔法使いが責任をもって、と記録される。

 せっかく恥ずかしい思いで受けたのに効果がなかったでは意味がないので。


 だから「こんなのが開発されましたよ」「受けるのは各ご家庭にお任せです」「でも、お国としては接種推奨」と、密やかに。


 それに確かに、あまり幼いうちに受けると、まだ魔力の巡りに乗らないだろうと魔法使いたちから。あまり早くも効果がでないと。

 なのでこの魅了封じの魔法印は、十歳になったら受けることを推奨されることとなった。

「ちょうど僕ら十歳で良かったね」

「……生える前で、な」

 生えていたら――剃って、らしいので。

 それは彼らの年上のテオドールやルカ情報。彼ら、どうされたのか顔が赤かった。


 しかし密やかではあるが、近く王太子となる存在や帝国に縁ある公爵子息がまず印を受けたとは、また噂で広まっており。

 高位貴族たちはそれならば我が子にもと受けさせることにした家々もあり。

 そして密やかなのもまたもう一つ理由が。


 あまり広めたら、魅了魔法で悪さしようとするひとたちがもっとずる賢しこいことをしようとするから。

 知られていない方が良いこともある。

 のちに、魅了魔法にかかったふりをして美人局を捕まえた、などということもあったらしい。


 そして女性用の魅了封じの魔法は引き続き開発を。

 そのあたりは――秘密の花園。

 男が知らない方が良いことも世の中にはあり。

 女性の身体にやはり魔法印とはいえ、傷に近いようなもの。

 お国によっては印――入れ墨は罪人の証のような国もある。貴族女性は外交により、嫁入りする可能性とてあるのだ。

「引き続き、アクセサリーなどで魅了封じも開発しましょう」

 男性用も。

 やはり魔法耐性のない方用も必要だからだ。




 そうして。

「これで準備できた! 万端!」

 と、メルヴィンは意気揚々学園入学まで後五年、ゲーム開始まで七年は気楽に――とはならず。


 ――帝国からお客様が。



「なんで隠しキャラがもう来ちゃうのぉ……」



 本当はこちらは短編予定で、先読みして魅了封じして「主人公」に会ったときに「うわっあっちー!?」「うわっちゃっちゃっちゃっ!?」と陰紋…ではなく、印文発熱して、というギャグ短編な予定でしたが、短編では伏線回収ままならないなと連続にしたのであります。

 陰紋、解らない清い子は清いままで良いです。知らなくても人生に何ら困らないですw(知らべるなら自己責任で!自己責任ですよ!)


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