素養
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「ど、どうっすかね…俺…」
ニシャトから掴んだ手を離したアルスは軽く笑う。
「僕の読心は文字通り相手の心を読むものでステータスを見ることに関してはステータスカードと大して変わりは無いよ?」
「でもケイ様からスキルについてとても造詣が深いと聞いてますけど?」
「ハハハただのスキルオタクだよ、でもそう言って貰えるとは光栄だよ。」
アルスはチラリとこちらを見てくる、俺はどこかこっぱずかしくなり視線を逸らす。それを見てアルスは微笑むとニシャトにステータスカードを渡す、ニシャトはステータスカードに魔力を込めると目を見開いた。
「凄ぇ…文字が浮かび上がって…このスキルってのが俺の能力ですか?そうですよね!結構あるんじゃあねえっすか?!」
ニシャトは立ち上がり両手でカードを掴み全身を震わせている。
「さて早速ニシャトくんのステータスを見ていきたいのだけど…先に言っておいた方が良いかもしれないことが一つあってね…」
「なんでしょう…?」
アルスの歯切れの悪い言い方に良くないものを感じたニシャトは思わず神妙な面持ちになり聞き返す。
「ニシャトくん、君はケイやミハイちゃんの様にはなれないんだよ。」
アルスは申し訳なさそうに、ただはっきりと言い切る。ニシャトはゆっくりと顔を下げ視線は自身の足下を見つめていたその下唇を血が出るほどかみしめながら。
「俺とミハイの様…アルスさん何のことで?」
俺はニシャトの落胆加減とアルスの言いように疑問を感じる。
「ケイ、数日前にミハイちゃんと殺し合いをしたでしょ?」
「殺し合いって…いやまぁ戦いはしましたけど…」
「それがきっかけだろうね、僕の読心でニシャトくんから強く流れ込んできたのは二人の死闘とそれに対する畏敬と憧憬だったんだよ、自分もああなりたいという思いが非常に強く流れ込んできたんだ。彼の記憶から見せて貰ったけど凄まじい戦いだったねお互い死を厭わないほどの激しい肉弾戦だ。」
アルスはカップに注がれた紅茶に口をつける。
「確かにニシャトくんは二十五もレベルがある今ケイやミハイちゃんのマネをしてある程度の結果は出せるとは思う、ただ君はケイにもミハイちゃんにも決してなれない、それは生まれつきの種族も関係あるしこれから説明するけどスキルも関係あるんだ。」
「アルスさんいくら何でもそんなに――」
「いえ…いいんですケイ様、俺が一番わかってた事ですから…俺はケイ様にもミハイ姐さんにもなれないって…役立たずだって事…すみません俺…俺ちょっと…」
ニシャトは立ち上がると部屋から出て行こうとする。
「役立たず?それは違うよニシャトくん。確かにキミはケイにも、ミハイちゃんにもなれないよ、ただニシャトくんはニシャトくんになれば良いだけの話だよ?」
アルスの言葉にニシャトは涙目で振り返る。
※
「いいんですか二人とも面倒見て貰って?」
「問題ないよケイ、それにミハイちゃんの方は僕じゃなくてアラクネが見るって言ってるしそれにニシャトくんには僕も興味あるしね。」
「まぁ…そういうことなら是非よろしくお願いします。お前ら間違ってもお二人に迷惑かけるんじゃねえぞ?」
俺がミハイとニシャトの二人にそう言うと二人とも真剣な表情で返事を返す。ニシャトに関しては以前の落ち込み様が嘘のように張り切っている、ミハイも謎のやる気に満ちあふれている。空回りしてとんでもないことをしでかさないか俺は気が気ではないが本人たちがやる気なのでそのまま帰った。
帰宅後俺は煙草の場所と火をつける為に二回ニシャトを、風呂と飯、着替えの準備の為に三回ミハイを居もしない虚空に向かって呼びそのたび頭を抱える羽目になったのだ。
「それにしても腹が減ったな。」
俺は半地下の食料庫に足を運ぶ。
「あー?もう無いのか…参ったなぁ。」
俺は薬物の材料以外の食料を見つけることが出来ず仕方なく外に買いに行くことにした。
城下には多く店がある、出店からはできたての料理の匂いが漂っており食欲をそそられる。ただ串に刺して焼かれただけの肉も空腹時にはとても魅力的に映るものでたまらず俺は買うことにした。
「んー美味いけど…なんか違うなぁ…」
串から垂れて指に付いた肉汁を舐めながら何処か物足りなさを感じながら俺は当てなく歩いた、思えばこんなにゆっくり町を見回ったのは最初に来て以来だった。
以前は偵察の仕事として死ぬ気で町の配置や構造などを覚えたものだがやはり情報としての知識と実際に足を運んでみるのでは大きな違いがあるものだと思わされる。
とりあえず空腹は満たされ人心地の付いた俺はルークに言われた武器をつかわないのかという言葉を思い出し武具店に足を運んだ。
「ケイ…ケイってあの魔法学校のケイか?!」
「あ?あぁそうだけど?」
「じゃあダメだ!うちのものは売れないね出てってくれ!アンタと関係があるなんて知れたらうちはプライス家に潰されちまうよ!」
店主は顔を青くして手を払う、まさかあの馬鹿兄弟がこんなところで影響を与えてくるとは思わなかった。何処へ行ってもこんな感じで門前払いをくらってしまうので俺は仕方なく家に帰ることにした。
「…こんな所に店なんてあったのか…ボロすぎて廃屋かと思ってたぜ。」
俺は扉を押して開ける、中は統一感のない品物が乱雑に並べられた商店のような造りになっていた肝心の品物はどれも埃をかぶっており来客の少なさを物語っていた。カウンターはあるが店主は見当たらず俺は仕方なく呼ぶことにした。
声を上げようとしたその時俺の開けた扉が外れ壊れ落ちた、どんだけボロいんだこの店はと思っていると奥から人が現れた。
「だ、誰だお前泥棒か!あっお前ドア壊しやがったな弁償しろ弁償!」
三,四十代くらいのスキンヘッドのおっさんが奥から出てくるなり俺にがなり立てる、俺はここで言い合うのも面倒くさいので金貨の入った袋を投げ渡す。
「悪かったこれでいいか?」
いきなり飛んできた袋に驚きながら袋を受け取った店主は俺を睨みながら袋を開くと目を大きく見開いて尻餅をつく。
「おいおい全部これ金貨じゃねーか!ドアどころかこの店全部立て替えてもお釣りが来るぞ!こんなに貰うわけにはいかねえだろ馬鹿!」
店主は汚いものでも触るように袋を投げ帰してくる。
「何処の貴族様か知らねえがそんなに金があるなら大通りに腐るほど店はあるからそこで買いな。」
「俺は貴族じゃない、それに変に顔が売れちまってるみたいでなそういった店だと中にも入れて貰えないんだよ。」
俺はおどけて見せると店主はため息をつく。
「顔が売れてるだぁ?うちもとうとう犯罪者御用達か…それで…何をお探しで?」
「犯罪者かそれも面白いな…俺は今武器を持ってないもんで何を使おうか悩んでるんだ。」
「まともな武器なんかうちにはねえしあっても多分さびてるぜ?」
店主は自嘲的に笑う。
「お前も店持ってるんだ、鍛冶くらい出来るんだろう?」
「できねえこたねえけど自分で言うのも何だが俺はなまくらしか打てねえし、そもそもうちの鍛冶場はとっくに差し押さえられて今は何もねえよ、わかったら帰ってくれ。」
「鍛冶場があれば作れるんだな?」
「人の話聞いてのか?」
俺はカウンターの上に先ほどと同じ金貨の入った袋を三つ置く。
「この店のガラクタ全部買わせて貰う。」
「なっ?!正気かあんた?この店の品全部合わせたって金貨一袋の価値もありゃしねえよ!」
店主は顔を汗まみれにして唾をとてつもない勢いで飛ばしながら訴えかけてくる。
「馬鹿言えおっさん、俺の壊したあのドア見ようによっちゃ悪くない造りしてるじゃねーの?ありゃ金貨二袋の価値はあると俺は踏んでるんだぜ。」
「あんた…なんで…?」
「おっさんが正直者で気に入ったからさ、俺のやった金貨の袋投げて返しただろ?」
「…俺だって腐っても商人だ…価値相応の金しか受け取れねえよ…」
店主は震えながらそう言い切ると俺を一点に見つめてくる。
「ハハッ商売やるには向いてない性格だな、おっさんは鍛冶屋でもやってんのがお似合いだよ。」
「でもこんなに貰ったとこで俺は鍛冶下手だぞ?」
「やってりゃ上手くなるだろ?頼んだぜおっさん。」
俺は背を向けて手を振ると店から出て行く。
「お、おい!待てよ!あんた名前は!」
「ケイって呼んでくれ、次来るまでになまくらでいいから何本か用意しといてくれよおっさん。」
俺は煙草を吹かしながら家路についた。




