21 うっかりやらかしやりすぎた。
十歳に、なりました!
メルヴィンとレオナルドが十歳を迎えた頃であった。
待ち望んだ報告がもたらされたのは。
それは王宮より。
その魔法使いたちからより。
「魅了を予防する何かがとうとう!」
対抗策に何かしら名称をつけておけば良かったとメルヴィンはその頃になって。
魅了を予防する何か。
まあ、何とか。
でも意味は伝わるから良いやと――考えていたメルヴィンは後悔した。後の祭りというやつで。
「淫紋じゃんー!?」
その日、十歳児らしくない悲鳴があがった。
ゲルトルーゲから王宮にて報告をと聞いて。
メルヴィンはいそいそと王宮に来た。幼馴染のレオナルドのお住まいでもあるので、通い慣れている。
妹は将来の王太子妃――そしてこの国の王妃になる予定なので、やがては義弟夫婦に会うという名目で通うことになるのかなぁと、メルヴィンは馬車の中で少しばかり複雑になりながら。血の涙はまだ流さない。
ちなみにオーレリアはそのための教育がそろそろ始まっていたのだが、それは教師の方々を公爵家に通ってもらうことになっている。
だって危ないじゃん?
そのお城への行って帰っての警護も。
帝国の血を引く姫でもあるのです。
あれこれ、本当にあれこれ、ややこしいのです。
慣習がー、伝統がー、なんで儂らが出向くんじゃー、教わる方がこいやー――と渋った教師の方々は、今や皆様、いそいそと、ほくほくと、通ってくださっている。
公爵家にて休憩時間に出されるお菓子が美味しすぎて。
「胃袋を掴んだもんが一番強い、偉い。甘味の威力を食らいやがれ」
と、メルヴィンが十歳児にはちょっとこわい、計画が上手く行ったと笑みを浮かべたり――上手く行き過ぎたと頭を抱えたり。
バニラもふんだんに使ったアイスクリーム――氷菓が、今一番人気。次が同じくバニラ使用のプリン。
「固めが僕は好き」
昔ながら(メルヴィンの前世感覚)のプリンは、妹の好物にもなっている。今日のおやつはお兄ちゃんのレシピを授かった料理長に、託したのです。
この世界、魔法というものがあるので冷たいお菓子作りに必要不可欠な「氷」が手に入れられるのがありがたく。
昔ながらでもう一つ。
メルヴィンが提案した二段式になっている収納箱の、上部に氷の塊を収納する「冷蔵庫」が。
活気的な発明として。今や裕福なご家庭には一台。そのうちすべてのお家に普及できたら。
メルヴィンにしてみたらレトロな冷蔵庫なのだが。
「でもどうしても「冷蔵庫」がほしかったのです! お菓子作りに!」
メルヴィンにとっては家電三種の神器あれこれなら一位でした。
「魔法があると機械……電気使う文明てあんまり発達しないんだなぁ」
と、気がついたことでもあり。
そうして「冷蔵庫」が公爵家の調理場から始まり。「なにこれすっげー!」と、レオナルド経由で王宮にも。そして国に――帝国にまで。
特許は取らなかった。
メルヴィンは前世の知識で知っていたからで、自分が発明したと胸を張れなかったからだ。やっちゃあいけないとメルヴィンのなかのプライドや良心が。
ツメが甘いとまた親には苦笑されたが、特許を取らなかったことで帝国にまで広まったときに逆に良かったともなり。
この国にばかり、金が集まるのはお国のバランス的に良くないので。すでに母フロレンツィアのおかげで贔屓されまくっているので。
その分、名声はきちんと。これは大事。
主に「氷適性」の人々から。
氷の魔法はあれど、すべてのひとが氷の魔法に適性があるわけでなく。
氷適性のあるひとが「氷屋さん」として商売を始められることとなった。就職先できてよかった。
ちなみにそれまで氷適性は不遇職だったらしい。
この世界、温暖化はまだまだ。
そしてこの国自体が大陸の北側めにもあり。
灼熱な夏を覚えているメルヴィンには本当に過ごしやすくてありがたい国だ。
……冬は厳しいが。
そうしたことで氷適性持ちは不遇職であったのだが。
それでも夏はそれなりに暑いことはかわりなく。
食物も傷みがち。
氷菓なんて、まず新鮮な材料あればこそだ。
そこに「冷蔵庫」という活気的な発明品が現れたことにより。
この国は少しばかり、食生活で他をリードし始めていた。
ちなみにメルヴィンは――氷適性である。
正しくは氷八割、風二割と、二属性だが、風の方は多目に見て二割、という感じらしい。たぶん鑑定してくれた魔法使いさんが気を使ってくれた。
魔法のそうした発現の確認は、王宮付き魔法使いの管轄なので。
魔法の適性の話をしたときにとある因縁の王宮付き魔法使いは「ぷ、氷かよ」と小さく笑いやがったが。お前、そんなんだから鑑定部門の仕事任せられないんだぞ、この変態枠め。
直後にシャイニングウィザードでぶっ飛ばされて黙らされていたが。やっぱりハイヒールですごい。シャイニングウィザードて名前もお似合いです。
しかしメルヴィンは「氷適性!」と喜んで。
何故喜ぶんだと皆がそのときは哀れみの目でいたのだが――。
今や氷適性は治癒魔法と同じく就職に有利に。
冷蔵庫だけでなく。
夏場のパーティでメルヴィンが氷彫刻を出したり。滑り台を出したり。冬場には氷と雪でかまくらを作ったり。
そうした使い方がと、皆が驚いて。
ちなみにメルヴィンは暑いお庭で妹の体調が、心配。ついでにかわいくしたろと氷で定番の白鳥から巨大テディベアなどを生み出したのだ。滑り台も意外にも人気。
妹大事で夏場のパーティには氷彫刻を。
それが始まりとなり、華やかさと涼も取れて一石二鳥と。氷魔法の匠を雇うのが貴族や金持ちのトレンディ、となったわけで。
そうしたことで。
実のところ、メルヴィンにも護衛はたくさん。
「やらかしたー……」
本当にね。
帝国からも――大伯父からも「次は何かな? 大伯父さんもプリン食べたい」とわくわくされているとか。
帝国から、改めて影もつけられてもいるらしい。19のことがあってから帝国の影にも何かあったらしいが、そのあたりは一介の属国なので知らない方が良いらしい。
ビアンカと19であったルカがつけられた影の存在に、気が付いていても気が付かないようにしているのもそろそろ察したり。ビアンカはともかく、ルカはちょっとそわっとしているので。
それはメルヴィンを護ってもいるわけなので。帝国からの監視でもあるが、護衛としてのそちらの方が今や大きいらしい。
「やり過ぎたー……」
と、メルヴィンがまた夜中に頭を抱えるのも仕方なし。
メルヴィンの思い出した記憶あれこれで、その年齢以上の賢さに、だ。
思った以上に帝国に、皇帝に気に入られている。
それは充分「皇位争い」を狙える種になる。
メルヴィンには心底から関わりたくない席と地位だ。
彼はこの国を継いでいく幼馴染と妹の近くで、彼らのフォローする未来の方に将来設計なので――主に妹の近くで。
「神童も二十歳過ぎたらただのひとですん……」
本当に二十歳過ぎた自分はどんな人生を送れたのだろうと――今世では長生きしたいと願うのだけれども。
そして二十歳のちょっとそうしたゲームも解禁されていた彼は叫んでしまったのだった。
アイスクリームが美味しい季節ですね!
冬にあたたかい部屋で食べるアイスも美味しいけれど、夏場はかき氷で水分補給もでしょうか…猛暑、皆様もお気をつけて。(やはり頭痛になりやすくなっちゃってますわぁ…)




