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異界の用心棒  作者: ごじう だい
12/14

釈放

 十五分ほど待たされて、三十郎が部屋へ入って来た。

連れ添った衛兵が現状を説明するが、一部濁されていた。ハリー達と一緒に捕まえた賊は、冒険者ギルドを追放されたならず者で、他の九人も同じく追放者だと言う事。今現在取り調べを受けてる賊が、行商人を殺害した事を仄めかしていると言う事。それと関連して、ハリー達を襲った連中の何人かが、エルトペ村、ペルトロ村で連続して起こった行方不明事件に関与していると言う事を。

 その話は、当事者ではない三十郎にはさっぱりだったが、ハリーは神妙な顔をして事情を聞き入ってた。そして衛兵の話が終わって沈黙が暫く。

「済まねぇな、サンジューロー。事情は後で話す…」と、話に付いてこれない三十郎を見て言う。三十郎は「構わんさ」と軽い口調で返す。

「…それで……」その沈黙を破ったのはハリーだった。続けて「アンタ等には黒幕の見当は付いてるのか?」帽子の鍔の下から目を光らせて尋ねるハリー。

 現状を説明してくれた衛兵は、ドアの外を気にするように辺りを見回して、顔を近づける。

「実は…、この町を統治してるフェルディナンド侯爵一家には頭のオカシイのが一人いるんだ…。次男坊のスコルってヤツでね。今は二十歳を超えてるだろうが、そりゃあもうガキの頃から身分差を傘に町民にやりたい放題さ。あの次男坊のガキの頃を知ってる同僚も今回の事件はスコルの仕業じゃねぇか? と言ってる…」

 手短に話して、「俺が話したって事は内緒だぜ?」と付け加えて、衛兵は顔を離す。と同時に、待合室にハリーを尋問した衛兵が入って来た。

「二人共待たせたな。犯人が襲撃を認めた。もう帰ってもいいぞ」

「「…………」」二人共無言で詰所を後にする。暫くの沈黙のあと、事の全ての事情を知らない三十郎が、遠慮がちに話しかける。

「…なぁ……」と口火を切ろうとするが、「宿に着いてから話すよ…」とハリー。二人は再び無言になる。だが三十郎は胸糞悪くなる話になる事を覚悟していた。

 美酒の酔いは、二人共すっかり覚めてしまっていた…。

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 宿に着いた二人は、ロビーでエールを呑みながら沈黙していた。三十郎はハリーが話し出すのを待っている。やがて、ぽつりぽつりとハリーがこれまでの経緯を話し始めた。

 その話の内容は、三十郎が予想していた通りの胸糞悪くなる内容だった。二つの立ち寄った村で連続して起こった娘たちの謎の失踪。そしてその失踪した娘たちの何人かが、魔物や動物に食い荒らされた遺体で発見された事。その遺体から見つかった二つの鏃。二つの村の村長に依頼されてこの町に着た事。一緒に来た行商人が、昨晩宿で殺された事。その行商人を殺した連中が、さっき襲撃してきた賊である事。この事件の黒幕が、もしかしたらこの土地の領主の関係者かも知れないと言う事。

「……‥…」三十郎は何も言わない。が、静かに怒りを醸し出している。

「…人間狩り……」ハリーがボソッと言う。その残酷な言葉の響きに、三十郎は鳥肌が立つほどの怒りを覚える。エールを持つ手が震える。今すぐ殴り込みに行きたい気分だ。

「なぁ、聞いてくれサンジューロー。これからの事だ…。俺はヤツ等に鏃を一つしか渡してない。もう一つは俺が持ってる。それをサンジューローに預けたい……」

「いいのか?」その言葉に驚く三十郎。

「ああ、お前なら信用して預けられる。恐らく連中はもう一度俺に接触を図ってくるだろう…。領主がこの事件をもみ消したいと思ってるなら、俺が持ってる鏃を狙ってくる…。俺もノコノコと切り札を持って敵地に乗り込む気はない…。自分が持ってるのと同じくらいに安心できる場所って言ったら…、お前ぇさん、サンジューローしかいねぇ……」

「…………」

「知り合ったばかりだが…、頼まれてくれるか……?」

「……わかった…」三十郎は迷う事なく引き受けた。

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 翌日、ハリーが目を覚ましたのは昼少し前の時間だった。昨晩はなかなか寝付けず、明け方近くまでベッドで微睡んでいた。ベッドから起き上がって着替え、ガンベルトとポンチョを肩から引っ提げて部屋を出る。食堂も兼ねたロビーに出ると、三十郎がテーブルでお茶を飲んでいた。「俺にも茶をくれ」とハリー。暫く無言が続く。

「…今日はどうするんだ…?」とハリー。

「…そうだな…。連中が餌に掛かるかどうか…、町をブラブラしてみるさ…」

 茶を飲みながら三十郎。

「巻き込んじまってすまねぇな…」

「…いいさ」暫く無言の二人。

「さてと…」と、茶を飲み終えた三十郎が立ち上がる。「俺はこれからこの町をブラブラ歩いてみる。じゃあなっ!」と、ハリーの見送りの言葉も待たず、腰に刀を指しながら宿屋を出て行く三十郎。

 残されたハリーは、一人茶を飲みながら、ゆっくりとその時を待つ。それから約十五分後、宿屋に衛兵が雪崩れ込んできた。

「おいでなすったな……」と、独り言を呟きながら、最後の一口を飲み干すハリー。

 衛兵の一人が訴状を高らかに読み上げる。

「ハリー・ウェストウッド。これより当地領主フェルディナンド様の名に措いて、貴様を連行する!!」

「待ってたぜぇ…」そう言いながら立ち上がるハリー。その顔には不敵な笑みがうかんでいた。

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