Ⅲ すべては彼女に返る(すべてはかのじょにかえる)
「――我レはグラヴィエ、復讐者。
今、王に汚さレた、アイヘルの汚名ヲ返上すル!」
男、グラヴィエが鬼気として叫ぶと、物凄まじい気迫で誰一人として動けなかった。
「貴様かラだ!」
グラヴィエがフレーテに片手を伸ばすと、少女は頭を抱えてうずくまった。
その時、ヘルツが少女の前に白い髪を揺らしながら体を踊らせた。
震えるその手に短剣を掲げている。
それを見て、何を思ったのかグラヴィエは伸ばした手を引き戻した。ヘルツは叫ぶ。
「やめてください、ボクの妹を傷つけないで!」
その必死の懇願に、グラヴィエは苦悶の表情を浮かべてたじろいだ。
「ぐっああ、アいヘルッ!」
顔を手で覆い、グラヴィエは苦しい声を上げた。
あふれ出た涙が頬を伝い、光を帯びて輝きを放つ。
「今だッ!」
ネージュが動いた。
残っていた魔力をすべて手に集結し、グラヴィエに光線を放つ。
それは今までに放出したものとは比べものにならない威力であり、その凄まじい魔力消費量で地面に片膝を付く。
光線はグラヴィエに命中し、その姿を消失させた。その様に見えた。
目映い光が消え去ると、グラヴィエは立ち尽くしていた。ただその手の中にあった頭蓋骨だけが消失している。
「ああアアああアああああ、アいヘルうううう!」
先ほどとは比べものにならない殺気、いや、狂気だった。
目を開けていられない程の戦慄が襲いかかる。
あまりの衝撃で、洞窟の壁にいくつもの波状の亀裂を走らせた。
「こ、殺しテやる! 全員、いヤ、王。国――魔王ッ、あああああ、もう世界ごト滅ぼシてくレるわッ!」
地響きをたてながら地面が振動すると、天壁の一部が倒壊して、氷柱状の岩が降り始めた。
グラヴィエは苦みや痛みの混ざり合ったのような表情でもがき喘いでいる。
「くそ、これでは迂闊に近付けん、どうすればっ」
ネージュが苦肉の表情で呟くと、グラースが双剣の杖を握り締めた。
「ヘルツ、今の内に皇女と逃げろ!」
ミルヒが叫ぶと、ザイデルも背負っていた槍に手を掛ける。
「――皆、待って!」
その様子を見ていたヘルツは手にしていた短剣を投げ捨てた。
それは地面に落下すると大きな音を立てる。




