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明晰夢(めいせきむ)

タイトルは今回は明晰夢ですがフリガナは一応付けましたがみなさん読めましたか?小説家になろうを読んでる人ってまあ子供は当然少ないと思うのでどれぐらいフリガナがいるのか分かんないんですよね〜。みなさん結構やっぱり読めるんじゃないかと思うんですよね。まあ初見じゃ難しそうな漢字には一応ふっていくかな?って感じですね。夢の中での莉々宮の心の声には()を付けてます。

ある日の幸せな夢のお話

群青色の髪を持つ女性が庭で花の手入れをしている。おしゃれなドレスのような服を着ているが靴はスニーカーのようなものを履いている。

(うん...なんで?)莉々宮は心の中でツッコミを入れるがここであることに気がつく。というかこれは...夢だよね...。自分の体が動く気配はないが意識だけはあるようなそんな感覚である。すると真紅の髪を持つ男性がやってきて水やりや、木の手入れなどをしている。どうやら力仕事などはこの男性の方がやるらしい。(この二人は夫婦なのかな?結婚指輪などはつけていないが直感的にそんな感じがするね。自分の好きなことを一緒に手伝ってくれて大変なことまで引き受けてくれるとなると長続きしそうだよね。もちろん大変なことだけやらせて都合よく使うなんて一方的な関係だと良くないと思うけど...)だが二人の楽しそうな様子を見ていたらその心配は杞憂(きゆう)というものだろう。そんな二人の元にたくさんの兵士がやってくる。先程まで楽しそうにしていた女性と男性は一気に緊張したのか、少しピリピリした感じがする。先頭の兵士が真紅髪の男性に話しかけ、男性の方もそれに応じる。女性の方はその様子を心配そうに眺めているようだ。すると話が終わったのか兵士が男性を囲んで連れて行こうとする。女性の方が慌てた様子で男性の方に走っていくが、兵士達に阻まれ近くには行けない。男性が女性の方に優しい声音で何かを話している。

「...中....を...し......」声はもやがかかったように上手く聞き取れない。(ねぇ、待ってよ...絶対連れて行っちゃだめだから...)どうして連れて行かれているのかは分からないがさっきの二人の様子を見ていたらそう思えた。女性の方も涙目になりながら、掠れた声でなにか話しかけているが上手く聞き取れない。

「あなたが.........?こ..を..って...お.....を ...あげたいよ...」

「...すまない」

そういって男性は兵士達と一緒に背後にそびえ立つ天まで届きそうな塔の方に歩いていった。女性はその琥珀色の瞳を涙で潤ませながら彼らの姿が見えなくなっても永遠に思えるほど長い時間眺めていた。




「はぁ...はぁ...夢...だったよね...」

さっきの夢はなんだったんだろう?とっても辛くて悲しい...そんな感じがしたよ...。はっとして莉々宮の上半身が布団から勢いよく飛び起きたが、その時になにかにぶつかっていたようだ。というか目の前にメルディが倒れており目をぐるぐると回している。

「ちょ、ちょっと!?いきなりなにするんですの!?莉々宮さんがうなされてましたので少し様子を見ようとしただけですのに...」

どうやら心配してくれていたメルディにぶつかってしまったらしい。

「あはは...ご、ごめんね?ちょっと変な夢を見ちゃって...」莉々宮は苦笑いを浮かべながらあたりの様子を見回すがメルディとハロデはどちらも起きて身支度をしている途中のようだ。

「莉々宮さんだ、大丈夫ですか...?悪夢を見るのでしたら就寝前のアルコールは控えた方が...」

「いやそもそも飲んでないからね?」ハロデの頭に軽くチョップを喰らわしつつも二人の気遣いは正直嬉しい。

莉々宮は布団から出て体を目覚めさせるために一旦、国民保健体操をする。この塔のような危険な場所に行くときは大体この体操をして体を慣らしておかなければならない。メルディちゃんとハロデ君ってどのぐらい動けるんだろう...?

「ねぇ、ねぇメルディちゃんとハロデ君って魔獣とかが出てきても対処できるかな...?」

ふと、そんな話を振ってみるとメルディの顔がみるみるうちに青ざめていくのが分かる。なにか不味かったかな...?

「ま、魔獣!?この塔、魔獣が出るんですの!?莉々宮さん冗談ですわよね...?」

「ほ、本当なんだけど...ボクがメルディちゃん達に会う前に怪我してたでしょ?あれは魔獣に襲われちゃって...」メルディの顔からさらに血の気が引いていく。

その背中を優しくさすりながらハロデも莉々宮の質問に答えてくれる。

「えっと...姉さんと僕は魔獣と戦ったりはできないです...でもここから動かないとどうにもなりませんし転移の魔法陣も持っていかないといけませんから...僕も上には一緒に行きます」

ハロデ君は一緒に来てくれるんだね。メルディちゃんはちょっと厳しいかな...?ここで休んでてもらった方がいいかも...。

「じゃあメルディちゃんはここで待ってた方が...」

「いやここに置いて行こうとするなですわ!?魔獣がいるかもしれないのに一人でいる方が何倍もやべえですわよ!?」というわけでメルディとハロデの二人とも一緒に来ることになった。正直不安は拭えないが、二人とも逃げるのには自信があるみたいなので大丈夫だろう。

うん、戦って?そんな不満も言いたくはなるが普通の人は魔獣と戦ったりはできないのでそれはしょうがない。

莉々宮はヌンチャクを持って、ハロデはリュクを背負い、メルディは何故か落ちていた(ほうき)を持って階段を登っていく。まず3階に着くとそこには鉄格子が嵌め込まれておりその中に泥人形のようなものが置いてある。この部屋の中にはそれ以外は見当たらず鉄格子の扉はこちら側からのみ開けることができるようだ。塔というものは基本的に上にいくほど一つの階が狭くなる。その分高い塔を作ろうとすると下の階は大きくなる。そのためこの広い空間の中には相当な数の泥人形が配置されておりこの部屋は円形なのだが中心に莉々宮達がいてそこを鉄格子が囲っているような形になっている。どちらかというとサファリパークの中で檻に入っているようなそんな感覚だ。

「たくさんの泥人形が置いてあるけどあれはなんだろう...?」

「えっと...あれはゴーレムです...魔族や魔獣に戦闘力で劣る人間が戦いで勝利するために創り出した魔人形で、最も使われているものですね...代わりに戦ったり荷物を運んだりなど用途は様々ですね」

ハロデがあまり世の中のことに詳しくない莉々宮に向けてそんな解説をしてくれる。

「ゴーレムなら連れていったらいいんじゃないですの?基本的にゴーレムは人間に味方するように作られてるみたいですし...」

「そうだね。外側から扉を開けれるようにここで待ってて。ボクが調べてくるよ」

莉々宮は鉄格子の扉を開けて壁にへたり込んでいるゴーレム達の方に近づいていく。ゴーレムをとんとん、と叩いてみるが動く気配はない。あれ?このゴーレム壊れてるのかな?もう少しよく調べてみないと...

「ひっ...」ゴーレムを調べていた莉々宮から軽い悲鳴が聞こえてくる。

「どうしたんですの?」

それを見て怪訝そうにメルディが声をかけてくる。

「ゴーレムのお腹に矢が突き刺さってるみたい...それにこの個体だけじゃなくてほとんどのゴーレムに...」

「そ、そんなことがあるんですか...僕達に使われないように壊しておいたってことなんでしょうか...」

でも全てのゴーレムに矢が刺さっているわけではない。数体だが矢の刺さっていないゴーレムもいるようで、そのゴーレムを軽く叩いてみる。

「わ、動いた!?」矢が刺さっていないゴーレムは動くようで立ち上がって着いてきてくれる。

「ゴーレムがいると、かなり便利ですわ。連れていかないという選択肢はないですわ!」

メルディの提案でゴーレムを連れて行くことになった。数的には4体だが、2mぐらいのサイズがあるので非常に頼もしい。

「ゴーレムって矢が一本刺さったぐらいで止まっちゃうものなのかな?」

「えっと...ゴーレムは基本的に中心部にコアがあって先程の矢は太さ的には絵筆ぐらいで長さ的には菜箸ぐらいの小型の矢でしたがコアを狙えば停止させるには充分だと思います...」数的には100体以上のゴーレムがあの場所に置いてあったがそのほぼ全てが中心部に矢を撃たれて機能停止していた。でも誰がわざわざそんなことをしたのかな?それに、ボクにはよく分からないけどゴーレム100体って多いのかな?

「ねぇ、メルディちゃん...ゴーレム100体ってどのぐらいの数なの?」

「え、わ、わたくしに聞くんですの!?そ、そりゃあ100体もいたら多いんじゃねえんですの...?」メルディがうんうんと頭を悩ませながら答えてくれるのでその気持ちは非常にありがたいがどうやら知らないようだ。

「ゴーレム100体は非常に多いですよ。大体小国が保有しているゴーレムの数が300体程度なので...ただ、ここにはその数があっても不思議ではないですけど...」

莉々宮の頭には「?」しか浮かんでこないがハロデが開設を続けてくれる。ついでにメルディの頭にも「?」しか浮かんでいない。

「この塔があった街の隣町にはゴーレム工場があるんです。そこからこの街に向けてゴーレムが大量に配備されたんでしょう」

そういう事情があったんだ...。ならゴーレムが多いのも納得なのかな?メルディちゃんがうんうんと頷いてるし、ボクもとりあえず納得しとこうかな...。

「ただ、そのゴーレム工場は現在活動を停止していますけど...。魔王が倒されてゴーレムの需要が減ったからなんだと思いますけど...だとしても建築や護衛などにも使えますし生産しないってのも変な話だと思いますけどね...」

今はその工場は使われてないんだね。それが魔王が倒されたからで...え?そこで莉々宮は衝撃の事実に気づく。

「え...ちょ、ちょっと待って!?ま、魔王って倒されたの...!?」莉々宮は記憶はないといっても基本的な知識や情勢などは覚えているため魔族の王である魔王が倒されたというのは衝撃の話であった。ただ、莉々宮の知識的には地理情報や歴史情報やどんな国があるかなどはほとんど分からないので情勢的なことなどは魔族がいて魔王がいて人間と魔族が争ってて〜ぐらいまでしか分かってはいない。だが莉々宮の発言を聞いたメルディとハロデが逆に口を開けてぽかんとしている。あ、あれ...?ボク変なこと言ったかな...?もしかして魔王が倒されたのって今時常識だったりする...?というか二人の視線が痛い...。な、なんか冷たいし...。

「あ、あの...莉々宮さん魔王が倒されたのは10年以上前の話ですわよ?もしかして10年間ぐらいひきこもってたんじゃねえですわ?」

「え、えっと...流石に魔王が倒されたことを知らないっていう人は初めて聞きましたね...。本当にちゃんと暮らしてたんでしょうか...。」

ボクってもしかして世情に(うと)すぎるの!?莉々宮は手をパタパタと振って慌てながらなんとか汚名返上しようとするが正直もう無理そうな気もしなくもない。

「い、いやボクだってある程度のことは知ってるよ?ドデレード川に巨大なダムができたり、ローゼンブルクって街が龍とか魔獣とかの大群に襲われて大変だったり、カイザーバールの森で妖精の大移動があったり...」莉々宮は知っている時事ニュースをどんどん上げていくがメルディとハロデの莉々宮を見る目はますます怪訝そうな目になっていく。

「そ、それ全部10年以上前の話ですわ...」

ほ、本当に...?莉々宮の引きこもり疑惑が90%を超えてしまったが一同はなんとかゴーレムを引き連れて階段を登っていく。ヌンチャクは二つあったので一つを莉々宮が持ってもう一つをゴーレムに持ってもらう感じだ。4階から8階に関してだが、ここにはテントなどが置いてあり、おそらくだが居住スペースになっていた。

「2階にもたくさんものが置いてありましたけど...ここにもテントとかが置いてあるってことはここで大勢が暮らす予定だったんでしょうか...?この塔が建てられた理由は知りませんけど...これを見るに避難所としての用途もありそうですね」

ハロデがそんな解説をしてくれる。そういえばさっきハロデ君が言ってたんだけどこの塔は130階建てだけど厳密にはボク達が最初捕まってたところは地下だからあそこは一階ではないみたい。今から一階って呼んでたところを地下って呼び直したり2階って呼んでたところを1階って呼ぶのも変だし131階建て換算で呼ぶけど厳密には130階建てだからね。

そんなこんなで9階に着くと...

「あれ?なにもないですわね?これだけ高い塔だと空き部屋もあるものんですの?」

「でも130階建てなら空き部屋ぐらいありそうだよね。別に全部探索しないといけないって決まりはないし空き部屋は飛ばしていけばいいかな?」

「そうですね...この部屋は飛ばして上の階に...え?」

部屋に入ったあと階段に戻ろうとしてハロデが振り向くとそこには信じられない光景があった。部位ごとに切り分けられた人間の死体の山ができていた。その光景を見て莉々宮とメルディも顔もみるみるうちに青ざめていく。

「な、なんですの...あれ...」

弱小貴族とはいえ、死とは無縁の生活を送ってきたメルディにはあまりに刺激が強かったようだ。死体の山から視線を逸らして(うずくま)っている。莉々宮はかなりメンタルが強い方だが、それでも顔から血の気が引いているのが分かる

「あ、あんなことって...」

「い、一旦8階に戻りましょうか...」

莉々宮とハロデはメルディの背中をさすりながら8階に降りていく。その様子をゴーレムの無機質な瞳が見つめていた。

8階に降りると9階の時ときとは違った空気になり少し気分が落ち着く。死臭が強くないのが唯一の救いだろうか。死んですぐってわけじゃなさそうだっだしもう少し強くてもおかしくないと思うんだけど...でもだいぶマシかも。

「ふ、ふぅ...少し落ち着きましたわ...」

メルディの顔色は良いとは言えないが先程よりかは幾分かマシになっている。まだ2階に戻るには時間的に早いような気もするので少し悩んだが話し合いの結果9階を飛ばして10階に行くことになった。

「そ、そうですね...僕もあれには少し応えましたから...」ハロデは顔色が大きく変わりこそしないがやはり何も感じないということは無かったらしい。

「うん。じゃあ10階に行こうか。1階登るだけでも結構段数が多くて大変だけど...」

ゴーレムは4体とも魔法で作られた無機物であるため息切れなどはしていない。メルディは疲れに相まって先程のショッキングな映像が頭に残っているのか足元が少しふらついており、少し心配になる。ハロデはカバンを背負って歩いているため少し疲れてはいるが元気そうだ。

「莉々宮さんなんでそんなに元気なんですの...?」

「えぇ!?いや、さっきのあれはボクにも結構きつかったんだよ?」

「えっとそういうことじゃなくて体力的な話じゃないでしょうか...」

あ、そういうこと...?確かに莉々宮はまだ疲れた感じはしない。体力がかなりある方なのだろう。お母さんとお父さんが特段、丈夫な体に産んでくれたのかな?

「きっと小さい頃にたくさん運動してたとかで体力が付いたんじゃないかな?」

するとメルディから疑いの眼差しを向けられる。

「莉々宮さんは引きこもりだったのに体力がつくなんてことありえるんですの...?」

「まだボクが引きこもりだって確定したわけじゃないからね!?」

まったく...ボクに失礼だからね?いや引きこもりが悪いってわけじゃあないけど...。あれ、そういえば外に出てた記憶なんてないし、本当にそうだったんじゃ...。不毛なことを考えてもしょうがないので思考を切り替える。でもメルディちゃんさっきより元気になってるみたいだね。よかったぁ...。そんな話をしていると10階にたどり着く。ここは最初莉々宮が魔獣と戦ったところと同じように円形になっているが、周りに溝はなく代わりになにか生物が混ざり合ったような不気味な石像がたくさん配置されていた。

「たくさんありますけどこの石像達どれも気味が悪いですね...」

「まあ悪趣味と言えば悪趣味かな?ぼくもあんまり好きじゃないんだけどね」

「え、誰?」

正面から人型の影がゆっくりと歩いてくる。体格は小柄で褐色の肌に長い黄色の髪、その目には丸く綺麗なオレンジ色の瞳が嵌め込まれて、特徴的な長く尖った耳を持っている。その姿からはなんとなく愛嬌が感じられる。だが片手には小さな木製の弓を持っており後ろには絵札ぐらいの太さで菜箸ぐらいの長さの小さな矢を何本も背負っている。

「こ、こいつですわ!わたくし達を誘拐したとか言ってやがったダークエルフですの」

この子が...メルディちゃん達を誘拐したの?てことはボクもこの子に誘拐されたのかな?あんまり暴力沙汰にはしたくないし、大人しく話を聞いてくれたら嬉しいんだけど...。

「ふふ、ぼくがそこの二人を誘拐したのは間違いないよ。だけど、紫色の髪の君がなんでここにいるのかはぼくは知らないかな。ぼくじゃないとしたらシャロが誘拐したのかな?」

そう言ってダークエルフの子は莉々宮達に向かって弓を構える。

「シャロって子が誰かは分からないけど...ボクは君に誘拐されたわけじゃないんだね?ならその子に会ってみないと分からないけど...」

「ふ〜ん?だけどシャロに会わせるつもりはないかな。君は暴力沙汰にしたくないみたいだけど〜地下に君がいたときに魔獣を放ったのはぼくだからね〜それでも許せるのかな〜?」

相手の発言にメルディとハロデが顔を少し強張らせる。だが莉々宮はそれだけで簡単に話を合いを諦めようという気になることはできなかった。

「ねぇ、そんな悲しいこと言ったらダメだと思うんだ。例えボクのことを殺そうとしてても、なにか事情があるんだよね?だからそんな簡単に諦めようとしないで...」

さらに言葉を続けようとした莉々宮だったが、相手が怒っているのか驚いているのかは分からないが、少しあっけに取られているので莉々宮の方も思わず次に何を話すべきか迷う。

「...そんな甘い考えだと後悔するよ?」

先程よりも遥かに感情の籠った言葉だった。まるで自分に言い聞かせるように、まるで、何かを嘆くように。

そして莉々宮の訴えも虚しく相手が弓を引きメルディに向かって一直線に矢が飛んでいく。

「姉さん!?」

ハロデが急いでメルディの方を振り返るが矢の方が早く間に合わない。矢はそのままメルディの胸の中心に命中する...と思われたがその間に大きな影が割って入る。腕を閉じて守りを固めながらゴーレムがメルディの前に立ち矢を防ぐ。

「ほ、本当に危ねえですわ...ど、どういうつもりですの!?」

メルディがゴーレムの影に隠れながら相手にそんな問いを投げかける。今のメルディが持っているものといえばほうきぐらいしかないので対抗手段はないのでそれぐらいしかできない。すると相手のダークエルフが苛立ちながらも弓をメルディから逸らして今度は別のゴーレムに向ける。

「ちぇ、ゴーレムってのは厄介だよね。人間を守るようにプログラミングされててさ。道徳心とかないわけ?ぼく達ダークエルフのことは普通に襲うのにね」

ダークエルフの少女の方にヌンチャクを持ったゴーレムが近づいていき攻撃を仕掛けていく。

「今のはどっちかというと君がメルディちゃんを襲ったからだと思うけど...って危ないよ!?」

莉々宮の方にも矢が飛んで来たのでヌンチャクで間一髪弾き返す。だがその間にヌンチャクを持ったゴーレムの中心部に相手の矢が命中し、ゴーレムが動かなくなる。

「ゴーレムってのはコアを狙ってあげれば一発で動かなくなる。もちろんコアをしっかり守ってるゴーレムを狙うのは大変だけどこいつは量産型だからそんなしっかりした装甲なんてないでしょ?」

「と、とんでもないですわね...莉々宮さん大丈夫ですの?」ゴーレムの影に隠れたメルディがそんなことを聞いてくる。莉々宮は先程から何発か追加で矢を撃たれているが今のところ上手く避けたり弾き飛ばしたりができているため問題はなさそうだ。

「大丈夫だよ、メルディちゃん。あんまり怪我はさせたくないけど...えい!」

ダークエルフの少女を目掛けて思いっきりヌンチャクを振ると相手の持っている弓にヒットし、弓が勢いよく弾き飛ばされる。よし...このまま追い込めば...。

「...弓を飛ばされちゃったのは少し不味いな。だけどちょっと気が変わったしこうしようか。...ルハ・ライカ」

ダークエルフの少女が両手を上げてなにか魔法を詠唱している。するとその付近に先程の部位ごとに切り分けられた死体が集まってくる。さらにその中心には莉々宮の戦いの後で穴に落下していった魔獣の死体もあった。

「な、なんでしょうかあれ...死体が集まって...」

そしてあたりが光に包まれ巨大ななにかがその場に現れる。狼の頭を持ち人間の腕や体などが混ざり合ったようなグロテスクな見た目でなにかとしか形容することができない。そんな存在が出来上がっていた。

「ひぇ...こんな化け物がいるの...?いや、作り出されたってこと...?」

「流石にこれは失敗かな?まあ成功した試しなんてないけどさ」

そういってダークエルフの少女は莉々宮達を一瞥(いちべつ)した後、足早に上の階へと消えていく。メルディは目の前で起きている光景から目を背けてゴーレムの後ろに完璧に隠れている。

「えっとそっちのゴーレムにメルディちゃんを下の階に連れていってもらうようお願いしてみよっか」

ハロデがハンドサインかなにかでゴーレムに指示を送るとゴーレムがメルディをお姫様抱っこしながら下の階へと運んでいく。メルディちゃんを避難させたら少しは心配が減るかな...。でもこれを止めないとハロデ君もメルディちゃんもやられちゃうもんね。莉々宮は覚悟を決めてヌンチャクを構えなおし、化け物の近くに駆け出していく。

「流石に莉々宮さんだけに任せるわけにはいかないですから...」

ハロデはいつ取り出したのか分からないがカバンから取り出した小型の杖を使い雷の魔法で援護射撃してくれる。ハロデ君の魔法の感じ的にダメージは効いてるみたい。それなら...。莉々宮はヌンチャクを化け物の胴体部分に思いっきり打ち込む。そこは人間の体がいくつも連結したようになっていたがヌンチャクが当たっても離れたりはせず、連結したままだが傷はついたようだ。ただ、あまりダメージが入ったようには見えない。これじゃダメだ...。狙うなら多分頭の魔獣の部分を狙わないと...。すると化け物が連結した手を尻尾のように使いそれを振り回して攻撃してくる。莉々宮は慌ててそれをジャンプで避けながら化け物の顔面になっている魔獣の顔に向けて先程ダークエルフの少女が使っていた矢を思いっきり投げつけてみる。だが、矢がその顔に届くことはない。何故なら体を逸らし顔に矢が当たらないように避けたからだ。

「避けた!となると弱点は頭ってことだよね?」

「その認識で間違いないと思います...先程から魔法も頭に当たらないようにあの化け物は気を遣っているように見えますから...いえ、気を遣っているというよりは本能的に頭に攻撃が当たるのを避けてるってところですね」

化け物の動きからはそこまでの知性は感じられない。実は知能が高くてブラフという可能性もあったがどうやらそれはなさそうだ。なら、狙うとこは一つだよね!ハロデがゴーレムにハンドサインを出し残っていた2体のゴーレムのうち一体が化け物の下半身にしがみつき、もう一体は化け物の上半身にしがみつく。化け物はゴーレムを引き剥がそうと暴れるが、ゴーレムも強くしがみついているためそう簡単には離れない。長く持ち堪えることはできなくてもこれなら必要な時間は耐えられそうに思えた。莉々宮が地面を強く蹴りゴーレムの肩の上に飛び乗る。それに気づいた化け物は体を揺らして莉々宮達を振り落とそうとし...。

「わっ!このままじゃ、落ちちゃう...」

莉々宮は必死にゴーレムを掴み化け物から振り落とされないようにするが化け物も莉々宮達に意識を向け、振り落とそうとしてくる。

「落とされたら困りますからね...」

ハロデが雷魔法を化け物の顔の付近で発動させ、注意を一瞬そちらにずらす。

「ハロデ君ありがと!よいしょ!」

莉々宮はその隙にゴーレムの肩に強い力を込めてもう一体のゴーレムの所まで飛び上がる。化け物の下半身にしがみついていたゴーレムはその衝撃で地面に落ちてしまったが、役目は果たせたようだ。そして2体目のゴーレムの上に乗った後も同じく足に力を込めて空中に飛び上がる。そのゴーレムも地面に落ちるがそれはもはや目に入らない。莉々宮の目の前には化け物の顔となった魔獣の顔があり、そこに向けて渾身の力でヌンチャクを振り下ろす。きっとそれがこの魔獣にとっても救いだと思うから。こんなに醜い生物になるなんて誰も望んでいないのだから。

「ボクに言う資格はないかもだけど...せめて安らかに眠ってね」

それが今の莉々宮にできる魔獣に対する最大限の弔いの言葉だった。それに化け物の元となった遺体の人達に対しても。莉々宮の振り下ろしたヌンチャクは化け物の顔となった魔獣の顔に直撃し、化け物はその体をどんどんと小さくしていく。まるで風船から空気が抜けるように、まるで氷が溶けるように。そして元の魔法がかかっていない遺体と魔獣の死体は灰が風に揺られて飛んでいくようにたんぽぽの綿毛が飛んでいくように、(ちり)となって消えていった。

その後、高所から落ちてくる莉々宮をハロデが慌てて下に入りキャッチする。上から落ちてくる人をキャッチするため仕方ないのだが必然的にお姫様抱っこみたいになる。

「莉々宮さん、だ、大丈夫ですか...?」

「うん。大丈夫だよ。ありがとうハロデ君。でも流石にちょっと疲れちゃったかな...」

莉々宮はハロデに向けて軽く微笑んで見せるがその頬はほんのり赤らんでいる。

「ならこのまま運んで行きますね」

「え、こ、このまま?ちょっと恥ずかしいけど...な、ならお願いしようかな...」

ハロデはゴーレムに指示を出して10階に転移魔法陣を設置する。莉々宮はそのとき疲れて目を閉じていたため気づかないが普通にそれで2階まで降りればよかったんじゃないだろうか?その考えは抜けていたのかハロデは割と大変そうにしながら2階まで2体のゴーレムを引き連れてゆっくり降りていくのだった。




悪夢に出てくる化け物も夢は見るのだろうか?



文章中に国民保健体操が出てきますがこれは普通にラジオ体操のことですね。元々ラジオ体操は国民保健体操って名前だったらしいのでこっちの世界観ではラジオはないのでそれに合わせて国民保健体操にしています。今回はまあ少しグロテスクな表現がありましたが、私もそんなに得意ではないので、詳しく生々しくはそんなに書いてはないかなと思います。この作品一応つけとこうぐらいの気持ちでR15着けてるので正直いらないかなと思ってたんですけどワンチャン普通に必要かもしれませんね。眠れぬ悪夢の塔自体は今年の9月までに完結させたいなって気持ちで一応書いてるので、そんなに長編にはならないと思います。他にも結構色々書いてみたい小説もありますからね。でもやっぱりこういう異世界ファンタジー的なのが一番書いてみたいかなって感じなのでまずは一旦試しで割と短めなこの作品を書いてみようかなって思ったんですよね。まあ短めっていっても小説1、2冊分ぐらいの文量になると思いますけど。他にも文学とか、ローファンタジーとかも書いてみたいですね。今回の出てきた化け物の姿に関しては正直頭が魔獣の頭なので狼で、変な形をしててデカいってぐらいの認識でいいと思いますよ。

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