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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第3章】フォレスト・レンズ家編

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156/264

【第156話】秋撃

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理矢理すぎだろ」など思うかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

アクロ・アイト

オリビエ・ペル

メアリー・フォレスト・レンズ

ライカ


ヨイ

ゼレン・フォレスト・レンズ

リメア・フォレスト・レンズ

 この半年で変わったことがある。

 やたらと政府の騎士団を見かけることだ。なんらかの調査なのか偵察なのか、腰に剣を携え甲冑を着た人達がよく彷徨(うろ)つくようになった。

 だからと言ってなにかあるわけでもなく、このスラム街はいつも通りの貧相な生活を営んでいた。

 そして今日も。

「はっ! はっ! はっー!!」

 この無意味そうな掛け声と共に剣を振るのは我が家族ゼレン・フォレスト・レンズである。純白の髪にサファイヤのような薄浅葱色(うすあさぎいろ)の瞳がとても美しい。

「……」

 それを無言で防ぐのは、元この世界そのものであった神、ヨイである。ヨイは人間の心を手に入れるためこの世界へ舞い降りた。

「お前も随分上手くなってきたな!」

 ゼレンは攻撃を止めずに、嬉しそうに微笑を浮かべている。ヨイは真顔でコクと頷いて同意する。

 この半年毎日ゼレンの稽古に付き合い続け、剣の腕はずば抜けて上達していた。

 そのとき、ゼレンが脚をフッとヨイの内股にかけ、転ばせる。ヨイは体を回転させ脚を外す。その間にクルッと剣を持ちかえてゼレンの首を狙う。

 カウンターを狙う。構図的にゼレンは回避不可。しかし、ゼレンはニヤッと嫌らしく笑った後、視界が飛んだ。

 一瞬の暗転の後、見えたのは蒼空(あおそら)

「……」

 ゼレンはヨイの顎を蹴り上げた。ゼレンはまるで軟体動物のように身体を捻らせて剣を避け、転びながらヨイを蹴った。

 後先(あとさき)考えない攻撃、故に予測しにくい。この状況、ゼレンは足の下で転んでいる。ヨイの圧倒的有利。

 顎の痛みに耐えつつすぐに下を向き、ゼレンに向かって剣を突き立てる。

「……」

 勝てる。確信したヨイは剣を振り下ろす。流石に斬るのは御法度なのでゼレンの顔面の前で寸止めしようとする。しかしゼレンは相変わらず笑顔のまま、ヨイと視線を合わせる。

「強くなったな、本当に。――けど!」

 そう不敵に笑ったゼレンは、手をヨイの股の下を潜らせてヨイの背中の服の襟を掴む。ヨイはぐいと喉がつっかえてバランスを崩した。

「おらっ!」

 そのまま服を引っ張った反動で身体を跳ね起こさせ、かつ左手でヨイの足首を掴み引っ張る。

「……」

 どうしようもないヨイは、そのまま力任せに転ばされた。転んだヨイはすぐに立とうとするが、すでに目の前に剣がヒュンと向けられていた。

 刃先からゼレンにピントを合わせると、ゼレンはにっこり笑っていた。そして剣を下ろすと、手を差し出してくる。

「お疲れ。よっこいしょっと。さて、そろそろ戻るか、昼飯食べたいしな」

 ゼレンは手を掴んだヨイを起こした後、腹を摩りながら提案する。ヨイは頷き、剣を鞘に戻した。もう昼頃、ヨイも空腹感が出てきていた。

「にしてもやっぱ剣と鞘はセットだよな、盗賊から奪ってよかったな。ほらこう……キン……、て感じでかっこよくね?」

 なんて言いながら侍のように静かに納刀(のうとう)した。冗談めかしいが様になっている。ヨイはコクと頷くと、ゼレンは嬉しそうにはにかんだ。

「ヨイ、すげぇ明るくなったな、出会った時は全然だったのに……最近はよく反応するようになった。これなら記憶も戻るかもな」

 確かに、この半年でニンゲンとしての生活には適応できた。空腹感や疲労感から食欲や睡眠欲、発汗発熱体温呼吸身体の変化は諸々(もろもろ)再現はできるようになった。あとは喜怒哀楽、同情を慈悲などが再現できれば、やがて、この精神は『心』になる。

 コクっと頷き返すと、ゼレンはフッと微笑み横を通り過ぎて行った。いつだって、ゼレンは前を先導する。

 先を歩いて行ったゼレンの背中を見つめた後、空を眺める。穏やかな時間と共に、絵の具のような白い雲が流れている。

 今日は午後から雨か……。

 神の力を封印したとしても分かるものは分かる。生命の輪廻は止まないし、時の流れには逆らえない。(さち)があれば(きょう)も同じくある。

 傲慢なことに、ニンゲンは誰しもが幸だけが欲しいと考えている。あり得ないと、理解しておきながら。

「……」

「おーい! どしたヨイ!」

 ゼレンはついてこなったかヨイに遠くから手を振り叫んだ。ヨイはハッと我に返り、小走りでゼレンの元に行く。

「どうした空なんて眺めて……、そういうやつか? あー分かるぞ、黄昏るよなぁこんないい天気だと。俺もよく空を眺めてたら一時間経ってたなんてことザラにあるもんだ……」

 勝手に解釈したゼレンは、腕を組んでうんうん頷いている。ヨイはその後ろを黙って歩く。

 ゼレンの努力は(みの)らない。全て無駄に終わる。そう分かっておきながら、ヨイは黙って、後ろをついていくのだ。


――――――――――――――――――――


 変わったことはもう一つある。リメアの当たりが優しくなった。優しくなったと言ってもまだだいぶツンだが、当初と比べればマシになった。

 と、街を歩いているとある家から金髪の女性が窓から顔を出して話しかけてきた。

「あ、ゼレン君〜、この前ありがとね〜♡良かったらまた一緒にやって欲しいわ♡」

「お。いつでもいいからまたやりましょ〜」

 笑顔で手を振られたゼレンは、同じように笑いながら手を振りかえす。すると女性は後ろにいたヨイに気づき、「ヨイ君もね〜」と手を振る。

「……」

 決して誤解しないよう補足しておくが、ただの草むしりである。

 ヨイがコクっと頷くと、ゼレンは「じゃまた今度」と家路を歩いていく。その後ろをヨイはついていく。

「えぇ、またね〜。あ、リメアちゃんにもよろしくね〜」

「はーい」

 ヨイは給料を貰う仕事とは別に、奉仕活動もしている。昔言っていた『助け合い』と言うやつだろう。ゼレンが助けられたことは見たことない。

「いや〜、メシャルさんと話すとなんか卒業した気になるからいいよな〜、俺も今年で十五……そろそろ経験するか……『純愛』ってやつを……」

 なんかキラッと格好つけて言っている。

 愛、それは自分に備わっていない物だ。そもそも定義が曖昧すぎる。おそらく性欲と同類のものだとは思うが。

「リメアはまだだよな。まだ十歳だし早い早い、悪い虫がつかないように俺がちゃんとしないと〜」

「……」

 となれば。

 ヨイはゼレンの服の袖をチョイと引っ張る。ゼレンはん? と振り返り首を傾げる。

「……どうした? そっちがどうかしたか?」

 ヨイは自分の後ろの道を指差す。昼時だからちらほら人が見えるが、特に変哲のない通り道である。

「……」

「あ、おい」

 ヨイは無言で指差した方向へ歩き出す。ゼレンは疑心感抱きながらも、ヨイについていくことにした。

 秋晴れの下、仲睦まじい家族や兄弟、道端でサッカーをして遊ぶ少年たち、仕事をする大人たち。そんな人たちを横目で(うらや)ましめに通り過ぎること数分。

 次第に人が増え、繁華街へと着いた。この辺りは出店が並んであり、食材や百貨店など、いろいろ買えることができる。流石に買い物に来た人が多い。人混みを避けながらヨイについていく。

「こんなとこ……、なんか買いたいものでのあんのか?」

 貯金癖のあるゼレンにとって無縁の場所。ここにくるのはリメアの担当だろう。

「……」

 と、ヨイは目的の場所に辿り着き立ち止まる。急に止まったヨイにぶつかりそうになったが、反射的に仰け反り回避する。

「あん? どした、繁華街抜けちまったぞ。……ん?」

 そこは出店が並び終わっており、後ろから喧騒が聞こえてくる。すると、ヨイは建物の隙間、暗がりの路地を見つめていることに気がつく。

「そこになにかあるのか?」

 ひょこっと隣から覗く。すると。

「なっ!?」

 樽や荷物が散乱する細い路地を抜けた先の、広がっているスペースに、何人かの人影を見つける。そして、その一人が。

「リメア!? なんでこんなところに!!」

 ゼレンは叫んだその時にはすでに走り出していた。ヨイはそれを止めようと手を伸ばすが間に合わない。

「て、テメェら何やってんだ! ……俺の妹になに手ェ出してんだぁ!!!!」

 細い路地を肩や腕を建物の壁に擦りながら走るゼレンが叫んだ。ヨイは手を伸ばしたまま硬直する。困った。悪い虫は排除とか言っていたから連れてきたが、先を急いでしまったらしい。

「……ん? あれは……、女の子がいるってのに何しているんだ!! ま、待て!!」

 本当はこっちのことなんだが。

 その男はヨイの横を通り過ぎ、ゼレンが突き進んでいった路地に入って行った。

 暫し沈黙した後、ヨイはザッと足を返し、路地とは違う通り道を歩き出した。

「おらぁ! このボケども!! 誰に手ェ出したか理解してんのかオラー!!」

「だ、誰だ!?」

「ぼ、ボスッ! こいつです! 例のクソ強いガキは!! この街の用心棒ですよ!」

「そんなんじゃねぇ! 俺は妹だけの用心棒だ!!!!」

 建物に囲まれた路地の開けた場所に、剣がぶつかり合う音と言い争う声が反響する。

 相手はゼレンより体格の大きい盗賊が四人。少しの剣戟だけでもまぁまぁの剣技があることが分かる。

「チッ……、大丈夫だぜリメア、問題なし」

「う、うん……」

 一人の男の脇に抱えられているリメアは、不安そうな顔で頷く。この街じゃ誘拐なんてザラにある、あるけどまさかあのしっかり者のリメアが誘拐されるなんて……。

「お前ら、タダじゃ済まねぇぞ――」

「や、やめろぉ!!」

 上擦った甲高い声が割り込んだ。路地には静寂が流れる。その場の全員が同時に声の方向に顔を向ける。そこには、一人の男が立っていた。

 高級な質の良い布で作られた服を着ているそいつは、すぐに貴族か皇族か気づく。歳はリメアと同じくらいか少し上、十一、ニあたりだろう。

 ガタガタ震える足、汗ダラダラで歯を食いしばる恐れ慄く顔。とても誰かを助けられそうな人ではない。しかし、その人は前に出る、

「そ、そそその娘を、放せ!! さ、さもないと……」

 そいつは噛みまくりながら剣を抜いた。宝玉のように輝く頭身が禍々しいオーラを出している。

「き、斬るぞ!!」

 その言葉で、凍っていた時間は流れを取り戻した。盗賊たちはそのひ弱そうな姿を見てニヤと気味悪く笑う。

「……、ヨイが来る流れじゃないのかよ……」

 少し残念がったゼレンは、剣を構えて盗賊たちを見据える。こいつが誰だか知らんが、やることは変わらん。

 ゼレンはダッと踏み出し、剣を振りかぶった。

ご精読ありがとうございました。

毎週平日の朝に投稿してくので次回もぜひ読んでください。

シャス。

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