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追放された王女の娘は侍女となって家族を取り戻します  作者: 鶴見 日向子


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皆の確信

なごやかな(一部をのぞく)食事風景です

アリスは自分の皿に盛られた焼き魚を一口大に切り分けた。


そして、ハンスの皿に乗せようとする。


すると、後ろに控えていた侍女が、そっと受け取ってハンスの皿へ運んだ。


「この前のお礼です。


あのお魚、本当においしかった。


全部、私が食べちゃってごめんなさい」


アリスは少し照れくさそうに謝った。


「ああ、あの魚はあの川でしか獲れないのですよ。


一匹捕ったところで、そなたを見つけて助け出したものだから、辺りも暗くなってしまってね。


あれしか用意できなかったのです」


ハンスは穏やかに笑う。


「最初は見間違いかと思いましたよ。


流木に女の子が乗って流れてきたのですから。


驚いたなんてものではありませんでした」


ハンスは「あはは」と笑った。


「私、方向音痴なの。


それで崖から川に落ちちゃったの」


アリスは恥ずかしそうに俯いた。


「方向音痴……」


ハンスの頭に、何かが一瞬浮かんでは消えた。


「いい調子ではないか」


王太子が後ろに控えるカーティスへ小声で囁く。


「はい。きっと、よい方向へ向かっています」


二人は小さく拳を合わせた。


その様子を見た王太子妃が、にこりと微笑む。


その頃、カイルは落ち込む王子を慰めていた。


「アリスに結婚を申し込んだのですが、『従兄妹ではだめです』と断られてしまいました」


王子は肩を落とす。


「なぜ、従兄妹ではだめなのです?」


カイルは不思議そうに尋ねた。


アリスが王太子妃になれば、すべて丸く収まる。


カイルは、てっきりそうなるものだと思っていた。


「『方向音痴が子どもに遺伝したら困ります』と言われて……


その時、私も『はっ』としたのです。


子どもを作るということを考えたら……


可愛すぎて、無理だ。


絶対に」


王子は項垂れた。


「私は周囲の期待に応えようと、そればかり考えていました。


でも、アリスの『子どもに遺伝したら』という一言で我に返ったのです。


あの子は本当に賢い。


伯母上そっくりです」


そう言ってから、さらに肩を落とす。


「……でも、やっぱり可愛い。


複雑なのだ」


今にも机に突っ伏しそうだった。


「だめですよ。皆の前です。


はい、お魚が来ましたよ。


お魚はお嫌いですか?」


カイルは慌てて料理を勧める。


「魚……


昔、伯父上が捕ってきた魚が食べたい。


あれは本当においしかった。


伯父上に会いたい。


伯母上にも会いたい」


逆効果だった。


かえって落ち込みが深くなってしまったらしい。


その時、アリスが二人へ目を向けた。


「お兄さま、どうなさいました?


カイル様も、全然召し上がっていませんね」


(そなたのせいだ)


二人は同時に思ったが、もちろん口には出さなかった。


「あのね、このハンスが出してくれたお魚、とってもおいしかったの。


もちろん、このお料理もおいしいけど。


普通に焼いただけなのに、皮がぱりぱりで、中からじゅわっとおいしい汁があふれてきて……


ああ、また食べたくなっちゃった。


ハンス、また機会があったらお願いしますね」


アリスは嬉しそうに笑った。


「それは、どこの川で獲れる魚なのですか?」


カイルは、ここぞとばかりに話題を変えようとする。


「そなた、知っているだろう?


我が国であの魚が獲れるのは、例の川だけだ。


一か所しかない。


あの川は伯父上の命を奪った。


だから、もう食べたくない!」


王子は今度は拗ねてしまった。


逆効果、二連発である。


(どっちなんだよ……)


カイルは頭を抱えたい気持ちを必死にこらえた。


「伯父上様は、川へ流されたのですか?」


ハンスが王子へ静かに尋ねた。


「はい。


崖が崩れて馬車が途中で止まっていたそうです。


伯父上は乗客を一人ずつ助け出して……


最後の一人を助けた後、馬車と共に川へ落ちられたと聞いています」


そう言ってから、王子はハンスの顔をじっと見つめた。


「あれ……?


伯父上?


伯父上に見える……


えっと……この方はいったい……?」


王子が驚きの声を上げる。


「気付くのが遅いぞ」


王太子が笑った。


「生きておられたのだ。


今はハンスと名乗っておられる」


王子の目が大きく見開かれる。


「待ってください。


ということは、この方は……アリスの父上?」


今度はカイルが絶句した。


「あ……


そう言われてみれば、顔がよく似ている。


どうして今まで気付かなかったのだろう……」


「えっ?


お父様?


お父様なのですか?」


アリスも驚きの声を上げた。


「ま、待ってください。


私は記憶がないのです。


何も思い出せません。


本当に、私は皆様の身内だというのですか?」


全員が静かに頷く。


「シャツも、背中の傷も、それに顔も。


何一つ変わっていない」


王太子が静かに言った。


「そうです。


お声も変わっておりません」


王子も続ける。


「何よりも、アリスとそっくりです。


親子だと言われれば納得できます」


カイルも頷いた。


「明日の戴冠式には、こちらの親族として出席していただきます。


その後、お義父様にもお会いください。


案外、お義父様の怒鳴り声を聞けば、記憶が戻るかもしれませんよ」


王太子妃が冗談めかして笑う。


その横で、カーティスは終始、満面の笑みを浮かべていた。


お読みいただきありがとうございます

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