20
そうして、20年の月日が流れた。
聖女が封印から復活した、との噂が流れた。今度も、事実であるらしかった。
シエラが封印された後、聖女と呼ばれる地位にはシエラの妹が収まったらしい。封印される程の罪を犯したとされる人物の妹を?と疑問は抱きながらも、シエラの妹ならそう問題はないだろうと思ったが、予想に反して評判は悪かった。曰く、実力不足、高圧的、余計なことに首を突っ込んで事態を悪化させる、等。実力に関しては、シエラと比べられては可哀想だと思ったが、人物としてもあまり優れているとは言い難いらしい。新たな聖女の評価が低下して行くのに伴い、聖女シエラは一部で再評価されるようになった。流石に大きな声で唱える者はなかったが、聖女シエラの罪は妹が捏造したのでは、という声も聞かれた。
そんな中、魔物の被害が再び増え始め、魔族による襲撃も報告されるようになった。レイナード町にも再び冒険者ギルドの支部が置かれたが、魔族となれば、一般的な冒険者では対処が難しい。聖女が派遣されるのだが、討伐に失敗することが多いようだった。国は荒れ、呼応して軽度・重大なものを問わず、犯罪も増えた。犯罪は本来冒険者の管轄外だが、組織的な犯罪の取り締まりに冒険者が駆り出されることもあった。
拓真も取り締まりに駆り出されたひとりだったが、あまり気分のいいものではなかった。この世界の社会はまだまだ未熟だ。教育機会を一切得られない者は多い。職を得るための知識もスキルも与えられず、金も土地もないとなれば、真っ当な職に就くことは不可能だ。そうした者から、犯罪者になって行く。犯罪を犯すのは悪いことには違いないが、なりたくて犯罪者になっているわけではないのだ。
そういう犯罪者の背後には裕福な貴族がいたりして、彼らを使い潰す、切り捨てる。これには随分と苛立ちを覚えた。どうせ使うなら、せめてもっと上手く使ってやれよと。少しはまともな報酬を払うなり、技術を仕込んだりしたらどうなのか。その方が、自身の手駒としても優秀になるのではないのか。治安だって、僅かなり安定するのではないのか。
現に犯罪を犯している者を、放置するわけにはいかない。けれど、根本的な原因は、間違いなく他にある。それをどうにかしなければ、犯罪は減って行かないだろう。魔物に魔族、そして貴族の腐敗。どうにかできないものだろうか。国は、動いてはくれないのか。そんな国は必要だろうか。いっそのこと滅ぼしてしまえばいいのでは、などと物騒な考えがよぎるくらいには、国内は疲弊していた。
聖女シエラが封印から脱したのは、そんな情勢の最中だった。
というわけで、20年が経過してしまうので、主人公がおっさんは嫌だなあというだけで、不老の魔術を開発させました。
20年経過するのは、モデルに寄せようとした名残なので、無くしても良かったのですが。不老を実現する議論に、割合面白いエッセンスがあるように感じたので、残しました。




