それぞれの
武闘大会も迫り町の雰囲気も活気づく、学校もでも普段通りの講義が減り対人を想定した講義や実践が増えていた。俺とウィル、ルーク、メイの4人は一学年向けの対人訓練の講義に出席していた。
「毎年本当に凄い盛り上がりですよねー。」
隣にいるメイが対人訓練の準備を行う生徒たちを見ながら言う。
「去年は見ているだけだったが、今年は参加出来るからな。」
ルークが腕を振り回しながら意気込んでいる。
「まぁ勝ち上がれば賞金も出るし、何より顔と名前が売れるのは今後の人生に大きく関わってくるだろうしね。」
ウィルは淡泊にそう言い切る。そんな他愛もない話をしていると担当教員の説明が終わり生徒たちが一斉に組み手や魔法の訓練を始める。大抵は仲の良い友人同士で組んで対戦を行っているようだが腕に自信のある生徒たちはこちらに歩み寄ってくる。
「みんな怖い顔してるね。」
「まぁ気合いが入ってるんでしょうね…」
ウィルの言葉にルークが半笑いで答える。ウィルもルークも対戦を申し込まれたようで生徒たちについて行った。
「怪我だけは気をつけてくださいね、いざと言うときには呼んでください!」
メイが両手を胸の前で握り声を張り上げる、程なく戦いが始まるがやはり圧倒的にウィルやルークが強い、動作の一つとっても正確さや早さが段違いである。
「ケイさんは行かないんですか?」
「ん?いや申し込まれてないし面倒くさいし…それに俺止血は出来るからメイと同じく医療担当って事で良いでしょ。」
俺は指先から血を出すとメイの目の前でクルクルと回してみせる。
「オスカーさんに知れたら怒られちゃいますよ?」
「メイが言わなきゃバレないだろ?」
そんなことを言っていると見覚えのある顔がこちらに歩み寄ってくる、プライス家の弟だった。意趣返しということなのだろうがこちらとしては面倒くさい事この上ない、それなので俺は殺意を込めて睨んでやるとじっとりとした質量を感じる魔力の波動がゆっくりと飛んでいく。弟くんは俺の魔力を感じ取ったのか顔を真っ青にして逃げていった。
「ケイさん?」
メイが訝しげにこちらを見てきたが俺は無視する。
「あの…対戦お願いできますか?」
いきなり背後からかけられた声に俺はギョッとして振り向くとそこには青髪を後ろで一つ結びにした女生徒がいた。
「せっかく申し込まれたんです行った方が良いですよ?」
「…そうだなじゃああっちの空いてるところでやろうか?」
俺はメイに空返事を返すと生徒のいないスペースを指さしそう言う、女も軽く頷くと移動を開始した。
俺は前を歩く女を眺める、歩く度一つに纏められた青髪が上下する。だが俺は視線でそれを捉えながら別の事を考えていた。
何故この女は俺に話しかけられたのかということだ、俺は間違いなく殺気を放っていたそれメイも気がついていたしプライス家弟の方に向けていたとは言えとても気軽に近づけるほどの甘い殺意では無かったはずだ。
しかもこの女は俺の背後から俺に気がつかれること無く話しかけて来やがった、服装を見るに下級クラスだとわかるがただ者ではないと気を引き締める。
「それにしても変わった武器を使うんだな?」
「…ただのもらい物ですが。」
女の腰に下がったドーナツ状の武器に目をやる、投合武器だろうか?
「もらい物ねぇ…本当に変わった武器だ終わった後に是非見せて貰いたい。」
俺は首を傾け女の目を鋭く見つめる。
「聞いていたより意外とおしゃべりなんですね?」
女は若干呆れたような侮蔑の様な表情をしながらそう吐き捨てる。
「いや戦うのが怖くってね、喋ってなんとか時間が過ぎないかなと思ったんだけど…」
俺は歯を見せて笑うと女はより嫌そうな表情になる。
「さっさと始めませんか?時間の無駄です。」
「これは失敬、…最後に一つ聞かせて貰っても?」
女は既に嫌そうな態度を各層ともせず俺に言うように促す。
「最近帝国では政変が起きるとかなんとか…大変そうだよな?」
俺が目を細めゆっくりそう言うと女の表情が崩れる、ほんの少しであったが眉が上がり目が開かれる。
「それが…なにか?」
「いいや?ただの雑談ですよ?」
「そうですか、では行きますよ。」
女は短く言い切ると素早く腰の武器を抜く、あわせて俺も魔力を体内に循環させようとしたその時女の気配が消えた。
確かにそこに居るのだが存在感だけがすっぽりと抜け落ちているのだ、視認はできているし今まさに攻撃してこようとしているのは見えているので対処のしようはあるが、一度視界の外に行ってしまえば最悪見失う可能性もある。その存在感のなさはそれほどのものだった。
「これは…面白いな…」
俺は指先から血を出し剣を形作るとそのまま硬質化させ深紅の剣を作り構える。
「さぁやろうか?」




