12. 崩れゆく美しさ、揺らがぬ想い
エリスの病状は、この一年で急速に悪化していた。
ただの虚弱ではない。
肌には暗い斑点が浮かび、かつて繊細だった顔立ちはむくみ、ゆがみ始めていた。
この病は――
命だけでなく、美しささえ奪っていく。
侍女が彼女の顔を拭いていると、エリスは鏡の中の自分をじっと見つめ、長い沈黙の後で呟いた。
「……すごく、醜くなった。」
その声は、今にも壊れそうなほど弱かった。
侍女は慌てて言う。
「お嬢様、そんなことありません。今でも――」
「慰めなくていいの。」
エリスはかすかに笑った。
その瞳は、深い影を落としている。
彼女はそっと手を上げ、頬に新しく浮かんだ黒い斑点に触れた。
「……雪誠。
もしかして……これが理由で、会いに来てくれないのかな。」
侍女は言葉を失う。
エリスは視線を落とし、自嘲気味に微笑んだ。
「一年も来ないなんて……きっと、怖くなったんだわ。」
彼女は知らない。
雪誠が王都で必死に治癒魔法を学んでいることを。
昼夜を問わず練習し、休むことすら忘れ、
ただ彼女を救うためだけに生きていることを。
彼女の世界では――
雪誠は突然姿を消した。
別れもなく、理由もなく、約束もなく。
それでも。
エリスは、いなくなった彼を愛し続けていた。
胸元をそっと押さえ、痛みに耐えながら呟く。
「雪誠……
たとえ、あなたが私を嫌いになっても……
私は、あなたが好き。」
一粒の涙が、
醜く変わってしまった頬を静かに伝い落ちる。
「もし……いつか戻ってきてくれたら……
どうか、私を見て……驚かないでほしい。」
彼女はそっと目を閉じた。
呼吸は弱く、細く、今にも途切れそう。
それでも心の奥では、ただひとつの言葉だけが繰り返されていた。
「……待ってるよ。」




