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隔たる心(4)

「本当に懐かしいです」


 木机の前に並ぶ椅子の一つにグラースは腰掛けた。


「いろいろ思い出すことも多いんじゃないか」


 彼も腰掛けようとしたところで、扉をノックする音が響き、騎士団専属の女官がにこやかに入ってきた。


「失礼いたします。ザイデル様にお手紙が届いておりますよ」


 それを笑顔で受け取ると、ザイデルは手紙の差出人を確認する。


「おおっ。弟からだ。開けてもいいか?」


「もちろん。というか団長、御兄弟がおられたのですね。知らなかったですよ」


「ああ、妹も二人いるんだ。これがまた可愛い子達でなぁ」


 彼はいそいそと封書を開けた。その書面を見たところで満面の笑みだったザイデルの顔が徐々に真顔になっていく。


 グラースが首を傾げると、彼は血相を変えたように扉を開けた。


「すまん、急用ができた。城門まで戻る」


「あっ、僕のことはお気遣いなく」


「ネルフはゆっくりしていってくれよ!」


 そう言い残してザイデルは行ってしまった。扉を閉め忘れているので、相当焦っていたのだろう。


 グラースはぼんやり考えた。


「なんだろう」


 一人でそう呟いて、机に顎を付いた。暇になってしまって仕方が無く、組んだ足を揺らす。


 それにしても騎士団寮は、どこを見ても懐かしさを感じる。そこで主であるネージュのことを思い出した。


 「巡礼式に参加するのだ!」と彼女は威勢良く聖国にやってきたが心配でもある。


「今頃、何をやっていらっしゃるのか。従者がリヒトだけというのも気に入らないな」


 物思いに耽っていると、また扉をノックする音がする。誰だろうか、グラースは顔を上げた。


「どうぞ」


 入室してきたのは、騎士団の軍服を身に纏い、分厚い丸眼鏡をかけた白髪の青年だった。


 グラースは彼の顔に見覚えがないので、新人なのかも知れない。


 しかし、その後ろから現れた姿に驚いて、グラースは椅子を倒してしまう事となった。


 二つに縛った黒髪を踊らせ、威厳強く入ってきたのは紛れもなくネージュその人だったのだ。


 彼女は己の従者を見つけると、笑顔で手を振る。


「おう、グラース。久方ぶりではないか」


「ネ、ネージュ様!? 何故こんなところにいらしゃるのですかっ」


「ああ、そうそう。大変な旅だったのだ。まぁ座れ、話すと長いぞ」


 ネージュはそう言うと、ドカッと椅子に腰掛け足を組んだ。その隣にはリヒトでなく、グラースの知らない青年が立っている。


「君は誰なんだい?」


「まぁ、それもおいおいな。さて、何から話したものか――」


 不信な顔をしたグラースの問いかけを制して、ネージュは語り出した。


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