表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/17

14. 影刃団長の試練

地下訓練室には、かすかな灯りだけが揺れていた。

壁には短剣、手裏剣、縄、毒針――暗部専用の武器がずらりと並んでいる。


影刃団長は一振りの短剣を雪誠の足元へ放り投げた。


「拾え。」


雪誠は無駄のない動きで屈み、短剣を手に取る。


影刃団長は腕を組み、気だるげな声で言った。


「最初に言っておく。俺はお前に“殺し方”を教えるつもりはない。

教えるのは――必要な時に“生き残る方法”だ。」


雪誠は答えず、ただ短剣を握りしめた。


次の瞬間、影刃団長が動いた。

黒い影のような速さで。


短剣が雪誠の喉を狙う――

だが雪誠は身をひねり、手首を返し、即座に反撃。


金属がぶつかる鋭い音が響く。


影刃団長の目が細く光った。


「反応は悪くねぇ。」


彼はさらに速度を上げる。

攻撃はより鋭く、より殺意を帯びていく。


短剣、肘打ち、足払い、暗器の奇襲――

どれも一撃で命を奪う技。


だが雪誠はすべて受け止めた。


それは本能。

それは一年間、暗闇で独学した身のこなし。

そして何より――


エリスを救うために磨き上げた“生きる意志”。


影刃団長は戦いながら笑い始めた。


「ハハッ……いいぞ!もっと来い!」


十数分の激しい攻防の後、

影刃団長が手を上げて止める。


雪誠も即座に動きを止めた。


影刃団長は彼を見つめ、満足げに口角を上げる。


「坊主、知ってるか?」


彼は雪誠の肩を軽く叩いた。


「弟子は何人も取ってきたが……

“初日”で俺を本気にさせたのは、お前が初めてだ。」


雪誠は額の汗を拭い、静かに言う。


「強くなるために来た。

彼女を救うために。」


影刃団長は笑った。

嘲笑ではない。純粋な称賛だ。


「殺すためじゃねぇからこそ……

お前は殺し屋よりよっぽど怖ぇよ。」


彼は壁からより鋭い短剣を抜き、雪誠に差し出す。


「この短剣は今日からお前のものだ。

――その価値がある。」


雪誠は受け取り、目に喜びはなく、ただ決意だけが宿っていた。


影刃団長は心の中で呟く。


この子は……いずれ暗部最強の“影”になる。


初任務

夜は深く、王都外れの森は霧に包まれていた。


影刃団長と雪誠は木の上から、

下にある廃屋を見下ろしている。


中には、王国の治癒薬の処方を盗み、

騎士を三人殺した裏切りの魔法使いが潜んでいた。


影刃団長が低く言う。


「任務は簡単だ。

中に入り、処方を奪い返す。

もし抵抗するなら――」


彼は雪誠を見る。


「殺すかどうかは、お前が決めろ。」


雪誠は黙って頷いた。


影刃団長は心の中で思う。


(初任務だ……緊張して動きが固くなるはず――)


だが次の瞬間。


雪誠の姿が消えた。


音もなく。

気配もなく。

まるで夜に溶けたように。


影刃団長は目を見開く。


「……俺より暗部らしいじゃねぇか。」


廃屋の中

裏切りの魔法使いは処方を眺めながら呟いていた。


「これを帝国に売れば、大金持ちだ……」


パチン。


蝋燭が突然消えた。


部屋が闇に沈む。


魔法使いは慌てて立ち上がる。


「だ、誰だ!?」


返事はない。


ただ、背後を冷たい風が通り抜けた。


火球を放とうとした瞬間――

手首に短剣が“軽く触れた”。


斬られたわけでも、刺されたわけでもない。


ただ触れただけ。


だが魔力が一瞬で崩壊した。


「なっ――」


次の瞬間、短剣が喉元に当てられる。


銀髪の少年が立っていた。

その瞳は氷のように冷たい。


「処方。」


魔法使いは震えながら巻物を差し出す。


雪誠は受け取り、背を向ける。


助かったと思った魔法使いが息を吐いた瞬間――


雪誠が足を止めた。


「お前は……騎士を三人殺した。」


魔法使いの顔が真っ青になる。


「ま、待て!俺は――」


雪誠は振り返らない。


ただ静かに言った。


「治す価値はない。」


短剣が一閃。


魔法使いは音もなく倒れた。


痛みもない。

苦しみもない。

ただ、終わった。


任務完了

雪誠が廃屋を出ると、影刃団長が木にもたれて待っていた。


「処方は?」


雪誠は巻物を差し出す。


影刃団長は受け取り、彼を見つめる。


「……何秒だ?」


雪誠は少し考えて答える。


「たぶん……十秒。」


影刃団長は三秒黙り――

そして爆笑した。


「ハハハハ!Q のジジイ、宝を拾ったな!」


彼は雪誠の肩を叩き、興奮気味に言う。


「坊主、分かってるか?

初任務でここまでやれる奴なんて――

王国中探してもお前だけだ。」


雪誠は表情を変えない。


「まだ足りない。

まだ……彼女を救えない。」


影刃団長の笑みが消え、真剣な目になる。


「なら、もっと強くなれ。

お前みたいな怪物級の天才……

俺が最高の“影”に仕上げてやる。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ