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人たるべく  作者: 絵目リア
1章 タリウス帝国
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陰りの日、太陽の死。



 北の帝国とは文字通り比較的大陸の中心にある法国や王国から見て北にある、アーヴィ・タリウス皇帝の建国した国であり正式名称をタリウス帝国と言う。

四方を山に囲まれた要害であり、巨人の末裔であるという伝承は今でさえその圧倒的な武力と精強な軍隊によってまことしやかに噂されている。



山の中腹を貫いて人工的に作られた道を抜けると見上げた首が折れそうな程の高さを持った城壁がこちらを威圧的に迎えてくる、一歩歩く度刺すような冷たさを肌に感じ、吐く息は煙草でも吸ったのかと言うくらいに白銀の煙を作り上げる、

ナトリもそこまで厚着をしている風には見えないのでこればかりは慣れだと割り切るしかなさそうだ。



城壁を抜けると少し寒さがマシになる、魔法的な力か単純に人の多さ故なのかは分からないが悪くならないならばそれでいい。

ここに来るまでの道中でナトリにそれとなくアルスとの繋がりがあるのか、どういった関係性で俺を助けたのかというアルスの「読心」だけでは分からなかった部分を聞いてみたのだが、どうやら魔族やアルスとは全く関係なしに俺を助けたらしい、何故助けたのかというのは着いたら話すとだけ言われそれ以上は聞き出せなかった。



アルスの考えることはよく分からないが取りあえずは俺の身は助かったわけだし良しとしておくべきだろう、それよりも個人的に不安なことが王国に居るときにも噂として耳に入ってきていた、帝国で政治的な動乱が起きていると言うことだ。

まだ城下に入っただけで何とも言えないがとても荒れている様には見えない、帝国が他国を油断させるためのブラフだったのかも知れないし帝国に入った今ではそうあって欲しいと思わざるを得ない、こちとらもう政治絡みはこりごりなのだ。



「目的地はここからまだもう少しかかるが…大丈夫か?」



ナトリは俺の顔をのぞき込むように聞いてくる。



「そうだな…ここ数日何も口にしてないから水くらいは飲みたいってのはあるかな?」



ナトリは無言で頷くと見慣れない硬貨を数枚手渡してくる。



「少し見て回れば出店の一つは見つかると思う、これで好きなもを買って貰って構わない、私は少し別件があるから戻ってくるまでにできる限り目立たないように諸々の準備を済ませておいてくれ…それと渡すのが遅れたがこれはお前のだろう?」



ナトリは外套の下から一振りのレイピアを取り出す、それは漆黒の刀身を持つ俺のロットンネイルだった、礼を言い受け取るとそのまま別行動をすることになった、別れ際にナトリが首元をトンと指さす仕草をとったのは恐らく隷属の首輪がついているから逃げるな、もしくは無駄という意味なのだろう。



出店の一つで豚の血で野菜を煮込んだと言うスープが売られていた、帝国民には余り人気の無い伝統的な料理だと説明を受けたが久々の食いものであると言う事と血であるという事実に内心歓喜しながら平らげた。



俺のあまりの食いつきに出店のおばさんは酷く喜んでくれ、なんとタダでおかわりまで頂く事ができた、おばさんに礼を言い代金を支払うと店前を離れた。



満たされた腹を押さえながらぼんやりと町並みを眺めていると、どこからともなくナトリが現れ着いてくるよう言われた、やはりナトリのこの存在感を消すスキルは危険だと再認識しながらナトリのケツを追いかける。



城壁から出ると外に馬車が一台止まっていた、どうやらアレに乗ってまたどこかに移動しなければならないようで俺は思わずため息が出る、言われるがまま馬車に乗り込むと対面にナトリが座る。



「…なぜ助けたか…説明しなくてはいけないな?」



組んだ腕に顎を乗せこちらを見据えたナトリに対して俺は椅子に深く背を預けゆったりと首を傾げる。



「話してくれるのか?てっきりうやむやなまま流されるとばかり思っていたんだけど。」



ナトリは眉間に皺を寄せおちょくるような態度を取った俺を軽く睨む、呆れたとでも言いたそうに軽くフッと息を吐くと視線を逸らし口を開いた。



「私だっていちいちお前に説明してやる義理も無い…が私の主は不義理を嫌う故、お前との約束事も果たせねば主に泥を塗ることになる。」



馬車に揺られながら喋るのは舌を噛みそうでなかなか大ごとだなと思いながらも神妙な面持ちのナトリを見て同じように何とも言えない表情で軽く頷く。



「以前王国でお前と会った時お前も言っていたように帝国は今政変の時期にある。」



あちゃーまだ終わってなかったかーっと内心頭を抱えて座り込みたい気分だがタダでさえ隷属の首輪で弱い立場の俺がこれ以上弱みを見せるわけにはいかない、つまりあくまで表情では知っていましたがそれがなにか?という面をする。



「…私の主であるアーヴィ・タリウス皇帝陛下は今現在病に伏されている…血が腐るという奇病に蝕まれもう半年も起き上がることもままならない状態なのだ…お前は血を操るだろう?その業で何とか…ならないだろうか?」



目は潤み縋るような表情で俺に話しかけてくる。



「過度の期待はよしてくれ、悪いが俺は医者じゃないし実際に目にしてみないと何とも言えないな…。」



俺は首を横に振りながらナトリから視線を逸らす、正直な話俺自身この「躁血」が何処までのポテンシャルを持っているのか把握し切れていない、主に武器に使っているが防御にも使えるし、なんなら他人の血に干渉し止血までは可能だと言うことは分かっているが病をどうこう出来るかは定かではない。



俺の返答に明らかに肩を落としたナトリは目を伏せ深く背を椅子に預ける、落胆具合から主への忠誠心も窺えるというもので下手に手を出すと怪我をしそうだ。



馬車は山道に入ったのだろうかより揺れは激しく、寒さも厳しくなってゆく。

揺れる車輪の音は深い雪に吸い込まれ雪山は普段の静寂を取り戻し、雪はまだ止まない。




話の練り直しとかデータの消失とかでかなり遅れてしまいました、本当に申し訳ございませんでした。

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