そして・・・・
援軍到着です
「我らはアルディア王国からの援軍である! ベルンシュタイン国王陛下を支持する。これに反する者は、容赦なく切り捨てる!」
司令官の声が戦場に高らかに響き渡った。
反乱軍は、その一声であっという間に総崩れとなる。
「よかった。これで一安心か……」
カイルがそう思った、その瞬間だった。
一筋の矢が、アルディア王国の王子に向かって放たれたのである。
矢は間一髪のところで外れたが、いつ次の矢が飛んでくるかわからない。
騎士たちは、とっさに王子を囲んだ。
「どこからだ!」
皆が周囲を見渡す。しかし、辺りは木々に囲まれ、敵の姿は見えない。
再び矢が飛ぶ。
一人の騎士が刀でその矢を叩き落とした。
その時だった。
一人の男が馬を走らせ、ある方向へ一直線に駆け出した。
そして木の上へ小刀を投げる。
悲鳴と共に兵士が落下した。
「まだいるぞ! 木の上だ!」
男は木々の間を正確に駆け抜け、石を投げ、枝を切り落とし、木の上へ潜んでいた兵を次々と地上へ落としていく。
「すごい……。いったい、あれは何者なのだ?」
王子は思わず目を見開いた。
一方、他の騎士や兵士たちは、森へ逃げ込む反乱軍を追撃していく。
◇
敗走した反乱軍は、王妃が身を寄せていた屋敷へ次々と戻ってきた。
しかし、その屋敷はすでに正規軍とアルディア王国の援軍に包囲されていた。
「降伏せよ! さもなくば屋敷に火を放つ!」
外から降伏勧告が響く。
◇
「嫌よ! 火なんて放たれたら困るわ!」
王妃が叫んだ。
「しかし、もう逃げ道はございません……」
傷だらけになって戻ってきた兵士が、その場に崩れ落ちる。
「話が違うではありませんか! 騎士は弱いから一般兵だけ気を付ければよいとおっしゃったのは王妃様でしょう!」
王妃は、自分に頭を下げ、何を言われても決して逆らわない騎士たちを「弱い」と思い込んでいたのである。
「あんな騎士たちに負けるなんて、あなたたちの方が弱いのよ! 私のせいにしないで!」
王妃は甲高い声で怒鳴り返した。
「我が娘が、これほど愚かだったとは……」
父である侯爵は頭を抱えた。
「この屋敷には隠し通路がございます。そこから逃げましょう」
屋敷の主が慌てて言う。
「それを早く言いなさい! 案内しなさい!」
王妃は命じた。
しかし――
「王妃様……私はもう歩けません。置いていかないでください……」
侍女の老婆が必死にすがりつく。
「嫌よ。あなたの言う通りにしてきた結果がこれでしょう?
もう、あなたは老い先短いのだから、ここで人生を終えなさい」
その場にいた者たちは言葉を失った。
彼らは皆、
『国王に虐げられている気の毒な後妻』
だと聞かされていた。
しかし実際は、
『後妻に虐げられている気の毒な国王』
だったのである。
人の噂とは恐ろしい。
真実とは違う話ほど、広まりやすいものだった。
その時だった。
「火矢です! 火矢が飛んできました!」
見張りの兵士が叫ぶ。
実際には脅しだった。
しかし、それだけで屋敷の中は恐怖に包まれた。
「私は降伏する!」
「私もだ!」
兵士たちは次々と武器を捨て、屋敷の外へ出ていく。
「さあ、早く抜け道へ!」
王妃は父侯爵、屋敷の主、そして数名の貴族当主と共に、家具の裏に隠された通路へ飛び込んだ。
通路は森へ続いていた。
緩やかだったが、登坂だった。
やっと出口にたどり着き
その扉を開けた、瞬間――
そこには騎士たちが待ち構えていた。
「抜け道のことは、屋敷に残った老婆が話してくれた。
それに、もともと麻薬の密売人からも聞いていたがな」
騎士たちは苦笑する。
王妃たちは慌てて扉を閉め、来た道を引き返した。
「待て! 戻るな!」
騎士たちの叫びも間に合わない。
老婆が、自ら屋敷へ火を放っていたのである。
それを見た兵士たちは、老婆だけでも助けようと屋敷の外へ連れ出していた。
しかし、王妃たちが戻った通路には、すでに黒煙が立ち込めていた。
慌てて出口へ向かおうとする。
だが、狭い通路では互いに押し合い、誰一人前へ進めない。
やがて煙は容赦なく彼らを飲み込んでいった。
通路の出口から黒煙だけが静かに立ち上っていく。
それを見つめる騎士たちは、誰一人として言葉を発することができなかった。
王子に矢が当たらなくてよかった~~(冷汗)
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