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人たるべく  作者: 絵目リア
プロローグ 王都魔法学校
46/73

決着



 「ケイさん苦戦してますね…」



メイは観客席からケイとレースの試合を眺めながら不安そうに呟いた。



「ケイは付与剣士とは初戦闘だろうし無理もないな。」



腕を組み険しい表情のままオスカーはそう言う、付与剣士とは法国で最もポピュラーな戦闘スタイルでありまた法国が付与魔法への理解が最も進んでいるため付与剣士はほぼ法国からしか輩出されることは無い、付与剣士という言葉の通り自身やその武器や防具、時には相手に対して何らかの属性魔法を付与することで自身を有利にまた相手を不利にした上で戦うというのがオーソドックスな付与剣士のスタイルである。



「恐らく自身の身体を強化する魔法…もしくは武具を軽くする魔法でしょうかね?」



ウィルはレースを眺めながら呟くとアンバーにチラリと視線を送る。



「ん?あーね!今見てみるからね……うっわすごいあの人…」



アンバーはウィルの視線の意図に気がつくと直ぐに通眼のスキルを発動してレースを凝視する、数秒後アンバーは大げさに口元を手で覆い驚いてみせる。



「どうでしたか?」



ウィルがアンバーの顔をのぞき込みながら問う、アンバーはさらにウィルをのぞき込むように身を乗り出す。



「ウィルくん正解…正解だけど…身体強化と武具軽量化二つ付与されてるわアレ…」



アンバーは呆れた様にそう吐き捨てた、生徒会一同は苦虫を噛みつぶしたような表情になりケイへ同情の念を送る。





 断続的に続く剣戟、バックステップでレースとの距離を開いたことで得たしばしの休息の間に急いで息を整える。法国近衛第二隊隊長の肩書きは伊達ではない、大剣とは思えないほど正確な剣裁きにいかにも場慣れしたその戦闘スタイルは俺が今までいかにレベルやスキルのゴリ押しで勝ってきたのかということを嫌というほどに思い知らせてくれる。



どちらも戦況を一変させるほどの手傷を負わせた訳では無いのに会場は俺自身の呼吸音が聞こえないほどに盛り上がりを見せている、絶え間ない歓声に俺は頭が痛くなりそうだ。



「その若さでまさかここまで強いとは…見事だケイ殿!」



レースは嬉しそうに笑い声を上げながら大剣をまるでただの木の棒であるかのようにブンブンと振り回す、応えるように俺も短剣とハンドアクスを手元でクルクルと回転させて手遊びをする、ほぼ同時に武器の回転をピタリ止める俺とレース、次の瞬間土煙を上げ両者とも相手の懐に飛び込む。



レースは雄叫びを上げ大剣を俺の正中線めがけ振り下ろされる、俺は右手に持ったハンドアクスをレースの顔面めがけてぶん投げるが余裕で躱される、左手で逆手に持った短剣で大剣の腹を刺す様にぶつけ大剣の軌道をずらそうと試みる。



ギャリッと嫌な音を響かせ短剣が大剣の腹にぶつかるが軌道を逸らすことは敵わないそれどころか短剣は砕け散ってしまう。



「クソッ!」



このままでは押しつぶされるかといって今から腰のロッテンネイルを抜いていては間に合わない、俺は吐き捨てるように暴言を吐き覚悟を決める。



左腕を大剣の刃に裏拳を打つ様に叩きつける、レースの大剣はメリメリと音を立て俺の左手の肉を裂き骨を粉々に切り潰した、俺は獣の様な叫び声を上げながらなんとか耐える。幸い大剣の刃は俺の腕を切り飛ばすには至らなかった、咄嗟の判断によるほぼ無意識の躁血で血管内で血を硬質化させたのが功を奏したようだ。だが硬質化した血の結晶は大剣の外圧によって砕け体内に突き刺さっているのだろう意識が飛びそうなほど痛い。



「なっ?!」



レースはヘルム越しでもわかるほど驚愕していた、それは左腕を犠牲にした俺に対してか、それとも左手を切り飛ばせなかった事に対しての驚愕かそれは分からない、ただ分かるのはそれは致命的な隙を生んだということだ。



俺は素早く腰からロッテンネイルを引き抜くと引き抜いた勢いのままフェンシングの様に剣をレースの胴めがけ突き出した、手応えを感じた次の瞬間目の前がガクッと揺れる、左頬に痛みをじんわりと感じるが目の前の景色はドロドロに溶けていく。



「なッ…に…?」



俺はふらつき千鳥足になりながらもレースの胴体から引き抜いたロッテンネイルを地面に突き刺し杖代わりにしてなんとか耐える、恐らくレースは大剣を捨てて拳で直接殴りつけてきたのだろう、上手いこと顎を打ち抜かれてしまったようで未だに視界が安定しない。



「まさかこのレース手傷を負わされるとは思わなんだ、だがもうこの辺りで良かろうケイ殿?」



レースは俺に刺された腹部から出た血を拭いながら降参を提案してくる、俺は回る視界に吐き気を覚える肩で息をしながら千切れかけの左腕をゆっくりとレースの方に突き出すとゆっくりと人差し指を刺す、にたりと笑いながらレースの後ろの空間を。




俺のその様子に不吉なものを感じたのかそれともレースの野性の感か、レースはバッと勢いよく振り向く。刹那ヘルムにハンドアクスがぶち当たる。レースが突っ込んでくる前に投げたハンドアクスに回転を多くかけて投げたのが俺の想定通りブーメランのように帰ってきてくれたのだ。



「なにっ?!」



レースのヘルムにハンドアクスが突き刺さるがなまくらな仕上がりがまたも幸いして顔までは到達していないようだ。しかし突然の飛来物に体制を崩しこちらに倒れ込んでくる、俺は右手でロッテンネイルを地面に突き刺し固定しそれを思い切り押し出してレースの頭めがけてドロップキックをかます。



ガンと鈍い音が響きレースはそのままドサリと倒れ込む、俺も体勢を立て直しゆっくりと立ち上がると審判が二人駆け寄ってくる、一人が俺に意識混濁が無いか確認し、もう一人がレースの気絶を確認したところで審判から高らかに俺の勝利が宣言された。



観客達の割れんばかりの歓声で会場が満たされる、なかなかどうしてこういうのも悪くないものだと思いながら右拳を振り上げ観客に応えると一層歓声は響き渡った。





そろそろ次章になるかも

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