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祖は欣幸を得るか?(5)

《ばいばい~》


 リーニエはノヴァの真似をしてそう言うと、クラウンを掴んだ手に力を加えた。



 呆気に取られていたトロイアが動く前に、クラウンの頸から上が、その力に耐えきれず弾け飛ぶ。


 司令塔を失った首から、鮮血が吹き出すと、糸が切れた操人形のように体が力なく倒れた。



 続いて倒れたその体と頭部が、霧のように消失し、残った鋏だけが静かに地面に落下した。


 一瞬の出来事に全員が息をのむことしかできない。ただ慨然とその状況を凝視していた。


《その身も妾の糧となった。喜べ。これで、ペルレ、共々ずっと一緒じゃ。


 ――さぁて、次は誰の番か、汝かぇ?》


 リーニエが笑って、次に目線を向けたのはネージュであった。リヒトが銃を構えるより先に、悪魔はすでに彼女の背後にいる。



《汝も『ばいばい~』ジャ!》


 しかし、すでに戦闘態勢に入っていたネージュが振り返り、片手を掲げた方が早かった。


 その右手から淡い光が生み出されると、リーニエは目を細めた。


 ネージュの手平から目映い閃光が放たれた。



 それは大きな光線へと変わり、リーニエを襲う。彼女は少し後方へ下がったが、いくら距離を取っても光線の速度は変わらない。



 それは見事に目標へと命中した。


 いや、違う。


 その様に見えただけで強い光が薄れると、リーニエが涼しい顔でネージュを見つめていた。


「くッ!」


 ネージュが苦声を上げると、リヒトが賺さず銃弾を放った。しかし、それもリーニエの前で全て弾き飛ばされた。



「どういうことだ」


 ネージュが困惑の声を漏らすとトロイアが叫ぶ。


「魔力を弾く、防御壁シールドだ。俺は前にも見たことがある!」


 リヒトは構わず銃を撃ち続けるが、防御壁がそれを次々に弾く。


《――アア。成り損無いが、鬱陶しいのぅ》



 リーニエはそう呟くとリヒトに視線を移し、手を振り上げた。


《五月蝿い、はえは叩き潰さねばっ》


 そう言うとリーニエの手の平から、淡い閃光が浮かび上がる。

 それは先ほどネージュが放った光線であった。


 閃光は光速でリヒトに飛来した。目を見開いたネージュは彼の名を絶呼する。



 しかし、悲嘆の声を上げたのはリーニエだった。


《――痛わしや、祖様よ。何故に出来損ないを庇うのか……》


 リヒトを庇うように飛び出してきたトロイアがその光線を受けていた。


 彼の腹部は赤色に染まっている。口から吐血して膝を付いた。



 その時、フォーゲルが動いた。リーニエに向けて疾走する。


《アア、嘆かわしや、嘆かわしや。何故、兄妹で争わなければならぬのかや?》



 リーニエは憂いを帯びた声でそう言うと、ふわりと木の葉を舞い上げて姿を消した。


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