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白い家  作者: たま


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暗闇坂

「信じられないわ!勝手に決めるなんて!」地域の婦人会で「会長」だったのに、少し学校行事で抜けてる内に「会長」ではなく「補佐」に役職が変えられていたのだ。

「役員規定にちゃんと書かれてます。読んだこと無いんですか?」と生意気に若い役員が口ごたえしてきた。

「せめて電話でもしなさいよ!」と注意すると「メールを送りましたしラインでも何度もお呼びしました。」とぬかす。

みゆきが働いていた時は、大事な話をメールなどで済ますのは失礼な事だった。携帯なんて以ての外!

大変失礼なのだ。

ちゃんと電話して声を聞かないと連絡した事にはならなかった。

「ホントに!常識無いわね〜今どきの若いお母さんは!」と婦人会を途中退席してきたのだ。

するとバス便がちょうど無くなる13時から16時タイムに。

この頃、バスの減便が増えて通勤時間以外 極端に減らされて1時間に1.2本なのだ。

「ハア?30分待ってたら会議終わった他の人も来るじゃない!

あ〜、こんな日に車検に出してるなんて!」いつもは車でどこでも行くのだが、ちょうど夏のバカンスが終わったタイミングで車検に出してしまったのだ。

軽井沢に買ったコテージで得意なテニスやゴルフを満喫してきたのだ。

夏は暑すぎて東京に居る気がしない。

「…仕方ないわね!」とバス停脇の階段を登る。電鉄会社が開発した住宅地は元々果樹園などが広がる丘陵地帯だった。とにかく起伏が激しく坂道ばかりだ。

この山を通り抜ければ家まで近いのだ。曲がりくねった道ばかりで遠回りしてるのだ、いつもは。

まだ残暑のセミの五月蝿い山の中の階段を登っていく。街灯もない山道は、昼間なのに真っ暗だ。

「さすが昔から暗闇坂(くらやみさか)と呼ばれるだけはあるわね…」足腰の強さには自信があるが、さすがにこの木々の鬱蒼(うっそう)とした様には驚く。

ここに住んで20年近く。初めてこの坂道を山頂へ向かって登る。

家から反対側の階段が木々の間からわずかに見えている。あそこへ繋がっているはずなのだが…

昔は話題はみゆきが振って婦人会の後は駅前のカフェでお茶会だったのだが、最近は誘っても皆在宅ワークだとか何とか。

会社の会議があるのでと帰ってしまうのだ。

「家で会議とか意味分かんないわあ〜あんな小さなモニターで話して会議ちゃんと出来る訳ないじゃない!」と大きな声で独り言を言いながら登っていく。

ちょうど山頂に達するとなかなか景色がよい。

「あら〜ッ!あれがニコタマとムサコかしら?今どきは一軒家よりタワマン買うのがステータスって聞いたわ。

私も子供が大学入ったら家売って引っ越したいわ〜」と眺める。今、思えば息子1人なのだから都心からわざわざこんな田園地帯まで引っ込む必要無かったのだ。

あの頃はとにかく立派な一軒家が欲しかったのだ。

今となっては白いサイディング(外壁)が汚らしい。ひび割れまである!塗り直しすと200万掛かると言われた。それもまた10年後200万だとか?

庭も定期的に入って貰ってるが1回6万円くらいだ。

本当に戸建ては経費が掛かる。

「主人も息子もほとんど居ないし、あんなムダに広い家要らなかったのよね〜掃除するためだけに、私の時間をムダにするだけのために。

今、20年近くを振り返ってもほとんど家を整えていた時間ばかりだ。息子が大学通えるのに入学したら一人暮らししたいとか言ってる。

都心は家賃バカ高いのに!

結局付属高校も郊外なので街といえば町田しか知らないのが歯がゆいのだ。

23区の人からすると町田は東京では無いらしい。

車で買い物するならニコタマかムサコか町田か?駅前は行き過ぎて飽きてしまった。

「まだローン残ってのに〜売るの面倒臭そう!」と眼下に見えてる一際薄汚れた家を見てため息をつく。

10年で塗り直せと言われたのに無視して20年近く塗り直していないのだ。真っ白な家なのに。


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