集う決意(6)
★
「それはどうか分からない。
第五番に関しては、『まだ幼い』としか聞いていないんだ」
「我モ、ユーリ以外ハ、会ッタ事ガナイ」
ヘルツが見るからに落ち込んでいるので、クロイツは慌てて話題を変えた。
「じゃあ、今クスリラを襲っている魔体は何番だ? その、ユーリって奴か?」
「奴ハ、死ンダ」
「じゃあ、きっとボクがフィフスです。
だって、だって檻にずっと一人だったもの。そんな大事なこと、何で、ハルトは教えてくれなかったのかな」
それを耳にしたリヒトが目を見開く。
「先ほどから気になっていた。そのハルトというのは……、まさかインハルト・ライエンの事か?」
クロイツはその名を聞いて古い記憶を辿った。ヘルツはおどおどとした様子を見せる。
「ハルトの名前なら、ハルト・オルギネスでしたよ」
クロイツは首を横に振った。
「詳しいことは俺も分からないんだが、インハルト・ライエンは魔体錬成の生みの親の名だ。オルギネスという名は聖国に産まれれば誰にでもつくんだぞ」
それを聞いたヘルツは困惑した様子で首を傾げた。
「で、でもクロイツの名前は『クロイツ・グナーデ』でしょ」
「ああ、グナーデは母さんの名前なんだ。俺は聖国の姓を捨てたから。本名はクロイツ・オルギネスだ」
俯いたヘルツの顔色が悪い。クロイツはそんな彼女の肩にそっと手を置いた。ミルヒがボソリと呟く。
「だんだん、話が繋がってきたな」
「ハルトが魔体を造っているなら、やはりボクがフィフス……。ボクは殺戮兵器なんだ」
そう呟いたヘルツの表情は真っ青で、今にも泣き出しそうである。
クロイツはその震える肩へそっと手を置いた。
「殺戮兵器がなんだ。俺はちっとも気にならない。魔人だからって俺はお前を嫌いにならないだろ? ヘルツはヘルツだ」
そうすると彼女は少し複雑そうな顔で瞳を閉じた。
クロイツはいたたまれなくなって、わざと大げさに手を打つ。
「なぁ、こんな時間だし、もう休もう。ミルヒ達も出発前に少し眠った方がいいぞ。って言っても、俺のベッドか、後は床しか無いんだけど」
クロイツは誤魔化しついでに、ヘルツの髪をぐしゃぐしゃっとなで回した。
窓の外を見ると、もうすっかり宵が深い。
「では寝台は、私が有り難く頂くとしよう」
ネージュはそれだけ言うと、さっさとクロイツの部屋へ行ってしまう。当然のようにその後をリヒトが追う。
「おいおい、そりゃないぜ」
クロイツが苦笑すると、ミルヒが壁際の床に座る。フォーゲルがその隣にいそいそと移動した。
「毛布もないんで、すまんな」
「気にすんな。屋根があるだけで十分だ」
ミルヒはそう言って歯を出して笑った。旅をしていることもそうだが、本当に凄い子だと思う。
ヘルツが、クロイツの服袖を引っ張る。
「ああ、ヘルツはどうする?」
「ボクは起きてる」
「そうか、じゃあちょっくら外の様子でも見に行くかな」
ヘルツの手を握るとそれは小さい。
でも、とても暖かかった。




