大剣
ルークの相手は同じ王国の上級クラスの生徒だった、お互い面識があるのか軽い談笑を交わした後対戦が始まった。
緒戦こそ一進一退の攻防が続いているように見えたが徐々に相手のスタミナが切れてきたのか手数が少なくなった頃にはすっかりルーク優勢で試合が進んでいた。
「ルークの勝ちだね。」
さも当然といった表情でウィルが言い切るとその数手後にはルークの剣が相手の首元にピタリと添えられた。割れんばかり歓声にルークは満面の笑みを浮かべ手を振ると歓声は一層盛り上がる。
「さて準備準備!もう次の次にはケイだよ。」
観客席を立ち上がったアンバーさんに俺は無理矢理立たせられる。
「そのレイピアの初戦闘になるのかな?」
「いやまだ使ったこと無い武器があるんでそれを試そうかと。」
オスカーの問いかけに俺は腰に下げたロットンネイルを見ながら言い切る。
「大会で武器の練習って相変わらず余裕だねケイ?」
「そもそも武器なんて最近まで使ってなかったんだしどれ使っても大して強さは変わらないよ。」
俺はウィルにそれだけ伝えると控え室まで向かった。
※
半地下になった待合室で声がかかるまで待つように言われたので言われた通りにそこらにある椅子に腰かけて待つ、俺以外にも数人試合待ちをしている奴がいたが皆一様に張り詰めており目が合う度に射殺す様な目でこちらを睨んでくれる。
この武闘大会に文字通り人生がかかっている者も多いだろうし仕方の無いことだと思いながら俺は苦笑いしつつも視線を外し武器の手入れをする、腰にはロットンネイルをさげ反対側には何の変哲も無い直剣、背中には大鎚、太股の横に短剣、ケツの上の腰辺りはハンドアクスを吊ってある。
自分でもわかるぐらい色物のかませ犬みたいな格好してんなと若干恥ずかしくなりながらも未来の自分への投資だと思い目を深くつぶる、眉間に皺をよせ手で顔を覆いながら時よ早く過ぎ去ってくれと念じ続けてから数十分ようやく声がかかる。
スロープ状になった通路を進んでいくと奥から徐々にまばゆい光がこちらに差し込んでくる、構造上観客席が上にあるためか重低音が上から響き対戦を待ち望む歓声が一歩前に進む度大きくなっていく。
「これは…何というか…テンション上がるな…」
俺は自分の口角が上がっていることに軽く驚きを覚えながらも通路を抜け闘技場へと足を踏み入れる、割れんばかりの歓声に背中を押され闘技場の中央へと歩みを進めると既に相手の選手は目の前にいた。
「法国近衛第二隊隊長のレースだ、よろしく頼む!」
レースと名乗った全身甲冑を着込んだ騎士風の大男はヘルムを取るとニカッと笑いながらこちらに手を差し出してくる、ダンディーな髭面をしたおっさんのその手を握り返す。
「王国学校生徒会のケイだこちらこそよろしく。」
ニチャっと笑って返す。
「おぉ…無礼と承知で聞かせて貰いたいのだが…もしや平民では?」
「あぁ何か問題か?」
レースの問いかけに眉を上げ目を見据えるとレースは吹き出す。
「いや失敬!私も平民の出なんでな何というか王国でも同じ境遇の人間に会えたのが嬉しくてな!」
レースはガハハと笑うと握手した手をブンブンと上下させる。
「貴族様とやらに平民の意地をみせてやろうぞケイ殿!」
「あ…あぁ…そうだな…」
あまりの熱さに若干引きながらもまぁ悪い奴ではないのだろうと思った。
審判の合図で互いに距離を取る、レースは背中に吊った大剣を抜くとこちらに向けて構える。それに応えるように俺も背中から大鎚を抜き構える、審判が開始のかけ声と共に手にした旗を振り下げる。
出方を窺おうかとも考えたが出来れば躁血の魔法は使いたくないので短期決戦、先手必勝の覚悟を決めて突っ込むことに決めた、大鎚を振り上げ突っ込んでくる俺を見て面食らった様子のレースだったが直ぐに持ち直し大剣を斜めに構え受けの姿勢を作っていた。
俺は大きく踏み込むと愚直に大剣に向かって大槌を叩き込んだ、金属同時の強烈な衝突音と火花を散らす、それはもうその大剣へし折ってやるくらいの気持ちでぶん殴ったが案の定上手いこと受け流される。
大剣の上を滑り落ちた大槌は地面に激突しその半分ほどを地面に隠してしまうほど深くめり込んでしまう、これぞ好機と言わんばかりにレースは大剣を俺の胴体めがけ大きく横凪に振ってくる。
クソっと口の中で悪態をつきながら大槌を引き抜こうと試みるがかなり深く埋まった様でビクともしない、舌打ちをしながら大鎚の持ち手を逆に地面に押し込み棒高跳びの原理でレースの身体を飛び越える。
フワリとレースの真上に浮かんだ俺は大剣の横凪ですっぱりと両断された無残な大鎚の姿を目撃した、結構危なかったと胸をなで下ろしている空中の俺に向かってレースは大剣を振りかぶったまま飛びかかって来る。
「おいおい…マジかよ…」
甲冑を着込んだ二メートルはあろうかという大男がさらに大剣を担いでここまでの跳躍をしてくるとは夢にも思ってなかった俺は度肝を抜かれた、余りにも現実離れしたその光景に目を奪われ一瞬対応が遅れる。
「貰ったァ!」
レースの怒号に気圧されながらも俺は咄嗟に腰の直剣を引き抜き右手で柄を左手で刃を掴み両手で直剣を盾にしてレースの一撃をなんとか受け止める、異常な重さを持つレースの一撃に全身を電撃のような痛みが駆け巡る、左手には刃が食い込み血がボタボタと流れ出る、このときばかりは直剣をなまくらに打ってくれた鍛冶屋のおっさんに心から感謝した。
永遠にも思える滞空時間は重力に従い終わりを告げる、地面に足が付いた瞬間に俺は思いっきり地面を蹴り後ろに下がる、当然の如く追撃にでてくるレースにボロボロになった直剣を投げつけそれを阻止する。俺は急いで全身に魔力を循環させると躁血を使い手の出血を止める。
想像以上にレースは俊敏で膂力があった俺はどこか見くびってたんだろう、軽く手を振って血が垂れないことを確認すると太股に手を伸ばし左手に短剣を逆手で構えて少々不格好だが右手でハンドアクスを握る、油断はもうしない。
めたくそ投稿遅れて申し訳無い




