↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された王女の娘は侍女となって家族を取り戻します  作者: 鶴見 日向子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/34

それから・・・

内乱は終わりましたが・・・・

「あれがいなくなってくれて、ほっとはしていますが……」


ヘンリーの表情は複雑だった。


「首謀者たちが全員、煙に巻かれて窒息死した。誰が主犯で、誰が共犯だったのか、それすらわからなくなってしまった」


国王は頭を抱えた。


反乱に関わった貴族の家族や重臣たちは拘束され、牢へ入れられている。


その中には、身重の女性や幼い子どもたちもいた。


「どうしたものだろうか……」


国王の苦悩は深かった。


「あの、よろしいでしょうか?」


カイルが静かに手を挙げた。


「何か意見があるのか?」


「幼い者まで罰するべきではないと思います。何もわかっていないのです。これから教えていけばよいのです。


女子供には『国王に忠誠を誓う』という血判を取る。


それに従う者は領地へ帰す。


逆らう者だけを、そのまま牢へ残すというのはいかがでしょうか?」


カイルは、母親の葬儀で笑ってしまい、国王の怒りを買ったアリスのことを思い出していた。


「主だった貴族が反旗を翻したのは事実です。今後は二度と同じ事が起きないよう、仕組みを整えなければなりません」


ヘンリーも真剣な表情で言った。


その結果、幼い子どもや身重の女性は牢ではなく、別室へ移されることとなった。


一方、反乱に加わった兵士たちに待っていたのは、炭鉱での強制労働だった。


足には鎖が繋がれ、自由はない。


「いったい、なぜこんな事に……」


多くの元兵士たちが嘆いた。


すると炭鉱の責任者が静かに口を開く。


「信じる相手を間違えたのだ。


噂を鵜呑みにし、自分の目で確かめようとしなかった。


国王陛下は暴君ではない。ごく普通に国を治めてこられた。


お前たちは、何を求めて反乱に加わったのだ?」


兵士たちは誰一人、答えることができなかった。


「まあ、運も悪かったのだろう。


真面目に働いていれば、いつかここを出られる日も来るかもしれん。


こちらとしては人手が増えて助かる。働きぶりはきちんと評価する」


責任者は穏やかに笑った。


足に鎖こそ繋がれていたが、待遇は決して悪くなかった。


食事は三食きちんと支給され、休憩時間も設けられている。


「国王陛下に忠誠を誓い、一年間真面目に働いた者は鎖を外してもよいとのお達しだ。


鎖が外れた者には給与も支給される。


せいぜい励むことだ」


元反逆者たちの目に、わずかな希望の光が宿った。


領地の再配分も行われ、反乱に加わらなかった貴族たちの領地は広げられた。


その他にも、内乱の後始末は想像以上に多かった。


いつもおちゃらけているディシスでさえ疲れ切り、軽口を叩く余裕もなかった。


「絶対に国王にはなりたくない」


カイルは心の底からそう誓った。



アルディアの王子は無事に帰国した。


そして改めてアリスと向き合う。


「約束通り、無事に帰ってきた。


私と一緒になってくれないか?」


王子は優しい口調で言った。


しかし、アリスは静かに首を振った。


「なぜだ?」


王子は大きな衝撃を受ける。


「そなたは優秀だ。きっと立派な王太子妃になれる」


王太子と王太子妃もそう勧めた。


だが、アリスは静かに答えた。


「私の方向音痴は、亡き母から受け継いだと聞きました。


もし私に男の子が生まれ、その子も同じようだったら……


将来、国王になった時に困ると思うのです」


「そうとは限らないではないか」


王子は思わず声を上げた。


「ですが、いとこ同士なら血が近くなります。


可能性は高くなるのではないでしょうか」


アリスの瞳は真剣だった。


「私は決して王子殿下が嫌いなわけではありません。


何日も考えて出した結論です。


この気持ちは変わりません」


王子はしばらく黙っていたが、やがて微笑んだ。


「やはり、私の目に狂いはなかった。


そなたは素晴らしい王女だ。


私はそこまで考えが及ばなかった」


王子は穏やかに笑った。


「結婚の話は撤回しよう。


だが、これからも妹としてここにいてほしい。


私は兄として、そなたを見守っていきたい」


アリスは笑顔でうなずいた。


「はい、お兄さま。


ご無事のご帰還、おめでとうございます」


王太子夫妻は、正直なところ二人の間に孫が生まれることを期待していた。


その期待が消えたことに少なからず落胆したが、


「確かに、国王が方向音痴では困るな……」


と納得するしかなかった。


寝台に横たわる国王も、その話を聞いて微笑んだ。


「やはり我が孫は賢い。


何もかも母親譲りだ」



それからしばらくして、国王は退位を発表した。


「後は頼む。


わしは残りの人生を、孫たちと穏やかに暮らしたい」


王太子は深く頭を下げた。


「できる限りのことをいたします」


「それから……そなたも頑固なところが、わしによく似ている。


わしを反面教師にしなさい」


国王は苦笑する。


王太子もふっと笑った。


「血には逆らえません。


もし私が頑固になりましたら、その時は遠慮なく叱ってください」


「いや、わしはもう、そのような爺にはなりたくないのだ」


二人は顔を見合わせて笑った。


やがて即位式が執り行われることとなる。


ベルンシュタイン王国からは、国王の名代としてカイルが参列することになった。


国王はまだ内乱の後始末に追われていた。


ヘンリーは立派にその補佐を務めている。


「やはり、王太子はヘンリーでよい」


カイルは従者として同行していたディシスに言った。


「どちらが王太子になられても同じことでございます。


これからも、お二人で支え合ってください」


ディシスは微笑んだ。


「だが私は、ベルンシュタインへ戻りたい。


アリスの側にいたいのだ」


ディシスの表情が少しだけ変わる。


「……娶りたいということでございますか?」


カイルは目を丸くした。


「いや、兄として側にいてやりたいだけだ」


そう答えながらも、胸が妙に高鳴る。


(いったい、これはどういう気持ちなのだろう)


ディシスは小さく笑ったが、それ以上は何も言わなかった。


二人は馬車でアルディアへ向かっていた。


式典用の礼装や荷物が多く、四頭立ての馬車である。


護衛の騎士も四人付いていた。


「新しい騎士、ハンスと言ったな。


ずいぶん腕が立つそうだな」


カイルが尋ねる。


「はい。


ベルンシュタインでもアルディアでも、おそらく一番腕の立つ騎士でしょう」


内乱以降、ディシスは以前のような軽口を叩かなくなっていた。


(軽口がないと、なんだか調子が狂う)


カイルはそんなことを思う。


「それほどの腕を持ちながら、なぜ今まで埋もれていたのだ?」


「賞金稼ぎをしていたそうです。


以前の記憶をすべて失っており、『自分は犯罪者なのではないか』と思い込んで、ずっと身を隠して暮らしていたそうです。


実際は違うのですが……」


ディシスは遠くを見るような目をした。


「そうではない?


まるで昔を知っているような言い方だな」


「本人の記憶さえ戻れば、万々歳なのですが」


そう言って、ディシスは馬車の窓からハンスの背中を見つめた。


「賞金稼ぎから、いきなり王室付きの騎士に抜擢とは……


陛下も思い切ったことをなさる」


カイルは感心したようにつぶやく。


「陛下も、彼の記憶が戻ることを願っておられるのです」


「そこまでなのか?」


カイルは驚いた。


「はい」


ディシスの返事は短かったが、その目は真剣だった。


確かにハンスは騎士として少しも不自然ではない。


むしろ、誰よりも騎士らしかった。


その馬車のはるか後方から、一騎の馬が静かに後を追っていることを、二人はまだ知らなかった。


ディシスが真面目・・・・後が怖い?


お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。