依代
「やっとお母さん、人の悪意の怖さが分かったようだね。」公と原田が三笠と動画編集の白田さんと放課後合流した。
三笠は全く動画作成能力は無いので白田さんと組んで配信者になったのだ。
が白田さん1人で撮影編集配信と負担が多すぎる。
ので、スタッフメンバーを探していたのだ。
そこに最初からの三笠ファンでメンバーシップだった原田が動画編集できてドローン撮影もできる公を誘ったのだ。
「僕が夜中の勉強中に窓の外の山の上で見たのは、幻覚では無かったみたいなんです。
暗闇坂の山頂付近に母そっくりの赤ちゃん人形が置かれていると。」公の説明に三笠がニヤッとする。
「君の家を見下ろす小高い山は、依代の配置場所にピッタリだね。その亡くなった従兄弟の奥さん、近くに引っ越してきたんだよね?」と三笠が聞く。
「と、前に話してたのを聞きました。僕にはあんまり話したくないみたいで」と公が話す。
「そりゃ、そうだよ。チラッと聞いただけでも、そりゃ恨まれるだろうって話だったし。お母さんは人に弱みを見せるのは嫌なタイプみたいだしね。」と三笠がしたり顔でうなづく。
「とにかく日が暮れる前に人形を見つけよう。」車で暗闇坂の下に乗り付けた。
「ここなら家の方とは反対だから、お母さんにも見つからないだろう。登ろう。白田くん、撮影始めて。」と三笠が指示する。
「お母さん、人に指図するのが好きだし見栄っ張りだし君も大変だよね。トラブルも多いだろう?」と三笠が結構あけすけに質問する。
「いや、母は全然そういうの家で話さないんですよね。よくブツブツ文句は言ってますが。詳しくは話さないし。」と公は首をひねる。
「自分の親が外の人にどう思われてるかは、結婚するまで男は分からないですよ。
父は父だし。母は母だし。生まれた時から。」白田さんの方が年長なので、そういう事は分かっている。
「確かに!僕も廃寺なるまで親の事なんか気にして見たことなかったもんな。檀家が全て離れて、始めて親のダメさに気づいたよ。
父も母も僕のお受験に一喜一憂してる良い親だと思ってたよ。」と三笠は笑った。
街灯が一つもない鬱蒼とした山の急な階段を登っていくと山頂付近に石のベンチがあった。
思わず機材が重かった白田さんが腰掛ける。
「このベンチ…なんか妙だね。」三笠がしげしげと眺める。
「普通、座る部分と足で長い椅子みたいな形だろ?ベンチって。これは、石の箱型でどこにも穴がない…まるで、いやよそう。」と言葉を止めた。
「もう、言いましょうよ〜三笠さんらしくない!
墓石の中身みたい?でしょ?」とオカルト好きの原田が嬉々として言う。お墓の上の◯◯家と書かれた墓石どけると下には石で囲われた骨壺入れるスペースが有るのだ。
どうも、ソレっぽい。
「ちょっと〜ヤメてくれよ〜」と白田さんがお尻を浮かしてしまう。
公は周りの草むらをキョロキョロ探す。
「母が気色悪くなってそこら辺に投げ出したと言ってたんですが…あっ、あった!」と拾い上げる。
片目にバーベキュー串がグッサリ刺さった赤ちゃん人形だ。かなりの年季ものだ。
「貸して…この髪、本物の人毛だよ!
本気だし、長年調べ上げて準備してるなあ〜引っ越してきたのは、全て準備が整ったんだろね。
多分…君が育つのも待ってたんだよ、その人。」と公を見る。




