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追放された王女の娘は侍女となって家族を取り戻します  作者: 鶴見 日向子


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10/18

お城へ

アリスが目を覚ますと、いつの間にか目の前に騎士たちが立っていた。


「きゃあああああ!!」


アリスが悲鳴を上げると、騎士たちは慌てて部屋から飛び出した。


同行していた女性兵士に着替えを手伝ってもらい、アリスはようやく外へ出る。


ハンスに借りた服は小さく折りたたみ、胸に抱え込んでいた。


「あの……私を助けてくださったハンス様は?」


「いや、そのような者はいなかったぞ。私たちは、夜盗を捕らえた兵士たちから知らせを受け、ここへ来たのだ」


「そんなはずはありません。私を助けてくださった方に、きちんとお礼を申し上げたいのです」


指揮官が呼ばれ、事情を聞かれた。


しかし、彼は静かに首を横へ振る。


「そのような男は存じません。たまたま通りかかった男が、『小屋で娘が眠っている』と我々に伝え、鍵を渡して去っていっただけです」


それは、ハンスとの取り決めだった。


自分の身元がはっきりするまでは表に出さない。


その代わり、軍の仕事を手伝う。


「悪事を働くような男には見えぬのだがな……。だが、あの背中の刀傷が気にかかる」


指揮官は小さく息をついた。


「もし他国のお尋ね者だったとしても、恩赦を願い出よう」


そう心に決めていた。



アリスはそのまま城へ連れて行かれた。


そこで王太子夫妻と面会することになった。


部屋には、父である公爵も駆けつけていた。


「無事でよかった。本当に無事でよかった……!」


公爵は人目もはばからず、大声で泣いた。


しかし――。


「無茶にもほどがある!


馬で城まで向かうには、相応の脚力を持つ馬でなければならん。


あの小柄な馬で行けると思っていたのか!」


泣いた後に始まったのは、説教だった。


「だいたい、そなたは昔から方向音痴で、とんでもない場所へ行っては村人に助けられていただろう。


身の程知らずにもほどがある!」


そこへ王太子が口を挟んだ。


「では、この娘はアリスちゃん本人で間違いないのですね」


「あ、はい。大変失礼いたしました。間違いなくアリス本人でございます」


公爵は慌てて膝を折った。


「アリス。こちらはそなたの叔父上だ。


亡きエレナ王女の弟君で、この国の王太子殿下であらせられる」


アリスは目を丸くした。


「母上は王女だったのですか?」


どこかの貴族の娘だとばかり思っていたのである。


「それとなく、今まで王太子ご夫妻の話題は出していたつもりだったのだが……」


公爵は遠い目をした。


「幼かったとはいえ、お母上の遺言を言葉どおりに受け取った方ですものね」


王太子妃もまた、遠い目をする。


「それでだ。そなたは事実上、追放の身だ。城の中へは入れないことは知っているな?」


王太子が尋ねる。


「はい、存じております。


ですので、カーティス様のお屋敷へ突撃して、何とか裏で手を回していただき、城へ潜り込もうと考えていました」


アリスの顔は、いたって真面目だった。


「うーん……カーティスより、私を頼ってほしかったのだが」


王太子は苦笑する。


「まあ、せっかく城へ入れたのだ。


今日から女官見習いとして、私たちの側にいなさい。


身元保証のことは心配いらない」


「お城に住めるのですか?」


アリスの目が輝いた。


しかし、すぐにうつむいてしまう。


「計画って、立てても全然役に立たないのですね……。


少しずつ実行するつもりだったのに。


こんなにあっさり実現してしまうなんて」


公爵は、アリスの部屋に広げられていた地図を思い出した。


「そなたは、まず地図を正しく読めるようになりなさい。


出発地点の印からして、まったく違う場所だったぞ」


「え? そうなのですか?」


アリスはきょとんとする。


「それに、なぜ川の方の道を選んだのだ?


左の道の方が、はるかに広かったであろう」


「何となく……右へ行った方がいいような気がしたのです」


アリスはさらに首をかしげた。


公爵は深くため息をつく。


「殿下。このような娘でございますので、私も妻とともに城へ戻りたく存じます。


とても殿下だけでは手に負えないと思います……」


「あなた、そういたしましょう。私も少し自信がなくなりました」


王太子妃も遠い目をした。


「そうだな。公爵が側にいてくれれば心強い。


カイルのこともある」


アリスの目が大きく見開かれた。


「お兄様! お兄様がどうしたのですか?」


そう。


アリスは、ただカイルに会いたい一心で無茶をしたのである。


「カイルは、今、隣国にいる。


いろいろあってな。簡単に説明するのは難しい」


王太子はため息をついた。


「しばらくは城の客間で寝起きしてくれ。


そなたの部屋は近日中に整える。


公爵も登城の準備を頼む。


それまで、何とかこの子の面倒は見る」


「かしこまりました。それでは、よろしくお願いいたします」


こうして、アリスのアルディア城への「潜入」は成功したのだった。


お読みいただきありがとうございます

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