H大学
「いつも寄付金と食材とお手伝いありがとうございます。上田様。
公くんの定期試験などの成績からH大学の推薦枠が決まりました。
あちらの大学へも必ず入れると伝えますので他大学は絶対受験しないで下さいね。」ととうとう指定校推薦を手に入れたのだ。マーチ内ではかなり評価低いが、公の成績を考えれば妥当だ。
みゆきは先生にお礼を言った。
そして最後の調理手伝いで自分が運んできた10箱のジャガイモの皮むきを食堂のおばちゃんに頼まれる。
八百屋さんはおばちゃんが長年大量仕入れで安い店があるらしく、指定された八百屋で買い運んできた。
10年くらい良く見かけるベテランの食堂のおばちゃんだ。白髪に老眼鏡の腰の曲がった老女だ。
「本当にこの1年良く助けて頂いて助かりましたよ。
ウチは時給が安いからね〜私みたいな年寄りしか働いてなくて。後は日本語話せない子ばかりで。
若いお母さんに助けていただいて、何とか学園の子達のお昼ご飯を出せているんですよ。ありがとう。」とお礼を言われた。
ホッとしてジャガイモを運んだ車に戻る。
なんだか吐き気がする。皮はベトナム人の女の子がピーラーで剥くのでジャガイモの芽取りを専門にやらせてもらった。気持ち悪い。
運転中吐いて、すべって手元が狂う。
みゆきは住宅街のくねくねした道路を曲がりきれず道路の擁壁に激突して呆気なく亡くなった。
運んだジャガイモがまだ青くソラニンが多かったのだ。芽はちゃんと取ったので食堂メニューのカレー・肉じゃが・コロッケ・サラダ付け合わせのマッシュポテトは大丈夫だったが、芽取りを10箱もしたみゆきはソラニン中毒になったまま車を運転して擁壁に激突してしまったのだ。
関西の母親も認知症が入り他の姉妹が大阪でお世話してるのでみゆきの葬儀は家族だけ、清貴と公だけで営まれた。
清貴は仕事が忙しくなったのでまだ仏壇は買ってない。居間の隅に骨壺と位牌と花が飾られているだけだ。
挨拶に来た三笠が悔しそうに仏前で拝む。
「結局、生き霊を捕まえられなかった。お父さん、忙しそうだね?今日も泊まり?」公に聞く。
「はい、大きなプロジェクトを同期と立ち上げたそうで。その方が銀座のマンション住まいなので、仕事が午前様の時は部屋を貸してもらってるようです。」と公も何となく察する。
駅前からバス便無くなる深夜は、郊外の住宅なぞ本当に日本経済左右する金融や官庁勤めには帰宅が苦痛でしかないのだ。
「仕方ないですよ。さすがの三笠さんも生き霊には勝てませんって。気晴らしのお祓いが限界ですって!」いつも編集に追われてヘトヘトの白田さんが嬉しそうに三笠の肩を叩く。
「僕もココまで帰ってると三笠さんの仕事できる時間減るので豊洲の三笠さんの近くに父と部屋借りますよ!」公は白田さんを手伝ってるが間に合わないのだ。
葬儀中も父とこの家の処分を話し合ってた。
「学校は?この家の方が近いだろ?どうするの?」三笠が心配する。
「もう3年ですし、出席日数は足りてるので呼ばれた時だけ行きます。
先生からH大学の指定校推薦取れたと聞いたんですが、僕は渋谷のエスカレーター大学で良いので断りました。先生も内部進学なら許すと。」公は母に申し訳ないなと思いつつも生きてたら絶対許して貰える自信なかったのでホッとした。
銀座のマンションが、金融機関の女性に賃貸してたら雑居房になってたと母から聞きました。
私学の噂も…日本の受験システムついていけない金持ちの子達の救済機関だと。
留学させてAO入試って手もあると…日本の大学はとにかく入るの厳しいと。




