集う決意(4)
聖国城には機密の研究施設がある。
そこではある実験が行われていた。
「魔体の開発」
クロイツはそう口にして目を伏せた。
「魔獣や魔人、時には超人的な力を持つ人間を使った魔体を造り出す研究だ。聖国はそれを使っていろいろな実験をしてた」
ミルヒの方に視線を向けた。それに気付いた彼女は静かに頷く。
「実験とは虐殺と同じだ。それは魔人も人間も関係ない殺人計画だった」
それを聞いて、ついにミルヒが声を荒げた。机に乗せていた手をぐっと握っている。
「なんのためにそんなことをっ!!」
「ミルヒ、すまない。さっき言った商人の話は嘘なんだ。クスリラで殺戮が行われるということは知ってた。
全ては来たる「第二次戦争」だという情報もある。
これは俺の予想だが聖国は魔国を、いや魔人を滅ぼそうとしているらしい」
そう言うとネージュは「ほう」と眉を寄せる。柔和な表情を見せたが、目が笑っていない。
「俺が知っているのはこれぐらいだ」
「ーーオレはすぐ、サナアトに行く。フォーゲル、来い!」
ミルヒが突然立ち上がって、フォーゲルの手を取る。倒れた椅子が大きな音を立てた。
クロイツは机に掌を強く叩きつけた。
「待てよっ、魔体と話してどうなる。あいつらが素直に殺戮を止めると思うのか!」
怒りを露わにするクロイツに対して、ネージュも不適な笑みを浮かべている。
「ふっ、やめんだろうな。
フォーゲルがどれだけ強いかは知らんが、相手は国家だ。むざむざ死にに行くようなものよ」
「ーーいや、それでも行かねぇと。今もどこかで、罪のない誰かがっ! そんなこと、オレは許せねぇ」
そう言ったミルヒの表情は、十代の少女には見えないほど雄々しい。
「誰かが、止めなきゃ行けねぇんだよ。オレは行くぞ」
ミルヒがフォーゲルの手を引く。しかし、彼の方がそっと立ち上がったものの一歩も動こうとしない。
「フォーゲル、どうした?」
クロイツの方から、じっと目線を外さないままフォーゲルは言葉を続ける。
「……御前ヲ、知ッテイルゾ」
それを聞いたクロイツは眉を寄せる。
「お、お前は一体何者なんだ」
「ーー我ハ、聖国デ造ラレタ『魔体-第二番』。出来損ナイ、デアッタガ」
そこでずっと押し黙っていたリヒトが、「人型を諦めたか」と声を漏らす。その言葉を聞いて、フォーゲルが無表情のまま彼の方へ顔を向けた。
「人型? ……モシヤ御身ハ」
リヒトはネージュを横目で確認したが、やがて諦めたように一息付く。彼は少し間を置いて話し始めた。
「ああ、察しの通りだ。俺は祖体から造られた。フォーゲルが言うところの『魔体-第一番』。
聖国で初めに生まれた殺戮兵器は俺だ」
それを聞いたネージュは、椅子から立ち上がって声を張り上げた。




