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夢逢い

今回は二話ですね。意外としっくり来るタイトルがないのでタイトルを考えるのが大変だったりするんですよね〜。あと、前回莉々宮の髪色と目の色を書いてなかったんですよね〜。この二話を出す前に一話を少しだけ書き換えとこうかなって思います。なので二話を出されてから一話を読んだ人はあるやんってなるかもですね。まあそんなに人はいませんが二話を出すより前に一話を呼んでくださった方は戻るのが面倒だと思うので言っときますが莉々宮の髪色は藤紫色で短髪です。なんなら藤紫より少し薄いぐらい?のイメージですね。目の色は翠玉色、透明感のある緑色って感じです。では是非本編も読んでみていただけたら嬉しいです。

莉々宮はボロボロになった体をゆっくり引きずりながら反対の物音がした方に歩いていく。先程通った廊下を引き返すだけだが、やけに遠く感じる。廊下の中は不気味なほど静かで莉々宮の足音だけがこんこんと響いてくる。

「あっち側に誰かいるかな…もしボクを誘拐した犯人だったら困るけど…でもこの体で一人でいるわけにもいかないし…」莉々宮は一瞬頭の中に迷いが生じるその迷いを払いのけながら再び足を進める。正直莉々宮としてはもし犯人であっても命までは取られないんじゃないかと思いすがるような思いで先程の分かれ道の方まで戻っていく。分かれ道まで辿り着き莉々宮は近くにあった段差に一旦腰掛ける。

「ふぅ…魔獣との戦いは疲れたなぁ…」体は正直いって割とボロボロでありこれ以上の戦闘は不可能だろう。だけど進むぐらいならまだ出来そうかな?もし先にいるのが誘拐犯で脱走がバレても…治療ぐらいはしてくれるよね?そ、そうだといいけど…。そもそも物音がするだけで人が居るかどうかも不明だが向かってみないことには始まらない。

「少し休めたし行ってみようかな」

莉々宮はゆっくりと腰を上げて壁に沿って先ほど行った左側とは反対の右側に行ってみることにする。こちら側には壁に少し魔法の灯りが設置されていて壁に沿って歩かなくても方向感覚を見失わずに歩くことができそうだ。数分歩いていると曲がり角が見えてきてうっすらと光が差している。

「結構歩いたしかなり広い施設みたいだね?」何故このような場所があるのかは分からないが危険なことに巻き込まれたのは間違いなさそうである。そんなことを考えながら曲がり角を曲がると少し広い空間に出た。そのまま正面を覗いて見ると先程莉々宮が囚われていたのと同じような牢屋がいくつか並んで見えた。

「あ!誰か入れられてる!」

よかったぁ…ボク以外にも捕まってる人いたんだ…。見たところ入れられている人物は二人でそれぞれ別の牢屋に入れられているようだ。片方は長く明るい栗色の髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ少女で服装はいかにも貴族って感じの豪華な雰囲気が漂うドレスだ。その隣の牢屋に入れられているのはグレーの髪を短く切りグレーの瞳を持つどこかパッとしない雰囲気の男の子で服装は冒険者のような服を着ており、長袖なので虫刺されなどへの対策もバッチリである。二人とも右足には足枷が嵌められて鎖で繋がれており自由に動けないようになっている。う〜ん…どうやって声をかけよう…やっぱり第一印象が大事っていうしここは明るくいくべきかな?でも貴族っぽい子だしあんまりぐいぐい来られるの苦手かもしれないし…。というかワンチャンボクが閉じ込めた犯人って誤解される可能性もあるよね?え、そんなことより早く声かけた方がいいのかな?

莉々宮がそんなことを考えていると向こうから声をかけてきた。

「ちょ、ちょっとあなたこんなところで何してやがりますの!?」

「え、えっと…なにしてるんですか…?」

二人がそれぞれ声をかけてきたので莉々宮は慌てながら対応する。

「あ、その…ボクは怪しい人じゃなくて…えっと…」

「怪しくなくてもそんなに慌ててたら怪しく見えますわよ…」

少女のほうから辛口なコメントをされてしまった…。

「誘拐した犯人だと思ってるわけじゃないよ?それはさっきダークエルフの子が僕達の前に来て自分で犯人って言ってましたから…」

莉々宮は誘拐犯だと勘違いされたわけではないと知りホッと胸を撫で下ろす。二人は自分以外に誘拐された貴重な人材なので莉々宮としてはできるだけ協力しておきたい。なので友好的に接してくれたのは正直いってありがたい。莉々宮は少女の方に向かって中腰になり視線を合わせながら二人について気になることを質問する。

「まず二人の名前を教えてもらっていいかな?ボクの名前は莉々宮・甘音だよ、よろしくね!」

すると少女の方がなにが不服だったのが分からないが不服そうに自己紹介をしてくれた。

「わたくしの名前はランカタ・メルディですわ。…いっておきますが私は中腰をされるほど子供じゃないですわよ!」

どうやら中腰をされて視線を合わせたことが不満らしい。「ご、ごめんね?小学生ぐらいに見えたから…」

「しょ、小学生!?」メルディが顔をリンゴのように真っ赤にして地団駄を踏む。どうやら火に油を注いだような気もするが一旦それはほっといてもう一人の少年の方に目を向ける。

「僕はランカタ・ハロデだよ。姉さんとは双子の姉弟なんだ。ま、まあ姉さんは少し怒りっぽいかもしれないけど気にしなくていいからね。」

「そ、そうなんだ…二人は姉弟なんだね?それにしてはかなり雰囲気が違うけど…」

どちらかというとハロデ君の方がお兄ちゃんに見えるなぁ…そんなこと言ったらメルディちゃん怒っちゃうかな?「今失礼なこと考えてましたわよね!?そもそもわたくしは貴族ですのよ?もう少し敬ってくれてもいいんじゃ、な、なくってよ?」喋り方に慣れていないのかメルディが少し舌を噛みながらそんなことを言ってくる。

「でも姉さんって三女だし当主の継承権はないような…」

「よ、余計なことは言わなくていいの!」

メルディが慌てながらハロデを叱るが正直あまり意味をなしていない気がする。でもボク記憶がないから貴族って言われてもメルディちゃん達の家名は聞いたことがないんだよね…。有名な貴族なのかな?

「見ての通り僕達は捕まってて逃げ出せませんけど…そ、そんなことより莉々宮さん怪我してますよ?だ、大丈夫なんですか?」ハロデが心配そうに莉々宮のことを見てくる。メルディもハロデの発言でハッとしたのか莉々宮のことを心配そうに声を掛けようか迷っている。確かに二人との話に夢中になっていたが怪我のことをすっかり忘れていた。莉々宮も正直今思い出したぐらいだがまあまあな重症である。

「あ、心配してくれてありがとう…。これぐらい平気だよ!よいしょ…あ、いてて…」莉々宮は二人に心配をかけまいと元気に動こうとするが足がうまく動かず少しバランスを崩してこけてしまう。その様子を見てメルディが呆れた様子で声を掛けてくる。

「まったく…そんなんじゃあすぐにダメになってしまいますわよ?ほらこっちへいらっしゃい」そういってメルディが手招きをしてくるので莉々宮は足を引きずりながらゆっくりと牢屋の方に近づいていく。

「えっとメルディちゃんどうしたの?」

「ふん。そこで大人しくしてるといいですわ」

莉々宮はメルディに言われた通り大人しく牢屋の前で待機しているとメルディが莉々宮に向けて右手をかざしてくる。すると緑色の光が莉々宮の体を包み傷を段々と塞いでいき莉々宮の体を癒していく。

「わぁ!回復魔法?メルディちゃんありがとう」

莉々宮はさっきよりも格段に元気になり、メルディの手を握ってブンブンと振る。

「と、当然ですわ...このぐらいなんてことなくってよ」

メルディはスンとした感じで当然という雰囲気を出しているが顔は赤くなっており、照れているのが丸分かりである。

「姉さんは回復魔法が得意なんだよ〜。結構魔力は使うみたいだから無駄遣いはできないみたいだけどね」

魔力を使ってまでボクのことを治してくれたみたい。素直に嬉しい。

「そういえばさっきダークエルフの子が犯人って自分で言ってたって言ったよね?その子はどこに行ったのかな?」

「えぇ、確かにいいましたわ。わたくし達の前に来て様子を観察しに来たのだと思いますわ。背丈はわたくしよりも低く褐色の肌でしたので見たらすぐわかるはずですわよ」

「えっと…その子はあっちの階段を登って行ったからもう近くにはいないかな...」

莉々宮はハロデが指を指した方振り返るとそこには上の階へと続く螺旋状の階段があった。じゃあこの近くには犯人の子はいないってことだよね…。なら少し安心かな?莉々宮がホッとしているとメルディが少し不機嫌そうに意気込んでいた。

「あのダークエルフ、わたくし達をこんな所に閉じ込めておいてただじゃおきませんわ!きょ、極刑はその…少し言い過ぎですし...と、とにかく重罪にしてやりますわよ!」するとハロデが残念な現実を告げてくる。

「で、でも姉さん僕達捕まってるわけだし正直ここから逃げて帰る算段も全然ないわけで…」

「ちょ、ちょっと!?そういうことは言わなくていいんですわー!」メルディがハロデの発言に顔を(かまど)の炎のように真っ赤にしながら反発する。その様子を見ていると少し緊張が緩んだのか莉々宮もくすっと笑ってしまう。

「わ、笑い事じゃねえですわ!?わたしくにとっては

一大事ですの!」

「ふふ、ごめんごめん。こんな状況なのにメルディちゃんとハロデ君を見ていたらなんだか笑っちゃって」

なんだか小さい子供同士の掛け合いを見ているみたいに思えてくる。ちょっと失礼かもだけど…。

「でも僕達どっちも16歳なんですよ?成人年齢とはいかないかもしれませんけど…子供って言われるほどじゃあないですから」

するとメルディも慌てながらそれに同調する。

「そ、そうですわ!わたくしたちは16歳ですのよ?あなたよりも年上かもしれなくってよ?」

「そ、そうなの?16歳か…ボクと同じぐらい…ってあ、そうだった…」

莉々宮が急に肩を落としたので二人が不思議そうにこちらを見てくる。あんまり心配はかけたくないけど言わないわけにもいかないよね。

「じ、実はボク…ここに来る前のことは何も覚えてないんだよね…」

莉々宮から衝撃の告白をされたメルディはハトが豆鉄砲を豆鉄砲を食ったような顔をして固まっている。ハロデの方は心配そうに莉々宮の顔を覗き込んでくる。ちょっと待って?ハロデ君の反応おかしくない?なんか違う方で心配されてる気がするんだけど…。すると案の定メルディよりも先にハロデの方が口を開いた。

「あ、あの…莉々宮さんが流石にこの場でそんな冗談を言うとは考えにくいですし…先程は頭を大きく打って怪我をして記憶喪失になった様子もないので…未成年でお酒を飲み過ぎて記憶が飛んだんじゃ…」

莉々宮はそのハロデの想像に顔を赤くしながら慌てて両手をぶんぶんと振って一歩後退りしながら否定する。

「そ、そんなことないよ!確かに記憶がないから可能性がないとは言わないけど…さ、流石にやってないからね!」しかもその想像だとボクがここにいる理由ってその後寝ちゃってそのまま誘拐されたことにならない…?ボクのイメージとか尊厳とかが完璧に終わっちゃうよ…。するとメルディが莉々宮をフォローするように慌てて口を開いた。

「ハロデ!流石に莉々宮さんでもそれはな、ないですわよ!精々詐欺に引っかかってそれが両親にバレてぶたれて記憶が飛んだぐらいですわ…」

ま、間違えた…。全然フォローしてくれてないしむしろハロデ君よりメルディちゃんの方が酷いこと言ってるからね?莉々宮は半ば呆れながらも二人が思ったよりも図太そうで少し安心する。

「と、とにかく覚えてないけど悪さはしてないならね!?そんなことより牢屋から二人を出す方法を考えないと…」莉々宮が話を本題に戻すと二人も少し真面目な表情に戻るも結局困った表情を浮かべる。

「莉々宮さんがどうして外にいるかは分かりませんがわたくし達はここから出る手段がありませんわ…も、もちろんわたくし達もこの施設から出たいですわよ?お、置いていくとかダメですわよ…?」

「かばんは持ってますけどピッキングできそうなアイテムとか足枷を外せそうなアイテムとかは持ってないです…」

二人がそれぞれの状況を教えてくれるがとりあえず分かったのは二人は牢屋から出る手段は無くお手上げ状態ってことなので正直聞いても意味がなかった。

すると莉々宮はさきほど自分が牢屋から出る時に使った鍵を取り出してメルディの牢屋の扉に差し込んでみる。

「あ、開いた!?」

「開くんですの!?」

「え、開いたんですか…?」

鍵を差し込んだ莉々宮も驚きを隠せないがどうやら残りの二人は開いた口が塞がらずぽかんとしている。

「あ、あの...莉々宮さんその鍵はどこに落ちていたのでしょうか...?」

「え?この鍵は確かボクの牢屋の中に落ちてたんだけど...う、嘘じゃ無いよ!」

莉々宮の説明にメルディとハロデが疑惑の目を向けてくる。なんなら疑惑というよりも嘘としか思っていないような目を向けてくる。や、やめて...そんな目で見ないでよ...。だってこれ以上説明できないんだもん...。

「もしかして...莉々宮さん看守を誘惑したんじゃねえですの!?それ以外説明がつきませんわ!」

莉々宮はメルディの推測に顔を茹蛸(ゆでだこ)のように赤くして手をわたわたと振りながら慌てて否定する。

「ゆ、誘惑!?ボクそんな器用なこと出来ないし...あ、あとやらないから!メルディちゃんはボクをどういう目で見てるのかな...あと看守自体も見てないしいるかどうかも分からないんだからね!」

メルディの失礼な推測は置いておいて扉が開いたことは純粋に大きな成果だろう。これならボクのよく分からない力を使って二人を助けてあげられるかもしれないし...。嬉しそうな莉々宮の様子を見てハロデが怪訝そうに声をかけてくる。

「え、えっと...莉々宮さん扉が開いても僕達は足枷がついてるので...逃げたりはできないです...」

ハロデが悔しそうにそんな話をしてくるがそれについては大丈夫だ。まずはメルディちゃんの方から試してみようかな?

「えっとメルディちゃん右足出してくれる?」

するとメルディが何故か顔を赤くしながら一歩後退りしてこちらに抗議してくる。

「な、なにするつもりですの!?は、まさかわたくしにあんなことやこんなことを...」

「いやしないからね!?多分メルディちゃんは変な小説かなにかの影響受けすぎてるだけだからね?」

メルディは莉々宮のお願いに考え込んだ後しぶしぶといった様子で鉄格子にのろのろと近づいてこちらに足枷のついた右足を差し出してくる。

「しょ、しょうがないですわね。なるようになれですわ〜!」

だからメルディちゃん達を助けるためなんだけど...と莉々宮は苦笑しながらメルディの足につけられた足枷を右手で掴み左手で鉄格子を強く掴む。すると...

「な、なんですの!?鉄格子が莉々宮さんの体に入っていって...わたくしの足枷と合体しましたわ!?」

メルディはあまりの呆気なさと莉々宮の魔法の効果にあっけにとられているがそれと同時にハロデの方が口を開いた。

「す、すごいですね!合体魔法ですか?」

「合体魔法?それってすごいの?」

莉々宮はあまり聞き馴染みのない響きに思わず聞き返すがすごいですねって言っているということはなにか珍しい力なのだろうか。

「合体魔法があったら鍛冶屋になれますわ!ほぼ必ず職につけますわよ!」

か、鍛冶屋?え?鍛冶屋?心の中で思わず2回呟いてしまう。それってそんなにすごいことなの...?

「もちろんですわ!固有魔法の一種ですし、給料も普通の職に比べたら高いですし、みんなをサポートするとっても大事な職業ですのよ?」

う、うん...。ボクの思ってる鍛冶屋と全く変わらなかったね...。メルディちゃんがなんであんなに鍛冶屋を推してるのかよく分からないけど...い、いや良い職業だと思うよ?でもあんまり女の子がやってるイメージないしそもそもボクに合うかなぁ...。

「ま、まあ莉々宮さんに合うかは確かに分かりませんけど...立派な職業ですから良いことだと思いますよ...」

ハロデがそんなフォローをしてくれるが莉々宮としては複雑な気持ちなのは変わりない。

「あ、そういえばハロデ君の足枷をまだ取れてなかったね。ごめんごめん。えっと近くまで来てくれるかな?」

ハロデは少し迷いながらも、莉々宮の方に足を近づけて足枷のついた足を控えめに差し出してくる。

「よ、よろしくお願いします...」

ハロデ君ってお姉ちゃんのメルディちゃんと比べたらだいぶテンションに差があるよね...。いや、それが良いことなのか悪いことなのかは分からないけど...。でも最初の方は似てるとこが多い方が良いみたいだけど付き合いが長くなるなら違ってるところが多い方が良いって言うし良いことなのかな?莉々宮はメルディと同様にハロデの右足についた足枷も右手で軽く掴み左手で鉄格子を強く掴むと鉄格子が光となって莉々宮の体に入りそのまま足枷に光が流れヌンチャクへと形を変化させていく。

これで無事に二人を解放することができたが、莉々宮は顔をハロデの耳に近づけてふと気になったことを聞いてみた。

「ふぅ...ハロデ君のも外せたね。そういえば...メルディちゃんってなんで鍛冶屋の話の時にテンション上がってたの?」

するとハロデが莉々宮の耳に顔を近づけてひそひそと教えてくれる。

「そ、その...僕達のランカタ家って貴族の中では弱小貴族で僕は次男で姉さんは三女なんだけど...姉さんはそこまで庶民と暮らしは変わらないし、固有魔法は特に持ってないから...それを見てテンションが上がっちゃったんだと思います...気を悪くされたらごめんなさい...」

「そ、そんな気を悪くするなんてことはないよ。ボクの方こそ話しにくいこと聞いちゃってごめんね?」

莉々宮が両手を前に出して軽く振りながらハロデの懸念に対して杞憂だと伝えようとするがそんな様子を怪訝そうに見ていたメルディが声をかけてくる。

「よく聞こえませんでしたけど絶対良くないこと言ってますわ...」

二人とももう牢屋の鍵は開いて足枷は外れている状態なのでメルディもひそひそ話をしている時に遮ればいいのだが、そこは真面目なのか聞きに行こうとはしなかったが、結局ジト目で莉々宮達の方を見てくるので良かったのやら悪かったのやらと言ったところだ。

そんなこんなでメルディとハロデが仲間に加わった。

一人でこの施設から脱出するのは大変なのでかなりホッとしている。

「じゃあさっきダークエルフの子が登っていった階段に行ってみようか?」

「そうですね...他に行く場所も見当たりませんからおそらく出るためには上に行くしかないと思います」

ハロデが大きなリュックを持って階段の方に着いて来てくれる。メルディは格好のせいか少し歩きにくそうに、二人に着いてくるのでゆっくり歩くことにしよう。メルディちゃん...いいんだけど他に服なかったのかな?逃げるのにどう考えても向いていないが、誘拐されるタイミングを選べるわけでないのでまあしょうがないだろう。

「二人はどうしてこんな所に捕まってたの?」

「わたくし達は最近不審な火事があった森の調査に行っていたんですの...その近くの宿屋で寝ていたらいつの間にかこの建物に連れてこられたんですわ!?」

「森の近くにこの建物はあるので近づかないように気をつけてはいたんですが...どうしてこんなことになったんでしょうか...」

そういう事情だったんだ...。でもちょっと待ってよ?近づかないように気をつけてたってことは二人はここがなんの建物か知っているってこと?

「ねえ、二人はこの建物が何か知ってるの?」

するとメルディが明らかに視線を逸らしてあたふたしながらどう誤魔化そうか考えている。分かりやすくない?

「えっと...ここはゲヘナ・スパイアという名前の塔で…別名を悪夢の塔です」ハロデが小さな声で教えてくれるがするとメルディがさらにあたふたしながらハロデの方を睨んでいる。

「な、なんで言うんですの!危険な場所にいるって知って不安になったらどうするんですの?」

「やっぱりここから逃げたいなら莉々宮さんにも教えておかないといけないと思いましたから...この悪夢の塔はちょうど僕達が生まれたぐらいに完成した塔で当時はもっと高い塔だったんですけどおそらく地盤の沈下などが原因で地下に下の部分が埋まっているんだと思います。この塔に近づくと呪われるとか帰れなくなるとか腕を取られるとか小さい子供の亡霊が見えるとか変な噂がたくさんあって...少なくとも良い場所ではないと思います...」

そんな場所なんだ...。でも絶対にこの塔から出ないとだよね。メルディもため息を吐きながらこの塔にまつわる情報を教えてくれる。

「悪夢の塔は完成当初はただの立派な塔でしたわ。でもそれから数ヶ月後に何故か下部分が地下に埋まり完成から一年後ぐらいに急に黒く変色しましたの...絶対やべえ場所に違いありませんわ!」

「た、確かに不気味だね...。ボクたちも早くこの塔から出る方法を探そうよ!」

こころなしかみんなの階段を上がるスピードが少し早くなった気がする。15秒ぐらい階段を登っていると上が見えて来た。

「ここは...大広間?結構広いしあっちには大きな扉があるけど...」

階段を登って正面には大きな扉があり、全体的にはそうとう広々とした空間だ。あたりを見渡すと木製の木箱がたくさん置いてある。何が入ってるのだろうか?メルディがおそるおそる蓋を開けて中を覗いてみる。

「中には食べ物とか生活用品とかが入っていますわね。保存魔法がかけられているのでまだ食べられると思いますわ〜。この塔、今はもう正式に使っている人はおりませんし...少しもらって行きますわ!」

「そうだね。食べ物があるんだったら持って行った方がいいし...ハロデ君のバッグまだ入るかな?」

「は、はい。まだ入ります...入る分だけいれちゃいますね」ハロデのバッグの中に食料を詰め込んでいく。でもどうしてこの塔の中に食料とか生活用品が置いてあるんだろう?でもかなり大きな空間だし元々ここの階は地震とかが起きた時の避難所とかにする予定だったのかな?

この建物の建造理由はわからないが人が何十人も生活できるような量の物資が置いてあることから莉々宮はそう考えた。

「この正面の扉硬いですね...押してもびくともしません...」

「押してダメなら引いてみろですわ!」

メルディがそういって扉を引いてみようとするが開く様子はまったくない。どうやら向き的には押すのが正解のようだ。...微妙に気まずい空気が流れる。ど、どうしよう...。「じゃ、じゃあ今度は横にスライドするタイプかもしれないし...ボクが試しに...」

「いやそういうことじゃねえですわ!?」

メルディから割と強めのツッコミが飛んでくる。

「でもどうして開かないんでしょうか...押すタイプなのは間違い無いと思うんですけど...」

ハロデがそうやって頭を悩ませているのを見てハロデが先程話してくれた情報を思い出す。

「さっきボク達は下から階段を上がって来たよね?ハロデ君が解説してくれたけどこの塔は地下に一部が埋まってるみたいだしここはまだ地下なんじゃないかな?それで扉の先に土とか石があるから開かないみたいな...」

莉々宮の推測にメルディとハロデの二人は目を丸くする。もしかしてこのパーティってボクが頭脳枠なの...?

「失礼ですが莉々宮さんが頭脳枠は少しその...」

「さっきの天然発言を考えたらあまり頭脳枠には見えませんのよ」二人がそんなことを言ってくる。ちょ、ちょっと待って普通に酷くない?うん、あとなんで心読めたの?

二人との間に若干亀裂が入りつつも捜索を続ける。

「でも莉々宮さんの推測通りだと思います。僕達が森の調査をしていて遠くから見た際は塔の高さは昔の塔が描かれた絵よりかなり低く見えたので大部分が埋まっていると考えていいと思います。...なのでこの塔から出るには上の階を目指していくしかないと思います...」

ハロデがそんな推測を口にする。だけど説得力もかなり高いので一旦はその仮説に基づいて行動してみることにしよう。「この悪夢の塔は高さ770mあるので気長に登っていくしかないんじゃないでしょうか...」

「そ、そんなにあるんですの!?わたくし登れませんわ...と、というかハロデも早く言いなさい!?」

「あ、姉さんちなみに130階建てだよ?」

ハロデはメルディに叱られるが慣れているのか華麗にスルーして解説を付け足している。だが、それを聞いている方のメルディの顔はどんどん青ざめていくばかりだ。

いや、ボクも流石にその高さを登るのはきついと思うけどね...?

この大広間には魔法の灯りなどは灯っているが、木箱の物資以外にめぼしいものは見当たらない。滞在する拠点としてはちょうど良さそうだがそれ以上なにかあるわけではないようだ。ちょっと名残惜しいけど上の階に行ってみるしかないかな...。

「上の階に休憩できるスポットがあるとも限りませんし...ここに転移魔法陣を置きましょうか」

「え?て、転移魔法陣...?」

「な、なんですのそれ?わたくし聞いてませんわ!」

するとハロデがメルディの方を不思議そうに見ている。

「姉さん森の調査のために渡されたでしょ...覚えてないの?ま、まあいいけど...。あ、えっと莉々宮さんこれは二つセットで使うもので片方を戻りたい場所に設置してもう片方は持っていくんです。それで戻りたいなと思ったらその場所に設置すると一つ目の場所に転移することができるんです。あと一つ目から二つ目に転移し直すこともできますよ...」

えっと...一旦この階を2階だと仮定するけど、つまりは二つペアのうち片方を2階に置くいた状態で60階まで登っていったけど疲れちゃって2階に戻りたいなって思った時に60階にもう片方を置いたらすぐに戻れるってこと?それで2階で一旦過ごしてから体力が回復したら60階に転移して再スタートができるってことだよね?ハロデ君すごい便利なもの持ってるんだね。

ハロデがカバンから小さな灰色の魔法陣を取り出し地面に配置する。すると魔法陣が大きくなり緑色の光を放って輝きだした。

「こ、これで本当に転移できるんですの...?」

メルディが疑わしげにハロデを見ているが魔法陣からは魔法の光が放出されており、かなり強力な魔法が込められていることが感じ取れる。そんなにボクは魔法に詳しくないけど流石に偽物って感じはしないから信じてみようかな。

「じゃあ一旦情報を整理するね?今いる場所は地下でこの塔から出るためにはまず上に行かなきゃいけないんだよね?一旦ここを2階と呼ぶけど2階に転移魔法陣を置いてもう片方の魔法陣をチェックポイントみたいな感じに使って2階を拠点に探索を進めていくってことでいいかな?」

「ええ、異論はないですわ」

「は、はい...いいと思います。でも...一旦今日は疲れましたしもう寝ませんか?転移で帰ってきた後に布団の準備ができてないと少しテンションが下がりますから...」

ハロデの提案は莉々宮としても同じ気持ちで今日はもう一旦寝たいなという気持ちだったので目から鱗だった。

「それならわたくしが布団を敷きますわね。慣れてるから心配しなくてもいいですわ」

幸い布団は部屋の木箱の中に入っていたのでメルディはそこから布団を取り出し慣れた手つきで三人分の布団を敷いていく。家でもおそらくやっているのだろう。莉々宮よりも全然上手く布団を敷くことができている。

「ふふ、どうかしら?褒めてくれてもよろしくってよ?」メルディがドヤ顔でそんなことを言ってくる。

「メルディちゃんすごいや。あっという間に三人分の布団を用意しちゃうなんて...ありがとう!」莉々宮が素直に感謝を伝えるとメルディが顔を真っ赤にしながら「と、当然ですわ...」と顔を逸らす。どうやら褒められ慣れてないらしい。莉々宮、メルディ、ハロデの順に三人が川の字に並べられた布団に入りゆっくり目を閉じる。

莉々宮はこころなしか少し安心したように小さな寝息を立て始めた。



悪夢の中もみんなで渡れば怖くない?









1万字以上あったみたいですが最後まで読んだいただきありがとうございました。スクロールして、みたら一万字あっても案外短いんじゃないかな?という感じもしましたね。前回はキャラは莉々宮しかでませんでしたが今回はハロデとメルディの二人出てきました。まあ後ダークエルフの子が出てくるのが予告されたぐらいでしょうか?でも現状登場キャラとして確実に決まってたのがこれに夢の中で出てきた二人とかこのぐらいなのでこっからどんどん内容を考えてキャラを追加していかないといけないんですよね〜。塔の上に向かう理由が塔が埋まってて出られないから上から出ようってことで自分で考えましたけどすごい物理的だな〜と感じましたね。今回はほぼ完璧に平和回、まあ日常回?そんな感じですね。書き方が上手い人は物語を進めながら日常的な話をしていく感じなので私も上手く織り交ぜれるようにしたいですね。

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