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12-1

 翌日、朝早くにガレル町を出たふたりは、街道をタレス村に向かって歩いていた。時折、獣の気配や、獣が集まりそうな水場を見つけると、街道を離れて確認する。足跡や魔術の痕跡のような、魔物の存在を感じさせる何かがないか、調べるのだ。

 タレス村への道を半ば以上過ぎた頃、池のほとりに所々焼け焦げた獣の死骸を見つけた。注意深く観察すれば、鋭い爪を持つ大きな足跡も。足跡の先は追えなかったが、魔力を探索すれば、2kmほど離れた位置に大型獣の気配がある。

「シエラさん、分かるか?」

「ええ、もちろん。行きましょう」

 近づいてみれば、それはフレイムベアだった。

 ただの獣と魔物を見た目で区別することは困難なことが多いが、周囲の魔力の動きを見ればそれが魔物であることは分かった。炎の魔術の前段階、可燃性ガスを作り出す動き。同種の別の魔物という可能性もなくはないのかもしれないが、この辺りに棲息する熊型の魔物と言えば、フレイムベア以外に知られていない。まあ、万一別の魔物だとしても、あまり関係ない。拓真ひとりで対処できるはずだ。

 シエラはどうだろうか。魔王を倒すくらいだから、フレイムベア程度は訳ないだろうが、この国で恐らく随一の魔術師がどんな魔術を使うのか、興味はある。ついでに、自分が自重せずに魔術を放っていいのか、測りかねてもいる。

「シエラさん、悪いけどあいつを倒すの任せてもいいか?一応チームとして動くわけだからな。どんな魔術を使うのか、見ておきたい。実力がどうこうっていうんじゃなく、動き方の確認っていう感じでな」

「はい、任されましょう。元々、私の討伐任務に着いて来て頂いている形ですし」

「悪いな。実力って言うなら、シエラさんから見た俺の実力が不安だろうが」

「いえ、タクマさんが強いことは、魔力を見れば分かります。フレイムベアなら、タクマさんだけで楽勝ですよね?私は人の魔力を数値化して把握するんですが、タクマさんはとても高い魔力をお持ちですね。宮廷魔術師の中でもトップクラスです。ちょっと驚きました。こんなに高い魔力を持った方がこの辺りにいるとは聞いたことがありませんでしたので」

 シエラの前で魔力操作をしたことはないはずだが、ぱっと見て分かるものなのだろうか。あまりそういう見方をしたことはないから分からない。けれど、なるほど、初対面の時に驚いていたのは、そういうことだったか。

「悪いな、わざわざシエラさんに依頼する程のことはなかったかもしれない。冒険者になって日が浅くて、ギルドとしてはまだ実力把握中なんだ」

「いえ!タクマさんが悪いことは何もありませんので!…ですが、人の魔力を測る方法が広まれば、もっと効率良く対処はできるかもしれませんね…」

 ひょっとして、普及させる気だろうか。拓真としては、そういう魔術がなくて助かっているのだが。変に注目されたくはないのだ。

「まあ、明らかに戦力過剰ってのは珍しいんじゃないか?それに、いつだって予想外のトラブルの可能性はある。戦力過剰くらいの方が安心ではあるな。今回も、状況に不審な点があるし、もしかしたら、やっぱり俺だけじゃどうにもならなかった、てこともあり得る」

「うーん、それも確かにそうですね…」

 ところで、シエラの「人の魔力」という言い方に引っ掛かりを覚えた。多分、シエラはユミルとは違う意味で魔力という単語を使っている。ユミルの話にあった、どれだけの魔力を操作できるかという魔力操作能力、つまり、その人の意識の特性を魔力と呼ぶスタイルだろう。

(うーん、用語が統一されてないとややこしいな)

 ユミルの定義する魔力を、魔素と呼んでみるとどうだろうか。

(そしたら、粒子として見れば魔素子?波動として見るなら魔素場?それか魔場?)

 しっくり来ない。魔力子、魔力場の方がそれらしい気がする。

「シエラさんが魔力って呼んでるのは、意識の能力のことだよな?俺は空間に満ちてる魔術の源みたいなのを魔力と呼んでるんだけど、そっちは何て呼んでる?」

「え!?」

「ん?」

 思いがけず大きな反応が返ってきた。

「そうなんですよ!空間にあるそれ、私は魔素と呼んでいますが、それを意識で動かして魔術を構成するんですよね!頭の中のイメージを投射していると思っている人が本当に多くて!」

「そうなのか?…イメージが形になるわけないよな?」

「そうですそうです!イメージしたものが頭の中に形としてあるわけじゃないのに、実体化なんてしませんよね!」

「あれ、じゃあ皆どうやって……いや、後にしよう。取り敢えずフレイムベアを倒さないと。じゃあ、シエラさん、頼めるか?」

「はい。では早速」

「あ、奴の損傷は最小限にできるか?タレス村への支援物資として持って行きたい」

 こくりと頷き、何やら呟き始める。呪文を唱えるスタイルか。言葉の意味するところに意識を集中することで、魔力操作の助けにするのは一般的だとユミルから聞いた。ただ、そういうスタイルで慣れてしまえば有効なのだろうが、拓真にとっては、呪文を唱えるのは却ってやり難いだろう。呪文に意識を持って行かれて、魔力操作に集中できなそうだ。

(あ、魔力を認識せずにどうやって魔力操作してるのかと思ったけど、そういうことか。何をやってるか分かってないけど、結果的に魔力操作するように意識が集中されてるんだな。そりゃあ、習熟し難いよなあ)

 非貴族階級に魔術が浸透していないのも頷ける。彼らは、魔術の習得に、そんなに時間と労力をかけられないだろう。

程なくして、

「迅雷!」

 その言葉と共に、一条の紫電がフレイムベアの頭を貫いた。見事に頭部だけが黒焦げだ。

「おー、流石だなあ」

 威力もさることながら、精度が素晴らしい。静電気放電の通り道など、簡単に制御できるものではない。

(電荷でシールドしたかな?)

 静電気放電が通った道に沿って、拓真が魔力に電荷を形成させる時と同じような魔力の動きが見えた。ということは、魔力を操作して電荷に変換する流れは、ユミルや拓真が使う魔術と同じなのだろう。呪文を唱えるにせよ唱えないにせよ、本質的にやっていることは同じということだ。

 魔術について、色々と聞いてみたいことはあるが、まずはやるべき事をやってしまおう。

「それじゃ、悪いけど、こいつ軽く解体させてくれ。そんなに時間はかけないから」

 断って、村の人達が苦労しない程度に手早く解体する。捨てる箇所はあまりない。フレイムベア自身の皮で包んで持って行くことにする。

「それじゃ、こいつを背負いまして、と。あ、無理だデカ過ぎ。いいや引きずってくか」

 タレス村に向かって歩き出す。

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