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人たるべく  作者: 絵目リア
プロローグ 王都魔法学校
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邪推


 「ふーん…」



一枚の紙を片手に眺めながらアルスは興味なさげに呟く。



「どうしたんですか?」



ミハイの問いかけにアルスは身体ごと向き直る。



「ケイからの手紙だよ、君たちのことも書いてあるよ?」



ミハイは手渡された手紙を見る、帝国の偵察が潜り込んでいた報告とミハイとニシャトが頑張っているかと簡単に書かれていた。



「思ってた以上に王国はボロボロみたいだね、まさかこんな簡単に密偵が入るなんてこの分だと法国の偵察も間違いなく居るよね。」



「ケイ様に危険が無ければ良いんですが…」



ミハイは胸に手紙を当てて心配そうな表情のまま遠くを見つめていた。



「ケイは今十レベルだったかな、まぁ二十五の君たちからすれば心配になる気もわからなくも無いけどそうそう彼を殺せるヤツはいないだろうから安心しなよ。」



それだけ言うとアルスはニシャトの訓練をするために部屋から出て行った、アルスに諭されたミハイだったが拭いきれない不安が心の隅に巣くっていた。





 剣戟の音が校内の中庭で響く、明日に迫った武闘大会に備え生徒たちは皆互いに練習相手を見つけ試合を行っている。



「ケイどうせ暇なんだろ?やろうぜ。」



ルークが肩を回しながら話しかけてくるが俺は手を軽く振って断る。



「別に何もしてないんだろ?」



「明日に迫った大会に備えてゆっくり休憩してるんだ邪魔しないでくれ。」



そんなやり取りを見ていたのかウィルが近づいてくる。



「じゃあ僕が相手をしようかルーク。」



ルークは一回は遠慮したものの直ぐに折れ広場へと駆けていった、そんな姿をぼんやりと眺めて居ると後ろから気配を感じた、その気配が一瞬殺気を帯びた瞬間俺は地を蹴り飛ばしてその場から勢いよく飛びのいた。先ほどまで俺が居た場所には複数の光の槍が刺さっていた。



「こんなことやる人だとは思ってませんでしたよオスカーさん?」



「可愛い後輩がサボっているように見えたもので愛の鞭というヤツだよ?」



オスカーは軽く微笑んだまま歩み寄ってくる、手を軽く払い光で出来た槍を消すと俺の隣に来る。



「どうしてケイは戦いたがらないんだい?それだけ強いんだ力を持て余して見せびらかせたい盛りじゃないのかい?」



「別に強いことが偉い訳じゃ無いですしそれに俺とオスカーさんだってひとつしか歳変わらないじゃないすか?」



軽く押し殺した笑いがオスカーの口内で響く。



「君のような…いや止めておこう、さあ立って一戦やろうじゃないか?」



オスカーは何かを言い止め、腰の直剣を抜くと剣先をこちらに向ける。



俺は立ち上がり同様に腰に吊した直剣を抜き構える。



「やっと武器を持つ気になったのかい…それにしてもそれは…」



「えぇなまくらも良いところですよ、友人に打って貰ったんですがまぁこれから上達するでしょう。」



軽い剣での打ち合いをしながら難なく俺とオスカーは会話を続ける。他愛のない会話だが小気味よいリズムでの打ち合いのなかでの会話というものはなかなか楽しいもので気づけば俺の直剣は既に刃がボロボロになってしまっていた。



オスカーは軽く謝罪をしてくるが俺は手を振って構わないと言い上着の中に入れておいた短剣二本を取り出し再び構える、するとオスカーは驚いた様な表情をした後ニヤッと笑う。



「もしや私を練習台にどの武器を使うか決めるつもりかい?」



オスカーは素早く俺の方に飛び込んで来ると先ほどよりも強く打ち込んでくる。直剣の時よりも受け流す様に刃を流し衝撃を受けるよう試みる。



「まさか、徒手空拳でオスカーさんとは戦いたくないだけですよ?」



俺が軽口を叩くとオスカーも楽しげに笑い声を上げながら剣を振りかぶってくる、端から見ればだいぶ危ない人だ。



オスカーの剣先を見つめながら手元で短剣をクルクルと回す、なかなか手に馴染むので短剣を主に使っていくのもアリかも知れないと思った。



「流石王国、立場あるものとて同輩とは学び舎を共にするのだな?」



突然かけられた声の方向を見やると絢爛な法衣を纏った青年がこちらに歩み寄ってくる。



「レナート様?!何故ここにおられるので?」



オスカーがレナートと呼んだ青年はゆったりとした歩みでこちらに来る。



「何故?明日は武闘大会だろう、想定より早く着いてしまったがこの国には良い余興もなさそうだからわざわざ未来の妻に会いに来たというのに随分な対応じゃ無いかオスカー?」



レナートはオスカーにニヤリと笑いながらそう言うと俺を一瞥する。



「君は…見た事が無いが…?」



「彼は最近生徒会に所属したケイです、ケイこちらは法国の最高指揮杖者、レナート・カエターニ様だ…そして私の婚約者でもある。」



「そうでしたか…これはご無礼をレナート様、先ほどオスカーさんから説明のあったとおりケイと申します。」



レナートはさして興味もなさそうに頷くと再びオスカーに話しかけ始めたので俺は面倒くさい事になる前にその場を立ち去った、去り際になかなか見られない味わい深い顔をしているオスカーさんが印象的だった。


誤字報告本当に助かります!ありがとうございます!

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