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人たるべく  作者: 絵目リア
1章 タリウス帝国
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深雪と狼


 深々と雪が降り積もる深夜、深い森の中からくしゃみが響いてくる。


「うぉ~流石北の帝国…冷えるなぁ。」


くしゃみの勢いで鼻から垂れた鼻水を拭うより早く鎧狼が舐め取る。


「お前そこまでやる必要無いんだぞ?」


内心引きながらも善意からくるものだし、なにより野生の動物のやることにいちいち口を挟むのも無粋だと思い頭を撫でてやり口を閉じる。


結果から言うと街には着いたのだがやはり魔物を町中に入れることは出来ないと言うことで門番に止められてしまった、そのため街から少し離れた森の中で焚き火を囲みながら夜を越すことにしたのだ、幸い鎧狼(天然毛布)があるため幾分か寒さは和らいだ。


「クソ、にしても寒いな、もう少し規模が小さければあの街の奴らも全員血祭りに上げてやるところだったんだが…。」


俺は鎧狼を抱きしめながら横になると狼は尻尾を一層大きく振り回す。


「俺のレベルに余裕があればお前にも分けてやりたかったんだが…。」


確かミハイが人化を覚えたのが確かレベル15付近だったはず、と考えると今レベル10の俺がコイツにレベルを分け与えたところでレベル5の雑魚…とまでは行かないが不安の残る奴が二人出来るだけだ、人化のスキルを取得するのには個体差があるというのはニシャトで検証済みではあるが不確定要素に賭けられるほど現状余裕があるわけでは無い。


最悪コイツは殺して見捨てても良いのだが、やはり意思の疎通が取れたっぽい眷属にした相手を切り捨てるのは躊躇われるくらいには「人間の心」と言うものが俺にも芽生えたらしい。


「いやそれはないか…。」


つい先程まで人間の村を壊滅させてその血肉を喰らった奴に道徳もクソもあるはずも無い、恐らくこの狼を殺さないのは面倒くさいからだろう。


そう自分に言い聞かせると煙草に火を付けて寝っ転がりながら一服する、俺よりも鼻が効くであろう鎧狼は嫌がる素振りも無く俺の横で身をすり寄せてくる、何時見捨てても良い…そう考えはしたもののこうして身を預けてくれる眷属を見ると悪い気はしないなと思いながら眠りにつくのだった。



翌朝依然降り積もる雪に晒されながら狼に顔を舐められて目を覚ました。


「起きた、起きたから顔を舐めるな臭く――はないな…。」


顔を拭いながら起き上がると服と頭に着いた雪をはたき落とす、鎧狼も身体をブンブンと降って雪を振り払っていた、どこか犬っぽい仕草に笑いを誘われるが咳払いをして堪えステータスカードをぼんやりと眺める。


鎧狼の欄を見るとレベルは2だった、ミハイも出会った当時は同じく2だったためそこまでの驚きはない、スキル欄には恐らく鎧狼の外骨格のような部分である「装甲」と言うスキルがあるだけで特に変わった部分は無かった、そのままの流れで特に考えること無く寝起きの霧が掛かった思考でミハイとニシャトの欄も眺める。


「おーあいつらいくつか新しいスキルを習得したんだなぁ…アルスさんにお礼言っとかないとだな――ッ?!」


ミハイもニシャトも頑張っていると言うところが確認できたところでカードをしまおうとしたところでレベル欄が目に入る。


「レベル30?!ってマジかミハイ!それにニシャトも27まで成長してやがる…俺よりよっぽど強えじゃねぇかよ…。」


急に大声を出したことで鎧狼はビクリと身体を跳ねさせる、謝罪の意味も込めて頭に手を置いて撫でてやる、撫でつける事で少し気分も落ち着き始まる。


「エンヘル…」


鎧狼は首を傾げながらこちらを見上げてくる。


「お前の名前だ、エンヘル。」


エンヘルと呼ばれた鎧狼は意味を飲み込んだのか嬉しそうに俺の回りを駆け回る。


「決めたぞエンヘル、俺たちに遊んでる暇は無い、とにもかくにもレベルを上げるぞ、お前は他二人に追いつけるよう頑張れ、こんなんでも俺はあいつらの主人だ、主人が配下より弱いってのは格好が付かねえし、なにより再開したときに失望されたくないしな…。」


俺がミハイ達に会ったとき俺のレベルが低かったら、恐らく二人は自分のレベルを吸ってでも俺のレベルを上げてくれようとするだろう、ただ俺から与える際には問題ないが俺が眷属から吸い上げる場合1レベルを上げるのに2、3多く吸い上げる必要があるため可能な限りそういうことはしたくない、何よりダサい。


俺は地図を開くと特に危険だと赤バッテンで塗りつぶされた書かれた山を見る、今回の外出はアーヴィ・タリウスの貧血状態からの回復を待つためという理由と共に俺のレベルダウンの原因の究明だったためそこまで難易度の高そうな所に行く気は無かった、が状況が変わった。


「エンヘル、俺は訳あって一週間後には帰らなくてはならない、だから帰るまでにはお前も俺も15まではレベルを上げるぞ、んでお前に人化してもらうぞ?」


俺の問いかけにエンヘルは力図良く喉を鳴らし吠える。


「よし、ただミハイもニシャトも顔は良いからお前もイケメンになれるといいな?何かと便利らしいしな。」


そう言うとエンヘルは少しだけ困ったように首を傾げるのだった。



誤字報告、感想ありがとうございます!

ド不定期更新ではありますが応援よろしくお願いします。

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