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追放された王女の娘は侍女となって家族を取り戻します  作者: 鶴見 日向子


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プロポーズと参戦

「何? ベルンシュタイン国で兵が集められているだと?」


国王代理である王太子の顔色が変わった。


「どういうことだ? まさか、こちらへ攻め込んでくるのではあるまいな?」


「そのようなことはないとは思いますが、とにかく城から集合の鐘が鳴り響いているのでございます」


「念のため、こちらも軍を集めよう」


「その方がよろしいかと」


カーティスも静かにうなずいた。


その知らせは、たちまち城中を駆け巡る。


騎士たちは武装を整え、次々と城外へ出ていく。


町の見回りをしていた兵士たちも続々と城へ集まってきた。


王子も甲冑を身にまとい、出陣の支度を整えていた。


「アリス。もし私が無事に戻ってきたら、結婚を考えてくれないか?」


王子は真剣な眼差しで言った。


「私と家族になるのが、一番平和だ」


そう言って、アリスをそっと抱きしめる。


アリスは何も言えなかった。


「ご武運を」


そう口にするのが精いっぱいだった。


やがて軍は整然と列をなし、ベルンシュタイン王国へ向かって出発した。


王太子妃は、息子の無事を祈り続けている。


一方、王太子は落ち着き払っていた。


「全面戦争など、絶対にあり得ない。あちらにはカイルがいる。ディシスもいる。


戦争を仕掛ける理由がわからない。きっと、何かが起きたのだ」


「先触れの者が状況を調べに向かっている。


それから行動を決めよう」


◇


その頃、カイルは必死に馬を走らせていた。


「事情をアルディアへ知らせよ」


それが国王からの命令だった。


途中で、アルディアから来た先触れの騎士と出会う。


「ベルンシュタインで大規模な内乱が起きました。


それを鎮圧するため兵を集めています。


決して他国へ攻め込むためではありません。


ですが、できれば援軍をお願いしたいのです」


カイルは事情を説明した。


騎士はすぐにうなずく。


「わかった。


カイル王子はこのまま王太子殿下へ直接知らせてください。


私は軍司令官へ伝えます」


「わかった。お互い頑張ろう」


二人はそこで別れた。


カイルは城へ着くと、すぐに王太子への面会を願い出た。


「残念ながら、寝返った貴族の数が想定以上でした」


唇を噛み締めながら報告する。


「援軍をお願いしたく参上いたしました」


「一体、なぜだ?」


王太子は目を見開く。


「町で『カイル王子は偽物だ』と吹聴して回る者がおりました。


『現国王を処刑し、ヘンリー王子を国王に』と煽り、それを信じた民衆が反乱軍へ加わっております。


騙された一般市民まで切り捨てるわけにはまいりません。


我が正規軍も頭を抱えております。


数で押さえるしかありません。


そのためには、アルディア王国のお力添えが必要なのです」


カイルは悔しそうに拳を握った。


ようやく王子としての役目を果たし始めたというのに、その結末が内乱だった。


「よく知らせてくれた。


軍はそのままベルンシュタインへ向かわせる。


そなたは指揮官と合流してくれ」


「かしこまりました」


立ち去ろうとした、その時だった。


アリスが駆け寄り、カイルの腕をつかむ。


「お兄さま、絶対に生きて帰ってきてください」


目は真っ赤だった。


カイルはアリスを抱きしめる。


「大丈夫だよ。


心配しないでくれ。


いい子で待っているんだぞ」


昔と同じように、優しく頭をなでる。


「時間がない。もう行く。


城から出てはいけないよ」


そう言い残し、カイルは走り去った。


◇


「皆の者、落ち着いてくれ。私はヘンリーだ!」


ヘンリーは馬上から叫んだ。


「偽物だろう!」


群衆から怒号が飛ぶ。


「無礼であるぞ!


この方こそ、本物のヘンリー王子だ!」


側にいた兵士が声を張り上げる。


「私は兄と名乗るカイルという男に、王太子の位を奪われようとしている。


だが、あれは真っ赤な偽物だ!


私こそ本物のヘンリーであり、正当な王太子である!


どうか力を貸してほしい!」


民衆は顔を見合わせた。


「王子自らがおっしゃるのなら……」


そう思い始めた、その時だった。


一人の中年の男が馬に乗って現れた。


「ヘンリー王子とやら。本物だという証拠を示されよ!」


ヘンリーは一瞬たじろぐ。


「証拠?


私自身が名乗っているのだ。間違いないではないか」


男は静かに笑った。


「私は本物のヘンリー王子と城でお会いした。


そなたは真っ赤な偽物だ」


民衆がどよめく。


「本物の王子なら、兵士ではなく騎士を従えているはず。


その者は兵士であって騎士ではない!」


そう言って、ヘンリーの側に立つ兵士を鋭く見据えた。


「そして、そなたが偽物である決定的な証拠を教えてやろう」


男は口元をゆがめた。


「ヘンリー王子は馬が苦手で、乗馬ができないのだ!」


民衆は一斉に目を丸くする。


「だから私が『代理を頼む』と依頼された。


皆の者、こちらへ!」


男が叫ぶと、周囲から騎士たちが集まり、男を取り囲んだ。


「本物なら、これだけの騎士が護衛につく。


付き添いが兵士一人だけなど、あり得ない」


その瞬間、騎士たちは一斉に剣を抜いた。


偽ヘンリーは慌てて逃げようとしたが、馬上で体勢を崩し、そのまま落馬する。


騎士の一人が馬を降り、あっという間に取り押さえた。


「本物の騎士だ……」


民衆は思わず息をのむ。


立派な甲冑、整った装備、何より漂う威圧感。


一般兵とはまるで違っていた。


「皆の者、これでわかったであろう!


騙されるな!


カイル王子は本物の第一王子だ!


国王は皆を欺いてなどいない!


また偽物が現れるかもしれぬ。


十分注意し、できる限り家の中へ戻ってほしい。


このことを周りの者にも伝えるのだ!」


男が叫ぶと、人々は次々とその場を離れていった。


「次の場所へ向かうぞ!」


「はっ!」


偽ヘンリーは縄で縛られたまま馬の後ろへ乗せられる。


「動けば斬るぞ」


騎士が鋭く睨みつけた。


「ひぃぃっ!


私は金を渡され、言われた通りにしただけでございます!」


「黙れ!」


騎士は一喝する。


しばらく走ると、待機していた兵士へその男を引き渡した。


「王子を名乗った。罪は重い。


牢へ入れろ」


そう言い残し、騎士たちは再び中年の男の後を追って走り去った。


その頃、カイルはアルディア軍へ追いつき、そのままベルンシュタインへ到着する。


「城方面へお願いします! こちらです!」


カイル自ら先頭に立ち、アルディア軍を率いて城近くで交戦中の反乱軍へ横からなだれ込んだ。


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