補填
深く積もった雪を踏みしめながら舘へと帰る途中ふと気になってステータスカードに目を通す、俺の期待とは裏腹にレベルは7から変動が無かった。
他の部分にも前回に見たときから特に変化は無いようで特に気になる部分はなかった、ただ眷属の欄にミハイ、ニシャト両名の名前が並んでいたことで少し二人はどうしているのかと考えを巡らせてしまった。
アルスに迷惑をかけること無く無事に過ごしていてくれれば俺としては言うことは無い、二人の名前はステータスカードの他の文字と違い淡く発光していた恐らくこれは二人が生きているという意味なのだろう。
いったんは納得のいったものの本当に無事なのか、自分の予想は正しいのか不安になったため確かめることにした。
一瞬だけ本気で魔力を循環させ、殺気を周囲に散らす。すると空や木の枝に止まっていた動物や魔物達がバタバタと気絶して落下してくる。
そいつらの中の一匹の小鳥を半ば強引に眷属にした上で首を引っこ抜いて見るとステータスカードの表示は発光を失った。
「見当違いじゃ無かったみたいだな、そうか…当然生きてるだろうとは思ってたけど…とりあえずよかった。」
ほっと胸をなで下ろす気持ちなった俺は殺した小鳥の死骸を投げ捨てると眷属を解除する、数秒後気絶から復活した動物たちは鳴き声を上げながら散っていった。
「せっかく一週間も休暇を貰えたんだし…レベリングがてら散策でもしてみるか!」
舘を出る前に拝借しておいたこの辺りの地図を眺めながら、魔物の多く生息している危険地帯へと足を向けた。
※
流石白銀の世界と言いたいところだが、俺の周囲は魔物の返り血で真っ赤に染まっていた。流血によって辺りの雪は真っ赤に染まりそして溶け出して行く。
雪を雑に払い焚き火を起こすが血のにおいに釣られるのか次から次へと魔物が襲ってくる、決して苦戦するなんてことは無いが数が数なので面倒くさいことこの上ない、ここらの魔物は彼我の力量差もわからないほど馬鹿なのか、はたまた飢えから来る決死の襲撃なのか。
粗方殺し終えた為死体を躁血で血抜きすると面白い程カラカラのミイラが出来上がる、それを火にくべ地面に流れた魔物の血は躁血で不純物を弾きつつ俺の身体へと吸い上げた。
人間の血ほどの旨さや快感はないものの味そのものは悪くはなかった、簡潔に書かれた地図の為現在地が書かれている危険地帯なのかどうかと言うことは正直わかりかねるが、この魔物との会敵ペースを考えるに恐らく合ってはいるのだろう。
取りあえず当てもなく歩いて3時間ほど経っただろうか、森の奥から小さくはあるが怒号のような音が聞こえてきた、この極寒の森には娯楽が少ない、少々退屈していた俺は早足で音の方向へと駆け寄る。
森を抜けたその先には音の正体でもある小さな寒村があった、木で雑に作られた塀というか囲いというかに周りを包まれた中にいくつかの家が存在しており暖かそうな湯気が立ち上っていた。
村の周りには何匹かの魔物がおりそれを村人が武器を手に戦っていた、俺がダンジョンに行く途中で出会った熊の魔物や、4足歩行の狼のような魔物、鳥のような風貌で飛んでいる魔物などなかなかバリエーションに富んでいる面子だった。
しかしどうやらどちらも攻めあぐねているらしく一向に拮抗状態が崩れようとしない、見るに魔物達はみな痩せ細っている、これは最後の大勝負なのだろう飢えて死ぬか戦って食料を得るか、期待していたほど面白いものは見られなさそうだとため息をつきながら地べたに座り煙草に火を付ける。
左手の指先で躁血の訓練をしながら煙草を吹かす、一本吸い近くの木に押しつけ火を消して二本目に火を付ける、ぼんやりと寒村の攻防を見守りながら四本目を取りだそうしたところで状況に変化が訪れる。
魔物側の中核戦力であった熊の魔物が退却したのだ、それを皮切りに前衛を担っていた熊の魔物が抜けたことで魔物側は総崩れすることになった。
その後はかなり一方的な展開になった、いつの間にか張られていた罠にかかり退路も無くなった魔物達は次々と武器を突き立てられ絶命していく。
そんな様子を見ながらゆっくりと立ち上がる、煙草を投げ捨て村の入り口に辺りまで歩いて行くと斧をもった3、40代くらいと思われる男が話しかけてくる。
「おい!坊主!もうけりは付いたし加勢なら要らねえぞすっこんでろ!」
「ん?いや要るだろ。」
俺は男の眉間をロットンネイルで貫く、素早く引く抜くと男は糸の切れたようにドサリと倒れ眉間に開いた小さな穴から血が噴き出す。
辺りにいた村の住民は状況に頭が追いついていないようで目をかっぴらいて信じられないものを見るような表情で俺を見つめる。
「いや俺はこっちの加勢だから。」
親指を立て後ろで敗走を始めている魔物達に向ける、村人達はまだ思考が追いついていないようで固まっているそんな人混みをかき分け一人の女が走り込んでくる。
「うそ…嘘よ!どうして!あんた!どうし――」
両目に涙を蓄え怒りの形相でわめき散らしながら走り寄ってくる女の言葉を聞かず首を跳ね飛ばす、女の首は鮮血をまき散らしながらクルクルと空中を舞い飛んだ。
そうしてようやく村人達は実感が湧いたようである者は泣き、ある者は困惑し、ある者は怒りを込めて俺へと武器を振り下ろしてくるのだった。




