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偏私の天秤(へんしのてんびん)


 朝日を浴びる城内に、まだ儚げな歌声が響いていた。

 その体には大き過ぎる寝台の上に少女は腰かけて歌っている。


 機嫌が良いのか、投げ出した足を揺らしている彼女の名はフレーテ・ネルケ・オルギネス。


 若干、十二歳にして時期女王と称えられる少女は、聖王の一人娘である。


 右側頭部で高く縛った空色の髪を揺らしながら、フレーテはゆっくり立ち上がる。十字架の描かれた桃色のドレスの裾がひらひらとなびいた。


 彼女は柔らかな灰色の絨毯を踏みしめながら、テラスへ続く扉へと向かう。

 ガラス貼りの扉の近くに、銀の鳥籠が吊ってある。


 少女がその中をのぞき込むと 蒼い鳥(ルリビタギ)、美しくさえずっていた。

 その華麗な歌声合わせて、少女も一緒に声を発する。

 美しい二重のさえずりが静かな部屋に木霊した。


 次に自分の背丈よりも高い扉をそっと前方へ押す。意外にも窓枠は彼女を歓迎するかのように簡単に開く。


 そのままテラスへと出ると外は穏やかな日差しである。

 こんないい天気では民衆も微睡んでいるに違いないと少女は思う。


 宝石のような蒼い瞳を目一杯輝かせて、フレーテは仰ぎ見る。雲一つない蒼天が広がっていた。


 嬉しくなって、また歌い始めた。


「真愛の賛歌ですか。相変わらず、お上手ですね」


 背後からそう声がかって、少女は静かに振り返った。

そこには肩までのびた漆黒の髪を後ろで縛った、まだ若い執事が爽やかに微笑んでいる。


「お嬢様、おはようございます。今日はとても良いお天気ですね」


「ええ、そうね。もう春だものね」


 フレーテはうきうきとした気分で微笑み返した。春がくると大好きな動物達も活発に動き出して、小動物リスなんかはこのテラスにも顔を出す。


それが楽しみで彼女は「うふふ」と声を漏らした。


 それを見た執事が柔らかい笑みを浮かべている。フレーテは彼に問いかけた。


「あら、あなたも嬉しいの?」


「ええ、とても。私は幸せ者でございます。是非、お礼を言わせてください」


 執事は優雅な動作で頭を下げた。縛っている髪がサラリと肩に落ちる。


 二人にとってはいつもと変わらない、幸福な時間であった。


 フレーテは人差し指を頬に当てながら可愛らしく首を傾げる。


「そういえば、魔人が出たってメイドから聞いたけど、どうなったの?」


.




この章は少し短いです!

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