新しい出会いと
村人達を粗方殺し終えたため、村の入り口に積み上がられた死体に腰をかけ煙草に火を付けながらポケットに手を突っ込んでステータスカードを取り出す、右手で躁血を操り死体から血液を吸い上げ時たま息のある人間や逃げようとする奴に止めを刺しながらステータスカードに目を通すとレベルが元々あった10レベルまで戻っていた。
「おぉ!って事はやっばり人間を殺すこともしくは血を吸う事がレベルダウンから戻る鍵だったんだな。」
手を握ったり開いたりして感触を確かめる、心なしか馴染む感じがするし躁血のキレも良くなった気がする、まぁ気がするだけかも知れないが…
俺の持ってきた地図にものっていないような小さな村の為全滅させることはそこまで大変では無かった、近くに応援に来られるような人手も居ないだろうがそこそこの量になった死体は処理すべきか、チラリと村の入り口を見ると遠巻きに魔物達がこちらをのぞき込んでいたが目が合う奴から蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「放っておけばあいつらが食ってくれると踏んでたんだが…仕方ないか…」
死体処理の当てにならないのであれば邪魔にしかならないので殺気を撒いて未だに遠目に見ている魔物達を散らす、軽く殺気を放ったつもりだったが思いのほか強く出ていたらしく我先にと魔物達は文字通り脱兎の如く逃げ出していった。
「さて…取りあえず全部血を吸い上げた上で燃やすのが一番楽かなぁ…。」
躁血に裂く魔力の割合を増やし先程よりも勢いよく吸い上げる、ズルズルと音を立てながら俺の身体に吸い込まれていく血液達もう幾度となく経験した事だが何度やってもこの爽快感と血を得た時の多幸感は癖になるものがある。
「ん?」
パキリっと小枝を割る小気味のよい音が後ろから響いてきたことで俺の至福の時間は終わりを告げる、振り返ると先程逃げた魔物の一体が小枝を踏み割りこちらに近づいてきていた。
「度胸があるのか、馬鹿なのか、それとも死にたい…ってのは流石に無いか。」
俺はロットンネイルを抜くと魔物に向け様子を見る、近づいて来た魔物は狼のような四つ足で体毛は白銀だったがその周りは黒い鎧のような外骨格で所々が覆われていた。
変わった魔物だと目をこらすとこの狼が酷く痩せていることに気がついた、肋が浮き出ており腹が背中に着きそうなくらいに痩せ細っていた、鎧のような外骨格も萎びており栄養状態も余り良くないようだ、食い詰めて一か八か賭けに出たのであろう。
死体はいくらでも余っているし正直くれてやっても良いのだが少し悪戯心が芽生え俺はゆっくりと殺気を放つ、狼は全身をガタガタと震わせ一瞬足を止めるがゆっくり一歩一歩こちらへと歩みを進めてくる。
「……」
俺はもう一段殺気を強めると狼はさらに全身の震えを増す、軽く喉を鳴らすがこちらへの歩みは止めない、俺はロットンネイルを狼の顎に当て首を持ち上げさせる、狼は酷く怯え震えているが目は睨むわけではなくしっかりとこちらを見据えていた。
「いい目だな、覚悟を持ってしっかり座った目をしている…悪かったよ冗談が過ぎたな。」
伝わっているかはわからないが俺はそう言うと殺気を納めると死体の山から適当に切り刻んだ肉の一部を放り投げる、狼の目の前に落ちた死体を狼は眺めると俺を見てくる、それはまるで食べて良いのかと許可を求めるような仕草で俺は少し絆されてしまう。
「元々はお前達が戦っていた相手を俺が横取りしたんだ、それはお前のものだよ。」
俺がそう言って再び躁血を操ると狼はガツガツと死体を貪り始めた、白銀の毛を深紅の血に汚しながら豪快に臓物を食いちぎるその姿は良い食いっぷりで胸が空くような気がする。
追加で2、3体死体を与え残りは刻んで燃やすことにした、煙草を片手に死体のキャンプファイヤーを眺めながら狼に目をやると食い終わったようでこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。
「なんだ感謝のお礼参りでもするつもりか?」
狼の目線に合わせてしゃがみ込むと狼は喉を鳴らしながらこちらに頭を寄せてくる、頭にポンと手を乗せてやると気持ちよさそうに喉を鳴らしながら手に頭をすり寄せてくる。
「良い毛並みをしてるじゃないかミハイと良い勝負だな。」
軽く顎を撫でてやり終わりの合図に軽く頭をポンと叩くと立ち上がり死体が良く燃えているのを確認すると村を後にした。
※
地図を眺め宿のありそうな街を探しながら雪道を歩む、レベルが元に戻ったという問題を一つ解決し足取りは軽い筈なのだが、一つ新たに抱えた問題にその足取りは少し重くなってしまう。
「あのなぁ…義理を感じてくれてるんだか、俺に着いてくれば飯にありつけと思ってるのかは知らないけどな?悪いがお前がいると街に入れないんだよな。」
俺は振り返ると俺の後ろにぴったり着いて歩いてくる狼に対してそう喋る、狼は何を伝えたいのかはわからないが尻尾をブンブンと振りながらこちらに甘えてくる。
そんなやり取りを何回か繰り返しているうちに街の遠景が見えてくる、俺は頭を掻きながら煙草に火を付ける。
「お前は…どう言っても着いてくるつもり…なんだよな?」
狼は尻尾を一層激しく振ると遠吠えを一鳴きする、フッと一息吐くとステータスカードを取り出し眷属欄を眺める、幸い前回検証のために小鳥を眷属にすることは出来たため枠に空きはあることは知っている、腹をくくると俺は狼に視線を合わせる。
「今俺には眷属が二人いる、ミハイとニシャトって言うんだが…どっちも頼りになるし今の俺には必要不可欠な存在なんだよ、分け合って今はちょっと合えてないんだが俺の支配下に入るんであればお前にもそいつらに名を連ねるような立派な眷属になって貰う、勿論ダメなようならすぐに殺して眷属から外す…それで良いな?」
狼は穴が開きそうな程俺を見つめるとゆっくりと頭を落とし伏せの姿勢をとる、俺は狼の頭に手を乗せ眷属の契約を交わす、するとステータスカードに鎧狼と種族が表示される。
「わかった、我が眷属となる鎧狼よこれからよろしく頼むぞ!…名前は…あとで考えるわ!」
鎧狼は一吠えすると嬉しそうに俺の回りを駆け回り、俺はコイツの名前どうしようかと顔を歪めるのだった。




