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追放された王女の娘は侍女となって家族を取り戻します  作者: 鶴見 日向子


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再会と内乱

ディシスのセリフからです

「声もそのままです。なぜ、賞金稼ぎなどをされているのですか?」


男は不審そうな顔でディシスを見た。


「何か言いたげだな。後で聞こう。……やつが出てきた」


男はしばらく様子をうかがうと、あっという間に相手の首筋へ手刀を当て、気絶させた。


それを見ていた兵士たちが一斉に駆け寄り、男を縄で縛り上げ、護送馬車へ放り込む。


「今回も助かった。見事な手刀だ。これは礼金だ」


「ありがとうございます」


司令官が男へ金貨を渡した。


ディシスは司令官へ詰め寄る。


「どういうことなのですか?」


「え? 騎士様?


騎士様がなぜこのような場所へ?


ここは我々軍の管轄です。騎士様が口を出されることではございません」


その隙に男は立ち去ろうとした。


しかし、ディシスはその腕をがっちりとつかむ。


「あなた様、生きておられたのなら、なぜ国へ戻られなかったのです?


今まで一体、何をしておられたのですか?」


「騎士様、このハンスをご存じなのですか?」


司令官が不思議そうに尋ねる。


「もちろんです。


我が国の国王陛下の命の恩人。


我が国で子爵に取り立てられた方です。


だいぶ前に川へ落ち、亡くなられたと聞いておりました。


間違いなくご本人です」


男は首を横に振った。


「人違いでしょう。


私はそのような身分のある者ではありません」


そう言ってディシスの手を振り払おうとする。


「私がリヒャルト様を忘れるはずがありません」


ディシスの表情は真剣だった。


「それは思い違いでしょう。


私がそのような身分のある人間であるはずがありません。


見てください。この背中の傷を」


そう言って、男は自ら背中を見せた。


「騎士以上の身分の者に、このような傷があるはずがない。


私は自分が何者なのか思い出せません。


ですが、このような傷があるということは、堅気ではなかったのでしょう」


ディシスは思わず息をのむ。


「その傷こそ、あなた様がリヒャルト殿である証拠なのです」


二人のやり取りを、軍司令官は目を丸くして聞いていた。


「では……ハンス殿は、お尋ね者ではないのですね?」


司令官の顔が明るくなる。


「お尋ね者どころか、アルディア王国王女殿下の配偶者です。


もっとも、この国ではあまり知られておりませんが」


ハンスは驚きに目を見開いた。


「そんな馬鹿な……。


私がそのような身分であるはずがない。


気づいた時には川岸に立っていた。


それ以前の記憶はすべて失っていた。


それからは賞金稼ぎで何とか生活してきた。


私が王族の一員だという証拠が、他にもあるのですか?」


ハンスの目は鋭かった。


「とにかく私と一緒にアルディア王国へ参りましょう。


娘のアリス様のお顔をご覧になれば、思い出されるかもしれません」


「そう言って、私を城へ突き出すつもりではないのか?」


「そんなことをするくらいなら、最初から話しかけたりはいたしませんよ」


ハンスは静かに首を振る。


「今の私は何もわからない。


そんな状態で城へ行くことなどできない」


その時だった。


王妃が逃げ込んだ貴族の屋敷へ、次々と馬車が到着していた。


「後でゆっくり話しましょう。


逃げないでくださいね」


ディシスはハンスへ言った。


「王妃がカイル王子暗殺を企てました。


その後、この屋敷へ逃げ込んだのです。


もしかすると、背後で糸を引く者たちがいるのかもしれません」


軍司令官の顔色が変わる。


「私は国王陛下へ知らせてきます。


そなたたちは、この屋敷を見張っていてください」


「かしこまりました」


司令官は敬礼した。


「ハンス殿もお願いします。


賞金稼ぎとして考えれば、褒美のたんと出る仕事です」


ディシスは深々と頭を下げた。


「わかった。


『仕事』として請け負おう」


「馬を一頭貸してください。


徒歩で追ってきたものですから」


ディシスは馬を借り、そのまま城へ駆け戻った。



ディシスは国王へ報告した。


「王妃はある貴族の屋敷へ入りました。


しかも、そこへ次々と貴族たちが集まっております」


「食べられたんじゃなくてよかった」


ヘンリーがほっと胸をなで下ろす。


ディシスは苦笑した。


「王妃ではなく、あの老婆を懐柔したのです。


王妃へいろいろ吹き込んでいた黒幕が、あの老婆だとわかりましたので」


「『この薬ならカイル様も言うことを聞くようになりますよ』と教えて差し上げました。


「小麦粉にほんのちょっと薬を混ぜた物を渡しただけなのですが……。まさか、全部入れるとは思いませんでした」


「まあ、おかげで自ら出て行ってくれて助かったが」


ヘンリーは安堵したように息を吐く。


そこへ侍従が駆け込んできた。


「国王陛下、軍司令官からの使者が参っております」


「わかった。通せ」


国王が謁見の間へ向かうと、そこには庶民姿の男が跪いていた。


その横には軍服姿の兵士もいる。


国王は不思議そうに見つめた。


その横で、ディシスだけが静かに笑みを浮かべている。


「顔を上げよ」


その瞬間、国王の目が見開かれた。


「私は……夢を見ているのであろうか」


国王は目をこすった。


そして跪く男へ歩み寄り、強く抱き締めた。


「生きていたのだな……。


滝へ落ちたと聞いた。


まさか生きていたとは……」


国王の目から涙がこぼれ落ちる。


ハンスは突然のことに固まったまま動けなかった。


「陛下、今はそれどころではございません」


側にいた兵士が声を上げる。


「反乱でございます。


貴族たちが結託し、兵を集めております。


今すぐこちらも迎え撃たねばなりません」


兵士の目は真剣だった。


「総勢三千ほどと思われます。


ほとんどが寄せ集めですが、油断はできません」


ハンスもようやく我に返り、国王へ訴えた。


ディシスが首をかしげる。


「なぜ、ハンス殿が使者として来られたのです?」


「司令官殿から命じられたのです。


『本当にリヒャルト様なら、国王陛下とも面識がある。確認してこい』と」


「ああ、なるほど」


ディシスは納得したようにうなずく。


「ですが、結局は思い出せませんでした」


少し残念そうに言う。


ハンスは静かにうなずいた。


「陛下、この方は記憶を失っておられます。


どうか、そのおつもりで接してください」


ディシスが国王へ告げる。


「わかった。


今は再会を喜んでいる場合ではない。


こちらも直ちに兵を集めよ!」


国王の命令とともに、集合を告げる鐘が城中へ鳴り響いた。


ハンスの正体判明

お読みいただきありがとうございます

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