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祖は欣幸を得るか?(そはきんこうをえるか?)


 木漏れ日が、大地に淡い光を落としている。その森の中を五人の影が進んでいた。


 深緑の爽やかな香りが辺りには充満していたが、それによってネージュは癒されるどころか苛立ちを募らせていた。


首都サナアトにはまだ着かんのか」


 そう言って彼女は、不満そうに足元に転がっていた植物の実を蹴飛ばす。


 ルクライアから北へ進んで四日が過ぎていた。途中小さな村々で休憩を取ったせいもあるが、この進行速度は遅いぐらいである。


「すみません。ボクがついて行けないせいで」


 マントのフードで顔を覆ったヘルツが、苦悶の声をあげた。


 ネージュとリヒトは魔力が続く限り瞬足で駆けることが可能である。

 フォーゲルはミルヒを抱いて飛び上がることができたが、ヘルツまで抱き上げて長時間飛行するのは難しかった。


 魔人の割に人並みにしか走れない少年を一人で残していく訳にもいかず、仕方なく徒歩でのろのろと進行していたのだ。


 ミルヒが柔らかい表情で「仕方ないさ」と言うと、隣にいたフォーゲルが瞳を瞑って同意する。


 そこでネージュは尖らせていた口を開く。


「二人は先に行っても構わんのだぞ?」


「それだと他のもんが城に入れんようになるだろ? 向こうで待つなら同じことさ」


 ミルヒはそう言って再び柔和な笑みを浮かべた。ネージュはかなりイライラとしていたが、少女は全くその素振りをみせない。本当に器の大きい娘だと思う。


 先陣を切っていたリヒトが振り返った。


「城に入った後はどうするつもりだ」


 そう問いかけると、ミルヒは瞳を鋭く輝かせる。


「聖城内の研究施設ってやつを目指す。最高責任者って奴を引っ張り出して話をつけにゃあならん」


 ネージュは退屈だと小枝を投げていたが、少し前方に木々の隙間から蔦の絡まった家の木屋根を発見した。


「おい、あそこに住居があるようだぞ」


 半日以上歩き続けているヘルツが、荒い息をあげていた。「少し休ませて貰おう」とネージュは、その小さな肩にそっと手を掛ける。


 その刹那、高い咆哮が森林に響き渡った。それに続いて鋭利な短刀ナイフがフォーゲルめがけて飛来する。


 しかし、フォーゲルは全く動じない。無表情でその短刀を片手で素早く弾き飛ばした。


 そこに怒号をまき散らして突進してくる影があった。


 それは白髪交じりの黒髪を振り乱した奇妙な風貌の男である。黄金に輝く金属の右手には短刀を手にしていた。


 男の動きは素早く、フォーゲルが避けた場所に的確にそれを投げつけてきた。


 その短刀の一本が、ミルヒの方へ弾き飛ばされる。彼女が驚いて声を上げるとフォーゲルが反応した。


 少女に向かっていた短刀を確実に地面にたたき落とす、その隙を敵は見逃さなかった。


 鋭敏な動きでフォーゲルの背後を取ると、長い髪を掴み自分の腕に巻き上げた。


 体制を崩した彼の足下に蹴りを入れ、即座に体を捻って、今度はその頭に一撃を与えた。


 迷いのない動きにフォーゲルは戸惑ったような様子を見せた。男がそのまま倒れ込むように体重をかけると、フォーゲルは短く唸ってその場に膝を付く。


 男がその首元に短刀をあてがうと、ミルヒが驚嘆しながら手で口元を覆う。


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