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 タレス村は、人口300人程の村だ。そこに複数の魔物が襲来し、何と50名を超す死者を出している。甚大な被害と言えるだろう。タレス村の東側には国境を成す広大な荒野が広がり、そこに魔物の棲息域が存在する。目撃者の語る魔物の特徴は、そこに棲息する魔物と一致しており、棲息域から魔物が溢れたと考えられるが、魔王と直接関わりのある土地ではない。魔物が溢れた原因ははっきりしなかった。

 さらに、村を襲撃した魔物。あくまで推定だが、フレイムベアが複数、らしい。タレス村近隣の魔物棲息域では、中心部近くに棲息する魔物だ。一方、魔物棲息域の辺縁部に棲む魔物は確認されていない。溢れると言えば、当然境界から溢れる。辺縁部の魔物ではなく、奥地の魔物だけが出て来るというのは、普通ではない。

 フレイムベアと言えば、魔術を習い始めた頃を思い出すが、今なら複数いても問題なく対処できるだろう。けれど、そう言ってしまえる魔術師がほんの一握りだというのは、徐々に分かってきた。フレイムベアはかなりの難敵と見做されている。それが複数ということで、魔術師として傑出した聖女が派遣されたのだろう。とはいえ、そんな難敵に聖女ひとりというのはいいのだろうか。それだけ実力が高く評価されているのか。10代半ばに見えるが、その歳で。

「ーーってわけで、この件は少し慎重に行きたいと思ってる。とは言っても、大した情報は得られないとは思うけど」

「分かりました。そういった判断は、冒険者さんの方が本職ですから、お任せします」

 話してみれば、シエラは気安い性質だった。聖女などと呼ばれていても、驕った様子はない。それを言うなら、国からの信頼篤い様子の聖女が単身で魔物討伐に来ていることも、人柄を表していると言えるかもしれない。国からは道中の護衛くらい付けろと言われているそうだが、「護衛されるっていうことは、皆さんが気を張っている中、私はただ休んでいなければいけないんです。それが落ち着かなくて」と苦笑いしていた。

 その日のうちに、拓真の口調は砕けたものになっていた。一方、シエラの口調は変わらない。気にしなくていいとは言ったものの、帰って来た答えは「癖みたいなものなので」だった。どことなく、ユミルに似たものを感じる。

 馬車に揺られること3日。拓真とシエラは、タレス村に程近いガレル町で馬車を降りた。

「こちらでは、何を?」

「挨拶を兼ねて聞き込みだな。ここのギルドには到着を伝えておかなきゃならないし、タレス村を襲った魔物について、情報を集める必要もある。魔物の目撃情報が得られればラッキーってのと、襲撃がタレス村だけとは限らないから、規模の把握のためだよ」

 聞き込みの最初は、もちろん冒険者ギルドだ。魔物棲息域に近い町のこと、当然冒険者ギルドの拠点がある。

「タレス村の魔物討伐に来ました。拓真と、こちらが聖女様です」

「シエラです。よろしくお願いします」

「ギルドマスターのドリューです。聖女様、我々の手が足りず申し訳ないが、よろしくお願いします。タクマも、すまないが頼む」

「それも聖女の役目ですので、ご遠慮なく」

「どこも人が足りてませんからね。聖女様の言う通り、遠慮は不要です。じゃあ、早速ですが、状況を教えてもらえますか?」

「おう。襲撃は3週間前、フレイムベアが5頭だった。まあ妙な話だな。フレイムベアが群れで動くなんざ、聞いたことがねえ」

 確かに少し気になる。単独行動を好む生物が集団で動くのは、どんな時だろうか。

「それ以降、幸い襲撃はないが、随分時間が経っちまってるから、魔物がどこ行ったかってのが難問だな。全く、人手不足ってのは厄介だよ」

 今、冒険者ギルドは国中どこも人手が足りていない。冒険者が遠方の調査・討伐に駆り出される場合が増えている。ガレル町の冒険者も、経験豊富な者が皆遠方に出向いていた。そのせいで、遠方から拓真がタレス村の案件にやって来るという悪循環に陥っていた。どうしても移動に余計な時間がかかる、時間が経ってしまうからさらに調査にも余計な時間がかかる。魔王は討伐されたが、だからといって即座に魔物が減るわけではない。もうしばらく、この状況に耐えなければならない。

「他の村や町には、襲撃はないですか?」

「タレス村関連と見られる情報は入ってねぇな。尤も、受身で情報を待ってるだけの状態だが」

「分かりました。なら、情報収集は俺も手は打っておきます」

「すまねぇ、頼む。ただ、タレス村には早く行ってやってくれーーもらえますか」

「「もちろん(です)」」

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