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 ところで、魔術具について、もうひとつ気になることがある。

「魔術具の魔力は、どうやって維持されてたのか、分かるか?」

「残念ながら。ただ、脱出した後に調べてみて、少し分かったことがあります。魔術具の下部、外装と内装の間に空間が空いているのですが、そこに魔力を流すと魔術具として起動するようです。魔術具の一部を切断してしまったためか、うまく起動しませんでしたが」

「うーん、物質的な要素は、魔術にはあまり関係ない気がするけどな…。ただ、そうだな。魔術具なんてものが成立するためには、魔術を魔術たらしめる魔力操作が継続されなきゃならないよな。そのためには、タレス村の時の魔族みたいに、自律的に維持される魔力回路が必要だろう。多分、その空間を中心に、魔術具全体に自身を維持するための魔力回路と魔術の効果を発揮するための魔力回路が形成されるんじゃないかな」

 タレス村の一件の後、あの魔族の構造を真似れば、魔術の保存ができるのではと考えてきた。けれど、自身を維持する魔力回路とはどんなものか、手掛かりがなさ過ぎて実現できずにいた。

「シエラさん、その魔術具は今どうなってる?」

「私が預かっていますよ。と言うより、目立ちすぎるので、隠してあります。大分辺鄙な場所ですが、好きに見て下さって構いませんよ。一度ご案内しましょう」

「え、いいのか!?あ、俺の、師匠、にも見せて構わないか?悪用するような人じゃない」

「タクマさんに魔術を教えた方ですね。『科学』にも詳しいのですか?」

「うーん、『科学』は、流石に俺の方が詳しい、と思いたいな。あの人に『科学』を教えたのは俺だから。ただ、滅茶苦茶頭いいからな、あの人。ちょっと自信ない」

「そういえば、タクマさんの故郷に魔術はないと仰っていましたね。同郷の方ではないのですね。どんな方でしょうか。タクマさんに魔術を教えた方となると、気になります」

「それじゃ、知り合いの魔術師が会ってみたいって言ってるって伝えてみるよ。あっちもちょっと訳あって隠遁生活みたいな感じでな。勝手に紹介はできないんだ。悪いな」

 外界と関わらないわけではないのだが、何となく、国の中枢との関わりは避けているように思えた。

 そうして、古代魔術具を見せてもらう予定を決める。『拓真の師匠』も来て構わないと言う。ユミルは来るだろうか。魔術具となれば、多分来るだろう。国家中枢との関わりは避けているとして、シエラも中枢との関わりは深いはずだが、シエラ自身が中枢というわけでもないのだし。

「それにしても、封印の魔術具なあ。古代人は何を思ってそんなもん作ったかなあ」

「確かに、必要な場面なんて、あまりなさそうですね」

 封印された当人が言うと、どうかという気もしてしまうが。そんな、封印しなければならないようなものが、古代には彷徨いていたのだろうか。そんな物騒な世界は嫌だ。

「実は、封印が目的じゃなかったりしないか?例えば……そうだな、食糧保管庫とか。外から見れば、20年経っても状態が変わらないんだろ?多分、調理済みの料理も保管できるだろ?ああ、うん、いいじゃないか。安全のために、中からも魔力回路にアクセスできるようにして。それは使えそうだ。そしたら、持ち運び用に小型のを作るのもいいな!」

「その発想はありませんでした……。保管庫にしては、あまりに大仰な気もしますが。でも、そうですね。中に入れておけば劣化しないというのは、使い途が多そうです。それでしたら、魔力シールドで浮かばせて、持ち運びしやすくするのはどうでしょうか!」

「浮遊機能か、それは必要だな!」

 確かに、今のこの世界の感覚からすると大仰に感じる。けれど、古代文明にとっては当たり前の技術であったかもしれない。真実は分からないが、古代人がどう使っていたかはあまり関係がない、とも思う。古代人と同じ使い方をしなければいけない理由などないのだ。今その技術を使えるなら、物騒な使い方よりも、生活を豊かにする使い方がいい。

「けど、そうすると、シエラさんは食糧保管庫に閉じ込められちゃった人になるなあ」

それも、20年間となれば。

「うわ、それは……何だか嫌ですね……」

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