22 実は氷クール系攻略対象だった。実は。
下ネタちょっとあります。心の準備を。
「そうだったぁ……氷の小公爵て、なんか恥ずかしいのが、僕だったぁ……」
氷適性、別に悪くないもんね、と。
王宮付き魔法使いに「ぷっ」されたのにムキになってしまった。
ついつい本気出しちゃった。
だからすっかりわすれていた。
自分が、ゲーム中ではそんな「あだ名」があることを。
そう、ゲーム中のメルヴィンは、なんと!
「……クール系」
銀の髪に青い瞳という容貌もあり、冷たい印象のある青年だった。
その性格も自他とも厳しく。
寄れば切られそうな鋭い眼差しで、冷徹に物事をみる。王太子の懐刀的な存在でもあり。
しかし現状現実、現行にても自分は自他とも認めるシスコン兄馬鹿系である。
農耕神を、麦の女神を崇める地域を治める公爵となる予定なのに。氷系でまったく役にたたないことを内心で気にしている「メルヴィン」を「主人公」はその悩みにも気が付いて。
そして「主人公」の明るさや優しさに――……。
「氷の小公爵の心は溶かされていく……」
いやぁあ、恥ずかしい!
何、その情けないのが僕?
年下の女の子に慰められる程度でなんとかなるんかい! メンタル弱!
クール系見せかけメンタル弱弱男じゃん!
そもそも農家の方々、魔法使ってないやろがい! 僕、畑入らない立場で違う役割でしょうが!?
畑仕事やりたいけど! 立場考えなさいよ! 僕が畑仕事やってケガとかしたら迷惑かかるじゃん! 首飛ぶのは僕じゃあないんだから!
――と、メルヴィンがのたうち回っているのはいつものように明け方のベッドの中。誰にも知られたくない恥ずかしさ。
ひっそりと氷属性魔法の元である氷雪の神と、メルヴィンのお家の護り神な麦の女神だけは見ていなさるかもだが。
遠くから頑張れ、と。
夜が明けたあとも先に知ってしまった羞恥の発散先を求めてひたすらピーナッツをすり潰してバターにした。一仕事。前世ならひたすら台所掃除していた。彼ように焦げた鍋が捨てずに取っておかれていたり。
そんなひとり恥ずかしさに悶えるメルヴィンでも我慢できずに叫んでいた。
「淫紋じゃんー!?」
ここに、今日は妹を連れてきていなくて良かったとあとからハッとして。
メルヴィンの叫びは、部屋に響いた。
図によって説明されている、そのまっ最中に。
ゲルトルーゲたちの魅了封じは。
基本的なアクセサリーもご用意されたが、それよりももっと確実として身体に直接刻むものも開発された。
それはお腹の、おへそのもう少し下。
絶妙な、位置に。
それは、十八禁ゲームではなかなかのファンタジー魔法。
性的な、アレ、である。
前世は二十歳過ぎであるメルヴィンだ。健康優良児でなくなったのはまさに二十歳過ぎたころから。
十八歳になって解禁されたのには、当然興味持ち。だってその頃は健康でしたから。こう書くと哀しいけれど。
妹たちの目には入らないように厳守しておりましたとも。
――そして、ある意味人生にカウントダウンがされたのは。
本当にある意味だれども。
それはちょっと助かった。
鍵付きの引き出しにしまっていたそれらお宝は、引き続き健康優良児でいられる友人たちに譲ることができた。
死後に妹たちの目に入って「お兄ちゃんサイテー」と言われることなく。
「お前の形見として、大事に使わせてもらうから」
生々しいからやめろや。
友人の涙隠した冗談に、そんなふうに笑ってツッコミいれる元気があるうちに。
そうしてカウントダウンのきれるまえに。身綺麗にしてきた――。
――のに。
知識よみがえってしまったのですが。
まだ十歳ですけれど!?
アウト!? いや、知識だけならセーフなの、どっち!?
メルヴィンの叫びに、その場にいた大人の魔法使いたちが全員吹き出した。美魔女ゲルトルーゲさえも。
「?」としているのはレオナルドと――意外にもジスラン。なるほど、さすが攻略対象、もしや……童貞。
「……んん、説明させていただきますね」
図説とともに王宮付き魔法使いのアルベルトさんが。
ゲルトルーゲが陣頭指揮をとっているとはいえ、彼女は帝国からの客という形でもある。
そして王宮付き魔法使いはジスランだけではなく。
これはゲーム作中ではジスランしか出てこなかったことで、てっきり一人しかいないのかとメルヴィンが勘違いしていた。
ジスランは王宮付き魔法使いのなかで、ゲーム中盤で特別講師として選ばれ、それで王宮より学園に派遣されることになるというのが設定なのだ。四年前はメルヴィンもまだ子供だったのだから仕方あるまい。
なんでコイツが。
メルヴィンの目が――すでにフィルターかかっている目が――どうしてジスランが学園に派遣されるのかと細められるが。
「……くじ引きでもしたんじゃないですか?」
数年後、どうしてジスランになるのか、それは魔法使いたちにもわからない。それとなく探りをいれたら、同じく王宮付きの魔法使いさんが首を傾げながら、そのように。
つまり、ジスランが外れを引いて学園に、と。
なんせ「学生たちに教える役」なんて誰もやりたくない。
「そんな時間あるなら研究したいですし」
ジスランも今は魅了魔法対策を研究しているが、それはそれで楽しいらしい。メルヴィンには初めましての挨拶がアレだったので態度が悪いが、本心では「面白い研究ネタ感謝」でもあるという。
――学生と恋愛するようになるのは、研究対象が「主人公」になるからだろうか?
その分、お給料と研究資金ももらえているから。
王宮付き魔法使いたちは、研究職よりなタイプでもあるらしいので。
魔法師団として魔物討伐に関わりたい武闘派たちとは違う種類の人間たちらしい。
「帝国の魔法使いたちも同じような感じよ」
帝国に残っているゲルトルーゲの同僚や弟子たちもそんな感じらしい。
ゲルトルーゲの弟子たちはほとんど武闘派らしいが。
まあ、王宮付きになれたらその研究資金なども国持ちなので、やはりそれなりの実力は必要なのだ。
「一応すごいやつなんだよな」
認めるべきところは認めるメルヴィンである。
ひっそり。
すでに氷魔法は魔法師団の皆や王宮付きの誰もが足元に及ばないレベルであるメルヴィンなのだが――そっと、ゲルトルーゲが皆の前で唇に人差し指を。
夏場にいくつも氷柱を出現させ、それを維持する魔力量も。
そもそもがその発想力――閃きも。
魔法使いには閃きこそが何より必要不可欠。
メルヴィンのことは、伝説級の歴戦の魔法使いが後方で見守っていた。
――まだ何にでもなれる十歳の子供なのだから。
何かあると水回り掃除したくなるタイプ。
メルヴィンの前世は料理したらきちんと後片付けまでするタイプ。えらい。
カウントダウン…つまりは、余命の、そういうことです…。




