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レースの対戦が終わり俺はふらつく足でなんとか観客席まで戻る、道中多くの人に話しかけられかなり戻るのに時間がかかってしまった、大きくため息をつきながら自分の席ある辺りに着くとウィル達生徒会の面々が迎えてくれた。
「やったねケイ!」
まるで自分の事の様に顔をほころばせ喜んでくれているウィルに力なくグータッチを返す。
「つかれた…法国はあんな奴ばっかなのか?」
俺は大きくため息をつきながらウィルに訪ねるとウィルは苦笑いをしながら少しおどけて言う。
「あそこまでの使い手はそうそういないと思うよ?」
ウィルの言葉を確認するようにオスカーに視線をやると彼女も軽く頷く、どうやら俺の運が単純に悪く法国でも選りすぐりの奴にぶち当たってしまったようだ。
「明日の対戦相手が決まる試合がそろそろ始まるよ~?」
アンバーがどこか抜けた言い方で会場を指さす、ぱっと見だがどちらもレベルは低そうでレースほどの脅威ではないだろうそれに疲れた、俺はアンバーに否定を込めて軽く手を振り会場を後にした。
審判に治癒をかけてもらったものの完全ではないようで身体の所々に痛みと疲労を感じながら自宅へも向かって歩き続ける。町は武闘大会を見に来たであろう人々でいつも以上に賑わっていた、露店にも人だかりが出来ており多くの匂いが混ざり合い少し気分が悪くなる。
どうにも身体から倦怠感が抜けない…このまま家に帰って寝れば少しは良くなるかも知れないが、生憎手持ちの武器の多くが壊れて使い物にならなくなってしまったのでジェスターのおっさんのところに顔を出さなくてはいけない。
取りあえず動きにくくてしょうが無い学園指定の制服を軽く着崩しながら適当な裏路地に入る、王都といえど一本裏に入ればそこそこ荒んでいる、貴族からすればこういったスラムは好ましく思わないだろうが俺からすればクスリの売買ルート的にも助かっている。
完全にキマって路地にうずくまっているものや単なる物乞いなどがポツポツ端に固まっていた、ちょうど良く孤立していた年老いた物乞いの前に立つと銀貨を一枚目の前に投げ捨てる。
老人は銀貨をそのみすぼらしい姿からは想像できないほどの素早さで取ると顔を上げ俺のことを睨み付けてきた、礼を言われるならまだしもここまで敵意たっぷりに睨まれるとは思ってなかったので少し面食らったが貴族の施しに見えそれが鼻についたのだろう。
「まぁそういう方が気兼ねないから良いけどな。」
俺は腰からロッテンネイルを素早く抜き老人の首元を切る、一応声を上げられないように口元を押さえつけながら吹き出る血に手を当てる、勢いよく流れ出る血は俺の腕に絡みつく様に流れ落ちてゆき徐々に重力に逆らいながら吸い取られるように染みこんでくる。
「あぁ…やっぱりこれだな…」
全身を駆け巡る多幸感に口角は卑しく上がり軽い感動に身を震わせる。久々に喰うためだけに人を殺めたが悪い気分じゃ無い、というかつくづく普段の食事は”コレ”の代替品だと思わせられる。
トリップ状態からはっと我に返る、素早く周囲を見渡し見られていないことを確認するとスカスカになった元物乞いを路肩に捨てると素早く裏路地からおさらばする、先ほどまでの倦怠感が嘘の様に吹っ飛んだ、最高に気分が良いが欲を言えばやはりお肉も頂きたいところではあったが仕方が無いだろう。
ごく自然に大通りに戻りそのままジェスター鍛造屋に向かう、店前に着くと軽く人だかりが出来ていた、今まで俺以外にこの店に来てる人間を見た事が無かったが改築したのが良かったのだろう。
押しのけていくわけにも行かないので列に並んで待っているとやけに視線が俺に集まってくる、最初こそ何かの勘違いかとも思ったがざわめき声が徐々に大きくなり俺を緩く囲むように人が集まり始めた時には流石にそれはないと気がついた。
もしやさっきの血でもついてたかとも一瞬考えたが道中確認したのでそれはないだろう、異様な雰囲気を感じながら気取られないよう腰のロッテンネイルに手を添えながらさも何も気がついていないような素振りで列に並び続けた。
「あっあの!」
顔を紅潮させて興奮気味に話しかけてくる俺と同じくらいの歳の少女、ぱっと見学園の生徒だろうか?舌打ちを我慢し最も対外的に良いだろうとされている笑顔で向き直り首を傾げる。
「ここ、これってケイ様の物ですよね…」
様付けに軽く面食らいながらもそれが表情に出ることはなく差し出された物を見るとそれはレーム戦で壊れた武器の残骸だった、周囲の人間もどうやらこの少女と同じ一団らしく身を乗り出してこちらを伺っている。俺は別に嘘をつく必要も無いので肯定すると軽く歓声が上がる。
「やっぱり…見た事のない刻印がされているからてっきりこの国の物では無いのかと思いましたが…こうしてケイ様にも会えましたし苦労した甲斐がありました…。」
ハンカチを目元にあて涙ぐむ少女にかなり引きながらもあぁそうですかと取りあえず返答はしておく、どうやらレースに勝ったことで俺の株が知らないところで上がっていたらしい、武器の残骸からここまで特定されるとは思わなかった、適当に会話を切り上げると彼女らは帰っていき無事店の中に入ることができた。
店内に入るやいなやおっさんが駆け寄ってくる。
「みんなお前の名前を聞いてきてその後武器を山のように買っていきやがる、どこぞのお嬢様かしらんが女ばっかり…うちのは全部なまくらだと言っても聞きゃしないし一体どうなってんだ?」
おっさんの言葉に頭を抱えたくなる、恐らく先ほどの彼女らは俺のファンと言ったところなのだろう。
改めて武闘大会の規模の大きさを思い知らされると共におっさんには迷惑をかけて申し訳無い気持ちでいっぱいだ、おっさんに経緯を話すと目を白黒させながら聞いていた。
「まぁこっちとしては商品が売れるのはありがたいし本当に感謝するしかしなぁ…あのなまくら武器で武闘大会に出たのか…つーかそもそもお前学園の生徒会なのか?!」
それからジェスター夫妻に多くの質問を投げかけられることになった。




