尋問
詰所でのハリーは、衛兵等が要求した武装解除に応じて、腰のガンベルトと肩から斜めに下げてたガンベルトをテーブルに置いた。腰の獲物はS&WのM500、斜めに下げたガンベルトからはストックと銃身を切り落とした10番ゲージの水平二連式ショットガン。
「これで俺が持ってる獲物は全部だ」ふんぞり返りながら葉巻を吹かすハリー。
同じ部屋に居る五人の衛兵は、口々に「何だこれは?」「見た事ないぞ」などの言葉を口にしている。
「で? 賊に襲われた俺に何が訊きたい?」ハリーが口火を切る。
「連中に襲われた理由に心当りは?」尋問役の衛兵が言う。
「…連中の一人がこいつを寄こせと言っていた」と言いながら、二個ある鏃の内の一個をテーブルに転がす。「…お前等には見覚えあるか?」と、今度は逆にハリーが訊く。
その鏃を見た尋問役の衛兵がピクリと頬を動かす。「……これを何処で?」
ハリーは経緯を話し始めた。ここラグーの町から馬車で七日ほどあるペルトロ村と、その先にある二日ほど離れたエルトぺ村で起こった事件の話を。
「……俺はもともとは旅の流れ者でな…。エルトペ村に着いたのが今から約一月前だ…。その村に長居するつもりはなくて、一日二日で出て行こうと思ってた、それが俺がその村に着いたその日に事件は起こった。村娘の十五歳の子が行方不明になっていた。で、流れ者の俺が疑われて、牢屋へ放り込まれたのさ。だが二日後に釈放された。行方不明事件は俺が牢屋に入れられた翌日もその翌日も続いたからな。村で世話になってる一週間の間に、合計六人の十二から二十六までの娘が行方不明になったが、その内の三体が魔物や動物に食い荒らされた遺体で見つかった。その遺体の中から見つかったのが、今目の前に出した鏃さ…。同じような事件は隣村のペルトロ村でも起きていた。若い女が行方不明になり、その内の何体かは食い荒らされて見つかった……。そのペルトロ村の遺体からも、これと同じ鏃が見つかった。この事件の最中に、どの村にも泊まらず、村から離れた場所で野営している五~六人の男達が、同じ行商人に二度ほど目撃されている……」
「……それで?」息を呑みながら続きを促す衛兵。
「二つの村人の話では、こんな綺麗な鏃が作れるのは、この近くだとラグーの鍛冶屋くらいだと。その二つの村の村長から金を貰って頼まれた俺は、二つの鏃を持ってこのラグーの町に行商人と一緒に来て、鍛冶屋で聞き込みをしてたってワケさ。三日前にこの町に来た俺だが、あと三軒の聞き込みで全部回れたんだろうが、俺がこの事件を嗅ぎまわってるってのを、賊の連中は感づいたんだろう。それがさっきの襲撃ってワケさ……」
「…………」腕組しながら考え込む尋問役の衛兵。その様子に「…何か知ってるのか?」とハリー。
「……実は…、ペルトロから来た行商人が、昨晩宿で何者かに殺された…」
「…何だと?」ハリーが目を見開く。
尋問の衛兵が周りの同僚を見回す。その内の何人かが小さく頷いた。
「ハリーさん…、この事件はひょっとしたらアンタが考えている以上に大事になるかも知れない…。この鏃は…、この辺一帯を治めてる大領主フェルディナンド様の一族しか使えない鏃なんだ……」
「……じゃあ、そいつら一族の誰かがこの事件を起こした…、と…?」
コクリと頷く衛兵。続けて「…その可能性が高い…」と付け加える。
「なぁ…、ハリーさん…。この一件、後は俺達に任せて貰えないか?」
厳しく尋問するはずだった衛兵だが、今は脂汗を掻きながら懇願の目で言う。
「…………」尋問の衛兵の目を見ながら、しばらく無言で考え口を開くハリー。
「…任せてやってもいいが、その領主様ってのは、お前等の雇い主なんだろう? 有耶無耶にされたり…」「必ずハリーさんの納得行くようにするからっ!!」と、ハリーの言葉を遮りながら言う衛兵。
「……わかった…」と一言ハリー。「…すまん……」と、心底申し訳なさそうに項垂れる衛兵。
「だが鏃は一個しか貸さねぇぜ この二個の楔は世話になった村の連中から託されたモノなんだ。無念に死んだ彼女たちの事を考えたら、アンタ等はまだ全部は信用出来ねぇ。もう一個の楔はその保険だ」
「…………」何も答えない衛兵。ハリーも暫く無言になる。やがて
「もういいだろ? 出てっても。まだ俺に訊くことはあるか?」と立ち上がりながら言うハリー。衛兵達は誰も何も言わない……。
その態度を肯定と受け取ったハリーは、テーブル上のガンベルトを腰と肩に装着する。
「…………」無言の衛兵達。誰もそれを止める者はいなかった。
「それと!」ハリーが少し大声を出して言う。「黒い髪と目の男だが、ヤツは俺の相棒だ。すぐに釈放してくれ」
「わかった…。少し待たせる事になるが、すぐに釈放する。別室で待っててくれ」
ガチャリ、と重々しい音を立てて尋問室の鍵が開いた。




