14 影の一族おまけ話。
「そういえば修行て、どんなことするの?」
聞いてもよいかな? 教えられることだけでもとメルヴィンはルカに尋ねていた。
だってそれは――忍者じゃん。
影の一族。
メルヴィンの少年心がめちゃくちゃわくわくしてしまう。
「そうですねー……」
どこまでなら話しても良いかなとルカも悩みながら。
「とりあえず、身体強化の魔法は絶対ですね」
もちろん戦闘能力は必須だが。
おそらく自分が孤児院からあの家に引き取られたのもその適性があったからだろうなと、19と呼ばれていた頃を思い出す。
「へぇ、身体強化なんだ?」
忍者なら他の、そう変装とか、そうしたのではないのとメルヴィンは引き続きわくわくしたのだが。
「これは帝国の影の方針かもですね」
そうか、やはり忍者じゃないんだとちょっとだけ――……。
「母にはいざとなれば若様とお嬢様を担いで、三日三晩眠らず山を走り抜けられるようになれと」
「……ん?」
「帝国までの三日で行ける最短の抜け道と、遠回りだけどわりと獣が少なめな道とか、そうしたのを覚えるのも……」
「帝国まで? え、馬車でも一週間くらいかかるよね?」
「馬で走れば休憩入れても五日くらいですね」
「三日三晩?」
「山を走り抜け谷を飛び越え」
……。
身体強化、そゆこと?
いざとなれば、主を無事に逃がすこと優先。
そういえば歴史の雑学だったかで、戦国時代、褒賞もらうために主を担いででも連れ帰るのがあったっけ……。
……やっぱり忍者?
身体強化だけではなく、他の特技がある――そう、変化の魔法が得意なものとかも、やはり影の一族にはあるとかで。主に影武者な役割りで。
話を聞いて、メルヴィンはこの世界の認識をちょっと改めた。
そして一つわかったことも。
「話に聞いていた母様の、ある意味駆け落ち話……母様とビアンカだけで関所越えした話……」
何となく、どうやったか、わかった。
「改めて、自分がここにいるの……すごいなぁ……」
影の一族。すごいや。忍者に魔法、すごい。
「母上のそのおかげで……この世に、こうして貴方がいるんだ……」
ルカは公爵となる為に様々なことを頑張るまだ幼い主に、その背中に。
「若様に逢えたから……俺は……」
あの甘い菓子。
あの幸福。
差し伸ばされた手。
「……俺も、頑張りますよ」
19。
その名を捨ててはいない。
帝国での、あの影の家での苦しい記憶は、それでも「基礎」は必要だ。母の愛あれど更に厳しい修行で、改めて。
19であったからこそ、この国に来れたし、彼にもつけられた。
いや。
彼に拾われるための日々であったのだ。
メルヴィンに使われる――彼の駒になることが、今のルカの望みであった。
「早く黒蛇の名を継げるようにならなくちゃ」
早くお役に立ちたい。
――いや、それちょっと怖い、と。
メルヴィンがドン引きする忠誠であるが。
19はもともと番号で「捨て駒」枠だったのに。むしろそれがあったうえで駒にしてほしいレベルにまで至ってしまいました、とさ。
…一周回って斜上に飛び出しちゃいました。
「主人公」をどうにかしやいいじゃん、と思われているでしょうが、そこはもう少々お待ちを。
…ヘロヘロ…ポカリうめぇ…。




