招かれざる者(4)
「謝罪なんていいんです。お兄さんは悪くないですから」
「なんて良い子なんだ。リヒト、貴様こんな幼気な子を傷つけてしまったのだぞ。土下座だ、土下座はどうした。床に頭を付けろ。さぁ、早く」
「うるさい。黙って寝ていろ」
意外に元気なネージュとリヒトのやり取りに、ヘルツは口元が緩んでしまう。
その様子をみて、ネージュが声をかけた。
「どうした少年」
「あっ、すみません。笑うつもりはなかったのですが、お二人がなんだか楽しそうで」
ヘルツがそう言うと、二人は顔を見合わせて首を傾げる「すみません」そう謝罪してから、ヘルツはふふふと笑った。
「さてと。そろそろ、腕を生やしたいところだな」
ネージュが真剣な面もちでそう呟いたので、ヘルツは驚いて目を瞬かせた。
「手が生えてくるのですか?」
「うむ、そのうちな」
ネージュが左手で、無い手をさする動作をした。
「生えると言うよりは「治る」が正しい」
リヒトがそう言うと、ネージュが腕を組んだ。
「君が手伝ってくれたら早いのだがな。一瞬だ」
そう言ってから彼女は、残された手でヘルツの頭をぽんぽんと撫でる。
いつもクロイツがヘルツの頭を優しく撫でてくれるが、それとはまた違った平らかな感じがする。
ヘルツがへへっと笑うと、ネージュは微笑んだ。
そこで開けていた部屋の扉から、クロイツが顔を出す。
前掛けを付けているので、食事の支度をしているようだ。
「おい、お前らヘルツに変な事したら叩き出すぞ」
そう言ったクロイツの言葉も気にしていない様子で、ネージュは片目を閉じた。
「なぁに全く危険はない。ヘルツよ、協力してくれるな?」
「はい、お手伝いします」
バッと手を挙げてヘルツは腰掛けから立ち上がると、ネージュがその前に立つ。
クロイツは心配になったのか、ベットの側へとやってきた。ネージュが言う。
「おっと、クロイツとやら。君は少し離れていてくれるかな」
何かが気に障ったのか、クロイツは表情を強ばらせた。ヘルツが真剣な眼差しで彼を見ると、少しだけ側を離れてくれる。
「では手を握ってくれ」
そうネージュは片手を差し出した。白く滑らかで美しいその手をそっと握る。
そうしていると、握ったところから眩い光が生まれる。ジーンと暖かい気分になってヘルツは目を閉じた。
「よし。終わったぞ」
目を開けると、ネージュの右腕が本当に治っていた。
「え、これだけ?」
「ヘルツ、大丈夫だったか?」
体に衝撃が走るとか、ビリビリするとか、特に何かあった訳ではない。心配気にヘルツの肩を抱いたクロイツに頷く。




