Ⅲ すべては彼女に返る(2)
「……ボク、分かったんだ」
グラヴィエは悲痛に喘ぎ、頭を抱え、足元はふらふらと覚束ない様子だ。
そんな彼にヘルツはそっと近づく。
「ヘルツ!」
「馬鹿者!」、「戻れ!」、「駄目だ!」と、それぞれが叫んだが、それでも彼はしっかりとした足取りでグラヴィエへと向かう。
「あなたは、愛しているんだね。アイヘルって人のことを」
「ア……イして?」
ヘルツが胸に手を当てて、そう言うと、グラヴィエは眉を寄せて、個化する。
「ボクも、ボクもクロイツを愛しています。だから、彼の愛する、この世界を壊さないで」
そう高らかに宣言したヘルツは微笑んでいた。
唐突に天井から暁光が射すと、ヘルツの姿を神々しく浮かび上がらせる。
グラヴィエはその目映い姿に目を細めた。その禍々しく輝る瞳から既に涙は消えている。
グラヴィエの黒ずんだ、瞳の角膜が純白に戻った。
洞窟を埋め尽くさんばかりに張り巡らせれていた殺気が融解して行く。
「――アア。ああ。戻って、くれたんだね、アイヘル」
グラヴィエはそう言って目を細めると、その目映いばかりの光に静かに手を伸ばした。
しかし、先ほどの衝撃で洞窟が、音をたてて崩壊を始めている。
「崩れるぞ!」
ネージュが叫ぶと、どこからか出現したフォーゲルが、フレーテをとヘルツを鷲掴みにして、脇に抱え込んだ。
「待避しろ、急げ!」
グラースが、ネージュを抱え上げると叫んだ。
全員、とにかく来た道を走り戻った。階段を駆け上がり、ミルヒが息苦しさに喘ぐ。
途中ヘルツが「グラヴィエ」と叫んだが、洞窟が壊する音でかき消された。




