因縁
12時ちょっと前に家に戻った。
まだ母は起きて公を待っていた。本当は三笠さんの事務所で動画編集やってたが、母には内緒だ。
心苦しいが、父には許可貰ってるし…良いか。
母が出してくれた夜食を食べながら、それとなく話を振る。
「あのさ、その人、なんでそんなにお母さんの事恨んでるの?もし、誤解なら今からでも解けないの?」とできるだけ自然に聞く。
「さあ〜、聞いてくれるかなぁ?
その時もちゃんと後で話したのよ。泣いてたけど。
子供達も大泣きしてワザとかな?と思うくらい。」とテレビ見たまま話し出す。
「その子達のお父さんの葬儀だよね?そりゃ、泣くでしょ。」なんか嫌な予感がする。
「子供には分からないだろうけど、後で香典返しをちゃんとしないと◯◯家の皆が恥かくのよ。
だから泣いてボロボロの奥さんの代わりに棺桶やお花とか、花に埋もれてる下さった方の名前が隠れないように写真を色んな角度で撮ってあげたのよ〜
で、目を丸くして呆然としてる奥さんに、『これで後の香典返しは困らないからね!』とウインクしたの。
お母さんは会社のお局だったし、仕事デキでそういう事に気が回るのよ〜」とまるで自慢の様に話した。
「………」まだ17歳の公でも、背筋が凍った。
「こ、子供達は?」思わず聞く。
「1番上の子は中学生の女の子で泣いてなかったのに、急に泣き出して〜つられて他の下の子達も泣き出して〜うちの母が、もう泣きな!いくら泣いてもお父さんは戻ってけえへん!って言ったんだけどね〜」とテレビを見たまま話した。
確かに関西の祖母は、口がキツイ人だ。公もほとんど褒められた事がない。恐いので、お年玉諦めたくらいだ。
ただ、自分が中学生で父か母が死んだら…と想像して
見知らぬオバちゃんやおばあちゃんがそんな振る舞いしたら…と本当に背筋が凍りつくのが分かった。
「その場で不愉快なら怒れば良いじゃん?
後からネチネチと、赦さない!とかろくな死に方しない!とかさあ〜そっちの方が失礼じゃない?」とやっとみゆきが公を振り返ったが、そこに公は居なかった。
「ヤバいヤバい!三笠さ〜ん、やばいですよ〜」と皆で共有してるラインで話した。
「本当にヤバいね。日ごろから知ってる気心しれた親戚なら子供達もアレだけど、当日突然会ったそんな人達に父親の葬儀でそんな振る舞いされたら…
泣いてる子供達の様子を見た母親は…」皆、言葉を継げなかった。
そのまま誰も語らなくなって公は、携帯自体を机に置いた。
夕方行った暗闇坂を眺める。
「どうしたら良いんだろう?僕は…」思わず顔を伏せた。
三笠さんは、山頂のベンチが気になったらしく刻まれた寄贈者名から探したようだ。
バス停前の今は更地になった場所に昔お屋敷があったそうだ。そこの太田道仙と言う人が、お告げがあったと10年前に階段に街灯を付け頂上にベンチを寄贈してくれたそうだ。
ただ街灯の電気代は行政持ちだったのでやがて撤去されてしまった。
太田さんは作ってすぐに亡くなり、家は長く空き家になってたが昨年更地となったと。
造った石材店まで三笠さんは調べたが、造った人は昨年亡くなり代替わりしていた。
「なぜ、親父があの形にしたのか?太田さんの希望だったのかも分かりません。」と言われたよ〜と事務所で三笠さんが頭の後で手を組んだ。
「きっと石材店だから余った墓石を転用したんでしょ?」と編集しながら白田さんが返事する。
「あの…人形はどうしたんですか?」原田君が聞く。
公の話を聞いてから、怖くなったようだ。
「友達の寺でお焚きあげしてきたよ。それも動画に収めてきたから、また編集お願いね。」とデータを渡す。




