10 閑話~とある女学生の受難2~
お久しぶりです⋯⋯。
生きてます⋯⋯。
読んでいただけたら嬉しいです。
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ふわりと温かい風が頬をくすぐり、何気なく視線を上げた。
後ろ姿だけでも極上のスタイルがわかる長身の男性が、スーツにそぐわない高校生用の問題集の棚の前で、何冊か違う教科のものを吟味しているようだ。
黒いハットの下から覗く長い新緑色の髪が美しく、思わず見惚れてしまった。
⋯⋯は! いかんいかん。男の客に見惚れるとか己が許せんっっ!
あきらかに男に見惚れてしまった、と言うことに戸惑いながらも新刊の棚出しを再開する。
慣れ親しんだ作業に平常心を取り戻していたところで、美声としか言いようのない声が自分を呼んだ。
「失礼。会計してくれぬかな?」
耳慣れない古風な言い回し。
しかし、まったく違和感の無いそれに、内心ならず、全身で飛び上がったのは言うまでもない。
「は! はいっ!! ただ今!!」
会計! かいけい!! か、かいけい⋯⋯?
あわててレジ内に入ったものの、目の前に現れた人外の美貌にあやうく『会計』の意味を忘れるところだった。
「ア、⋯⋯アリガトーゴザイマシタァー⋯⋯」
やっとのことでビニールにまで詰めて手渡した後、しばらく呆けていたようだが、正直それも記憶にない。
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鍵を開ける。
家に帰り着き、靴を脱いで階段を上がる。
自室の扉を開けると、ふわりと風が頬を撫でた。
開けた覚えの無い窓が前回になっている。
そのことに疑問を持つ前に、あきらかに誰かが寝転んでいたであろう形でへこんでいるベッドの上に、書店のロゴがついたビニール袋がポツンと一つ。
「⋯⋯」
拾い上げて確認してみると、昨日灯処が使えなくなってしまった問題集の新品が一冊と、以前苦手であることを溢したことのある教科のものが一冊入っていた。
「あ。ご主人様ー。お帰りなさいですー。お水のみます?」
金色の小さな雲に乗って窓からふわりと入ってきたコツメカワウソに口を開き、そして閉じた。
「⋯⋯アオくん。お水いただきたいから、グラスに注いでくれる?」
「!! はい! おまかせください! 少々お待ちくださいね!」
パァアア、と瞳を輝かせたアオは金色の雲に乗ったまま、するりと扉をすり抜けて行った。
その様子を眺めた後、灯処は全開の窓に歩み寄る。
風に煽られて、窓の縁からちらちらと見える新緑の髪。
「ありがと」
言いながら顔を出すと、屋根に腰かけた人外の美貌の翠の瞳と目があった。
人知を越えた風神は、翠玉の双眸をわずかに泳がせ、口を開く。
心なしか頬も高潮しているようだ。
「⋯⋯考えてみたら、我自ら人間に何かをやる、ということが酷く久しぶりでのう。⋯⋯買ったまではよいが、渡すに至って、そのことに思い至り、⋯⋯何をやっているのか、こんな所に逃げてしまっておったわ」
⋯⋯照れたのか。
「この間は、すまなかったのう。どうさな? この我を許してはくれるかのう?」
「⋯⋯これ、わざわざ買ってきてくれたんだね」
「うむ」
「自分で?」
「我、一人で行ったが⋯⋯?」
風の神様が、一人でわざわざ高校生用の問題集を買ってきたの?
「ふふ」
「おや?」
軽い笑い声に風青は、逸らせていた視線を灯処に向ける。
書店のビニール袋を胸に抱いて、灯処は笑っていた。
外から靡く風に髪を舞わせて、頬を染め眸を細め、笑う声はなんて軽やか。
「嬉しい。ありがと。風青」
この女子も、この様に笑うのだな。
窓枠から身を乗り出して笑う少女の、風に靡く髪の一房に、手が届きそうだなと無意識に思った。
「ご主人様ー。お水持ってきましたー!」
「ああ。はーい。ありがとう。アオくん」
扉の向こうから響いた声に向かって簡単に身を翻した少女の行動で、それは叶わなかったけれど。
触れなかったからこそ、持ち上がっている己の手に、風青は目を見開いた。
⋯⋯こんなことがあろうとは⋯⋯。
袖から取り出した檜扇で口許を覆い、溜め息を隠した。
大分、暫く、何年単位で間が空きすみません⋯⋯。
久しぶりにやってきて、いろいろと仕様が変わっていて、オバチャンびっくりしてます。。。へへ。




